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小島寛明の「規制とテクノロジー」 ― 第19回

個人データがお金になる? データ取引市場ってなんだ。

2019年04月22日 09時00分更新

文● 小島寛明

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 企業が集め、保有しているデータを取引する市場をつくる議論が始まっている。

 データを持っている企業と、活用したい企業の間に入り、売買などの取引をさせるのが市場の役割だ。

 すでにIT企業や電機メーカー、金融機関、広告会社などの大企業が「一般社団法人データ流通推進協議会」(DTA)という組織も立ち上げている。

 構想が書かれた資料を見ると、希少性の高いデータには高い値段がつき、そうでないデータにはそれなりの値段がつくようだ。

 なんのルールもなく個人のデータが流通するよりはましな選択肢かもしれないが、データのもととなるかもしれない個人としてはどんな構想なのか詳しく知っておく必要がありそうだ。

●2016年に始まった議論

 データ取引市場の議論はつい最近始まったものではない。政府は2016年9月から有識者らを集めて検討会を開き、2017年3月には「中間とりまとめ」を公表している。

 この連載でくりかえし取り上げている情報銀行も、データ取引市場とともにこの中間とりまとめで触れられている。

 背景にはGAFAと呼ばれるIT大手4社や、アリババなど中国のIT企業が、膨大な個人データを基にさまざまな新しいビジネスを生み出している状況に対する日本側の危機感がある。

 2019年4月11日は、政府の「官民データ活用推進基本計画実行委員会データ流通・活用ワーキンググループ」で、DTAの事務局長がデータ取引市場について説明している。

 DTAの資料では、個人のデータが市場で取引される意義について説明。「40代男性の直近1ヵ月の位置情報」を例にした。

 こうしたデータは、「一般的」で、「商品代替性が高い」として、時間とともに価格が収れんしていく、と予測している。

 この40代の男性は仮に、最寄り駅から徒歩15分のマンションに住んでいるとしよう。

 先週の金曜日は、朝8時〜9時に通勤し、9時から14時はオフィスと、近くの定食屋にいた。14時から17時は取引先に移動して打ち合わせのち直帰。自宅近くのコンビニに10分寄って帰宅した。

 この人と似た行動を取っている人は少なくないだろう。

 そうなるとデータが市場に売りに出されたときは、価格にばらつきがあっても時間とともに一定の価格に収れんしていくという見方だ。

●透明で公正なデータ流通が目的

 こうした「一般的」な情報でなく、特徴のあるデータはより高い価格で取引されるとも予測している。

 この40代男性に症例が限られる持病があったとしたら、この人の運動データは高く取引されるのだろうか。

 このデータ取引市場は情報銀行と同様に、民間団体による認定制度が検討されている。制度の目的は「透明で公正な市場運営」だとしている。

 データを提供する側の企業も、データを利用する企業のいずれに対しても参加資格を設け、資格を満たしている企業だけが市場に参加できるという。

 おおまかに日本IT団体連盟(IT連)が情報銀行を認定、DTAがデータ取引市場を認定し、認定を受けた企業間で、情報が流通する仕組みだ。

 制度の全体像を見ると、個々の日本企業が単独ではGAFAやアリババには太刀打ちできないが、データを市場に出し合って、それぞれが利用し合う中で競争力を高めるという狙いは見える。

●つっこみどころは多い

 ただし、情報銀行とデータ取引市場についてはつっこみどころも多い。

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