このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

JAWS DAYS 2025で聞いた地方銀行の本音とJAWS-UGで得たつながり

コミュニティは地方創生に貢献できる 地銀情シスたちの地元愛と熱量が胸アツ過ぎた

2025年05月16日 09時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 山梨中央銀行、広島銀行、佐賀銀行など地銀のエンジニアたちがコミュニティについて語るというユニークなセッションが開催された。これはAWSのユーザーグループJAWS-UGが主催した「JAWS DAYS 2025」での一幕。地銀のエンジニアたちは、どのようにJAWS-UGに参加し、世界を拡げ、地方創生のヒントを得られたのか?

AWSを利活用する山梨中央銀行、広島銀行、佐賀銀行

 AWSジャパンは「AWSマンスリーセミナー2024」というタイトルで地域金融機関向けのセミナーを実施しており、今回の登壇者はセミナーの幹事を務める5人のうちの3人だ。コミュニティが大好きすぎてJAWS DAYS 2025にCFPを出したところ、無事通ったということで今回のパネルとなった。まずは、それぞれの自己紹介からスタートする。

 最初は山梨中央銀行システム統括部 システム開発課 課長代理の重友秀真さん。会社では内製開発の支援などを担っており、個人としては昨年6月に立ち上がったJAWS-UG山梨の運営を手がけている。

 重友さんは「山梨中央銀行と言えば、システムの内製開発ということで名が通っていると自負している」と紹介する。コストやスピードという観点はもちろん、お客さまに笑顔を届けたいという純粋な思い、そして地銀としての新しい収益化が内製化のモチベーション。最近では開発したシステムを他行に導入してもらえるようになった。「われわれSIerではないので、導入した金融機関といっしょに育てている」と語る。

 2番手は、ひろぎんホールディングス 業務統括部 IT統括グループ IT統括室 兼 広島銀行 IT統括室C-BIZラボ AWSライン シニアコーディネーターの森将記さん。新卒でSIerに入社し、その後広島銀行に入行し、2021年からAWSを利用した基盤構築に携わっている。現在はオンプレミスのシステム更改や新システムの導入時にAWSを利用しているという。

 3番手は、佐賀銀行 IT統括部 調査役の平島和彦さん。前職は地銀の担当エンジニアで、2016年に佐賀銀行に入行し、メインフレームのエンジニアを担当。現在はAWSを活用した内製開発の支援に加え、営業店の端末や勘定系システムの運用管理、システム開発人材の採用や育成などを幅広く手がけている。JAWS-UGに関しては、2023年に福岡のJAWS FESTAに登壇して佐賀銀行の取り組みを発表。それを契機に地元のJAWS-UG佐賀にも足を運んでいるという。

 佐賀県を中心に九州北部地域をカバーする佐賀銀行は、以前から内製開発に注力しており、勘定系や営業支援システム、窓口受付けシステムなど数多くのシステムを自前で組み上げてきた。AWSは事務集中関連システム、ローン関連システム、コールセンターシステムなどで採用。先行他行への派遣やAWSのプログラムにも参加し、開発力も高めているという。

広島銀行の森将記さん、佐賀銀行の平島和彦さん

地銀行員たちはどのようにコミュニティにダイブしたのか?

 今回のセッションの趣旨は、コミュニティとほど遠いと思われる行員が、なぜコミュニティに出入りしているのかを探る内容だ。司会のAWSジャパン 野上忍さんは、「JAWS-UGにどのように関わったのか?」を3人に聞いていく。

 佐賀銀行の平島さんがJAWS-UGに関わるようになったのは、「JAWS FESTAに登壇しませんか?」という依頼がきっかけだ。「依頼を受けて、『はい、よろこんで』という感じでした。でも、そのときはJAWS-UGがなにかもよく知りませんでした(笑)」と平島さんは振り返る。

 エンジニア募集に貢献できればいいなと思い、福岡開催のJAWS FESTAに登壇したら、九州外の参加者がいっぱいだったのにびっくり。「でも、みなさんとても温かく聞いていただいて、大変うれしかった。名刺交換したり、懇親会での交流も楽しかったし、その後に参加したJAWS-UG佐賀でもハンズオンでいろいろ学べた」と平島さんは振り返る。採用面接のときに「JAWS FESTAの登壇、聞きました」という人もおり、テック界隈でのアピールにもなったという。

 登壇までJAWS-UGを知らなかった平島さんに対して、山梨中央銀行の重友さんは、JAWS-UGの存在は知っており、地元の山梨に支部がなかったことで悔しい思いもしていた。ただ、「みなさん技術レベルがめちゃくちゃ高くて、コミュニティに行ったらフルボッコにされると思っていた」と尻込みしていたのも事実だった。

 しかし、AWSの野上さんに背を押されて、昨年のJAWS DAYS 2024に参加。「ほかの銀行のエンジニアとつながれるのがありがたかった。金融機関は秘密裏にやることが多すぎて、閉鎖的。他のエンジニアやSIerがなにをやっているかわからないし、後輩たちも先輩しか見られないのがもったいないと感じていた。だから、コミュニティを通じて、エンジニアとつながれるのは大きなメリットになると感じた」と重友さんは語る。

 続いて先行した2人がコミュニティデビューしたのをうらやましく感じていたという広島銀行の森さん。同社は2020年からAWS導入の下準備をしていたが、当時はコロナ渦の最中で、情報を外にとりに行くのが難しかった。「当時はJAWS-UGもよく知らなかったし、オンラインでイベントをやっていることも知らなかった。今覚えば、ここで情報を得ておけば、もっとよい内製のスタートが切れたかもしれないと後悔している」と当時を振り返る。

 そんな森さんは、2021年から始まったマンスリーセミナーがコミュニティに参加するきっかけになった。1年後に幹事となり、知り合いも増え、自分の世界が拡がった。そして昨年広島で開催されたJAWS FESTAで登壇することになり、さらに世界が拡がったという。「JAWS-UGに参加して、活動するだけで、世界がどんどん拡がっていった。2020年以前はクラウドすら知らなかったのに、5年後にJAWS FESTAやこの場で話せるようになるなんて想像できなかった。AWSとJAWS-UGに感謝しているし、この想いを外に出していきたいと思っている」と森さんは語る。

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ