業務を変えるkintoneユーザー事例 第299回
「前システムの方がマシ」から大逆転、現場との対話で全社員をDX人材化した大英産業
悪夢のExcel多重入力と決裁スタンプラリー システム刷新の反発は“ライブ改善”で乗り越えた
2025年11月19日 09時00分更新
Excelによる二重三重の入力、外では開けない社内システム、決裁のためのスタンプラリー。大英産業が長年抱えてきた業務課題を解消すべく、基幹システムのkintone化プロジェクトが始動した。しかし、旧システムを作り変えただけのアプリでは、「前の方がマシ」と現場からの反発をまねく――。
サイボウズの年次イベント「Cybozu Days 2025」において、この1年で最も優れたkintone事例を決める「kintone AWARD 2025」が開催された。
3番手に登壇した大英産業の柚田耕太郎氏と江崎菜那氏は、基幹システム刷新と全社員のDX意欲醸成に寄与した、“アプリのライブ改善”の取り組みについて披露した。
営業出身のDX担当が直面した悪夢の「多重入力」と「スタンプラリー」
大英産業は、九州・山口エリアで分譲マンションや戸建て、中古住宅などを手がける総合不動産会社だ。創立は1968年、社員数約500名を擁し、地域密着型の事業を展開している。
「突然ですが、想像してください。二重三重入力、終わらない社内業務、外で開けない社内システム、上司のデスクを巡るスタンプラリー。すべて4年前の大英産業です」(江崎氏)
登壇した江崎氏と柚田氏は二人とも、「文系」出身の非IT人材。そんな彼らが、システム担当になって直面したのが、多くの企業で抱えているだろう上記の課題の山である。
既存システムは使いづらく、PCでしか閲覧できない。作業工数が多く、開発や修正はベンダーに依存している。何より現場を疲弊させていたのがExcelへの多重入力だった。このアナログで非効率な業務フローを根絶すべく、彼らは様々なセミナーに足を運び、そして、kintoneに出会う。最終的に基幹システム全体をkintoneへ移行するという大きな決断を下した。
「これなら前の方がマシ」 旧システムを模倣したkintoneに現場の反発
柚田氏と江崎氏は、さっそく顧客管理と物件管理、契約管理を網羅するkintoneアプリ群を構築。顧客軸と建物軸の情報が紐づき、どの顧客がどの部屋を契約したかを一元管理できる仕組みを整備した。
新システムは、誰でも直感的に操作でき、外出先からでもスマホから情報を把握できる。課題だった多重入力も激減し、蓄積されたデータを活用する道筋も見えた。「良いシステムができ、みんなに喜んでもらえると思いました」と柚田氏。しかし、二人の期待とは裏腹に、現場から聞こえてきたのは厳しい声だった。
「『前とやり方が違う』『前のシステムではできたのに』と言われ、挙句の果てには『これならkintoneにしない方がよかった』という声も聞こえてきました」(柚田氏)
現場の反発の原因は、旧システムをkintoneで“作り替えただけ”だったからだ。もちろん改善はあったが、それ以上に「いちからkintoneの操作を覚える」という負担が上回ったと二人は反省した。

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