NTTドコモは5月29日、住信SBIネット銀行の株式をTOB(株式公開買い付け)し、子会社化すると正式に発表した。
4キャリアのなかで、グループ内で銀行を持っていないのはNTTドコモだけだった。そもそも、NTTドコモが銀行から距離を置いていたのは、2020年に起きた「ドコモ口座不正引き出し事件」の影響が大きかった。「ドコモ口座」は銀行口座からチャージして、d払いなどで決済できるサービスであったが、ドコモ口座に対して、第3者の銀行口座を紐付け、勝手に銀行口座から現金を引き出し、ドコモ口座に移すという事件が発生した。
ここでNTTドコモは「ユーザーの現金を預かるリスク」を避けるようになってしまった。また、dアカウント関連のセキュリティを強化したため、ログインが上手くいかないなど、dアカウント関連での不満の声が出るようになってしまった。
そんななか、同じく2020年に楽天が携帯電話事業に参入したことで、4キャリア間では「経済圏競争」が活発化した。ショッピングで使うクレジットカードやスマホ決済、様々なサービスでポイントを提供し、ユーザーにお得感を得てもらって満足度を上げるには銀行は不可欠な存在だ。
そこで、2024年、社長に就任した前田義晃氏は就任早々、「2024年度中に銀行業に参入する」と明言していた。
しかし、買収先が見つからず、また自社で銀行を新たに立ち上げたとしても時間がかかるとして、暗礁に乗り上げていた。NTTドコモにとって銀行業への参入は悲願とも言えた。一時は「住信SBIネット銀行の買収話は破断した」といった報道もあったが、急転直下、買収が決まった。
下手をすると前田社長は「大ボラふき」になるところだったが、なんとか回避することができた。

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