年次イベントで「これまでのCRMは『壊れている』。変革の時」と、次世代CRMへの変革をアピール
CRM市場参入のServiceNowが他社を“挑発” 「360度の顧客ビューでは不完全だ」
2025年05月13日 07時00分更新
「CRMを変革する時だ」。ServiceNow CEOのビル・マクダーモット氏は、2万5000人の観客やパートナーを前に、こう力強く宣言した。
ServiceNowが2025年5月6日~8日、米国ラスベガスで開催した年次カンファレンス「Knowledge 2025」。その基調講演で発表されたビッグニュースのひとつが、「ServiceNow CRM」の投入によるCRM市場への本格進出だった。
ServiceNowはCRM市場を揺るがす存在になるのか? ServiceNowが考える従来のCRMの課題、発表されたServiceNow CRMの特徴、そして業界アナリストの評価をまとめる。
Salesforceの“360度の顧客ビュー”では「不完全」だと強調
マクダーモット氏は、これまで他社が提供してきたCRMは行き詰まっていると語る。
「顧客の損失コストの平均値は、この10年間で3倍になった。CRM分野は何かが間違っている。それでも、これまでどおりの方法でCRMを使いたいだろうか?」
ServiceNowと言えば、特に「ITサービス管理(ITSM)」領域のツールというイメージが強い。だが実は、CRM領域に近しい「カスタマーサービス/カスタマーサポート管理(CSM)」領域にも、2016年から進出している。その後、フィールドサービス、セールスなどにも領域を拡大し、2024年末にガートナーが発表した「CRM Customer Engagement Center」分野のマジック・クアドラントでは、「リーダー」の1社に位置付けられている。
ServiceNowが考える「従来型CRMの問題点」とは何か。同社 CPO 兼 COO(最高プロダクト責任者/最高執行責任者)のアミット・ザベリー(Amit Zavery)氏は、現在のCRMは「壊れている」と表現する。その理由は「ポイントソリューションを組み合わせたパッチワーク状態」(ザベリー氏)だからだ。
また、ServiceNow CRM担当のVPであるテレンス・チェシャー氏は、「“360度の顧客ビュー”はすばらしいが、360度の顧客ビューとオムニチャネルコミュニケーションだけにフォーカスするのでは不完全。(やるべきことの)半分しかやっていない」と、暗にSalesforceのCRMを示しながら、これまでのCRMを切り捨てた。
チェシャー氏の主張を具体的にまとめると、次のようになる。
「これまでのCRMは、顧客接点におけるフロント業務に終始したシステムオブレコード(SOR)であり、豊富な顧客情報を持つミドルオフィス/バックオフィスとはつながっていない。そのため、顧客のリクエストに対してすぐに適切なアクションが起こせない。たとえ顧客接点をオムニチャネル化しても、それだけでは問題は解決しない」
このように、ミドルオフィス/バックオフィスにある顧客情報の参照が容易でないため、リクエストへの応答や問題解決に時間がかかる。さらに、プロセスが複雑化して自動化やAIのメリットが得にくくなる――。チェシャー氏は問題点をこう説明する。
「顧客の問題を解決し、期待に応えるためには“残りの半分”が必要だ」(チェシャー氏)
