最高画質設定だとVRAM 12GBでは足りないゲームが結構ある
GeForce RTX 5060 Ti 16GBをゲーム13本で性能検証、RTX 5070の微妙な立ち位置が浮き彫りに
2025年04月23日 11時30分更新
2025年4月16日、NVIDIAの最新GPU「GeForce RTX 5060 Ti」(以下、RTX 5060 Ti)を搭載したビデオカードの販売がスタートした。実売価格は9万円前後でWQHDゲーミング向けとなる。グラフィックパイプラインにAIを採り入れる「ニューラルレンダリング」時代に照準を合わせた設計が最大の特徴だ。
しかし、ゲーマー的には「DLSS FG(Frame Generation:フレーム生成)」のさらに上をゆく、「DLSS MFG(Multi Frame Generation:マルチフレーム生成)」のほうが目を引く話題だろう。さらに、eSportsシーンで効果が期待される「Reflex 2」(RTX 50シリーズで先行解放)も注目すべきポイントになる。
前回のレビューでは、AI学習モデル使用時に発生する「VRAM使用量が12GBを超える状況」において、RTX 5060 Ti 16GBの性能が上位モデルであるRTX 5070を上回ることが確認できた。また、1世代前のRTX 4060 Ti 8GBに対しては20%程度の性能向上を確認し、その源泉がGDDR7メモリーにあることもわかった。
RTX 5060 TiもRTX 4060 Tiもメモリーバス幅は128bitと狭いが、RTX 5060 TiではGDDR7を採用したことでメモリー帯域が約1.6倍に拡大している。このメモリーまわりの強化が、ゲームに置いてはどう影響するのかを後編となる本稿で検証していく。
メモリー帯域が強く影響する4K解像度では、RTX 5060 Ti 16GBはどの程度ほかのGPUより強くなるのか? RTX 5070やRTX 4060 Ti 8GBと差がつく場合はどんな状況になるのかなどの観点から考察していきたい。
歴代xx60 TiやSUPERと比較
検証環境は前編とまったく同じだ。RTX 5060 Ti 16GBの上位であるRTX 5070やRTX 4060 Ti 8GBを比較用に用意したほか、やや古めだがRTX 3060 TiやRTX 2060 SUPERを取りそろえた。
また、ベンチマーク中に各ビデオカードが消費する電力はHWBusters「Pownetics v2」で直接計測する。各カードに接続した補助電源ケーブルを流れる電力のほか、PCI Express x16スロット経由で供給される電力についても漏れなく計測ためだ。
ただし、スロット経由の電力を計測するためのアダプター(ライザーカード)を接続する関係上、マザーボードのBIOS設定でPCI Express x16スロットのリンク速度はPCI Express 4.0(Gen 4)に制限している。
今回もGPUドライバーは検証用に配布されたGameReady 575.94を使用した。Resiazble BARやSecure Boot、メモリー整合性およびカーネルモードのハードウェア適用スタック保護、HDRなどはひと通り有効化。ディスプレーのリフレッシュレートは144Hzに設定した。
検証環境 | |
---|---|
CPU | AMD「Ryzen 7 9800X3D」 (8コア/16スレッド、最大5.2GHz) |
CPU クーラー |
EKWB「EK-Nucleus AIO CR360 Lux D-RGB」 (簡易水冷、360mmラジエーター) |
マザー ボード |
ASRock「X870E Taichi」(AMD X870E、BIOS 3.20) |
メモリー | Crucial「Crucial Pro CP2K16G64C38U5B」(16GB×2、DDR5-5600で運用) |
ビデオ カード |
NVIDIA「GeForce RTX 5070 Founders Edition」(12GB GDDR7)、 Palit「GeForce RTX 5060 Ti Infinity 3 16GB」(16GB GDDR7)、 NVIDIA「GeForce RTX 4060 Ti Founders Edition」(8GB GDDR6)、 NVIDIA「GeForce RTX 3060 Ti Founders Edition」(8GB GDDR6)、 NVIDIA「GeForce RTX 2060 SUPER Founders Edition」(8GB GDDR6) |
ストレージ | Crucial「T700 CT2000T700SSD3」(2TB M.2 SSD、PCIe 5.0)、 Silicon Power「PCIe Gen 4x4 US75 SP04KGBP44US7505」(4TB M.2 SSD、PCIe 4.0) |
電源 ユニット |
ASRock「TC-1300T」(1300W、80 PLUS TITANIUM) |
OS | Microsoft「Windows 11 Pro」(24H2) |
さて、ゲーム検証編ではおなじみのフレームレートの測定条件は下記となる。RTX 5090レビュー時より解説している内容なので、改めて解説はしない。
1)PCI Expressのリンク速度はGen 4に固定
2)「CapFrameX」でフレームレートを計測
3)フレームタイムは「MsBetweenDisplayChange」基準とする
立ちはだかるRTX 5070の高い壁
ここからさまざまなゲームにおけるフレームレートを検証する。解像度はフルHD(1920×1080ドット)、WQHD(2560×1440ドット)、4K(3840×2160ドット)の3通りで、画質は最高あるいはそれに準じる設定とした。まずはDLSSやDLSS FGを利用しない状況で検証する。
「Overwatch 2」
Overwatch 2ではAPIはDirectX 11、画質は「エピック」をベースにレンダースケール(RS)を100%、フレームレート上限を600fpsに設定。マップ「Eichenwalde」におけるBotマッチを観戦中のフレームレートを計測した。
Overwatch 2ではRTX 5060 Ti 16GBは常にRTX 5070から30%程度下の性能になっている。この点は前編で検証した「3DMark」のスコアーと傾向は同じだ。1世代前のRTX 4060 Ti 8GBに対して、RTX 5060 Ti 16GBは20〜30%上のフレームレートを示している。
ここで注目したい点は、RTX 4060 Ti 8GBとRTX 3060 Tiの差だ。フルHD〜WQHDまではRTX 4060 Ti 8GBが上回っているものの、4KになるとRTX 3060 Tiが僅差で逆転する。解像度が低くRTX 40シリーズが抱える巨大なL2キャッシュが効いている状況ではRTX 4060 Ti 8GBが優勢だが、4KになるとRTX 3060 Tiのメモリー帯域の太さが優位になるというわけだ。
RTX 4060 Ti 8GBはフルHDにターゲットを絞った設計だ。ゆえに、4Kで負けてもいたしかたないと言えるが、メモリー帯域に対する依存度はゲームの作り(メモリーの使い方や取り扱うアセットの大きさ)に依存する。あくまでOverwatch 2ではこうなる、ということだ。
上の表はベンチマーク時にPownetics v2を通じて観測したTBPと、10Wあたりのフレームレート、すなわちワットパフォーマンスの一覧を解像度別にまとめたものである。RTX 5060 Ti 16GBはフレームレートこそRTX 5070に圧倒的な差をつけられたが、ワットパフォーマンスでは健闘している。さらに言えば、フルHD〜WQHDまではRTX 4060 Ti 8GBとの差もないことがわかる。

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