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文書内容を理解して質問に回答 契約書の変更箇所を見つけてくれる!

チェック業務が爆速に!「Acrobat AIアシスタント日本語版」ファーストインプレッション

2025年02月12日 10時00分更新

文● 柳谷智宣 編集●大谷イビサ

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 2025年2月12日、アドビからAcrobatのAI機能「Acrobat AIアシスタント」の日本語版がいよいよリリースされた。Acrobatを介して、PDFの文書内容についてチャットでやりとりし、チェック業務やレビューを効率的に行なえる。早速使ってみたので、ファーストレビューをお届けする。

Acrobatを介してPDFとチャット

 Acrobat AIアシスタントは文書を解析し、要約を生成したり、チャット形式で文書に質問できる機能だ。自社開発のAIをAcrobat/Readerのワークフローに統合し、シンプルに使えるのが特徴。複数ファイルをまとめて扱うことができ、PDF以外のフォーマットにも対応する。また、生成AIにありがちなハルシネーションを避けるために、引用元を記載してくれる。顧客データをAIに学習しないのでビジネス利用も問題なしだ。

 まずは設定画面の「生成AI」を開き、「Acrobatで生成AI機能を有効にする」にチェック。「文書にAI質問バーを表示」にもチェックしておこう。

「生成AI」設定画面でAI機能を有効にする

 質問したい文書を開いたら右上の「Chat with PDF」をクリック。画面右側にチャットUIが開き、文書の解析が始まる。「5つのもっとも重要なポイントの箇条書きを作成」など、いくつか質問例が表示されるので、選択してみよう。

 試しに、テスト文書として作成した無線ルーターのリリースを読み込ませたところ、特徴やスペックなど5ポイントを抽出してくれた。本文を読み込むことなく、ポイントを押さえられるのは便利だ。

「Chat with PDF」をクリックする

チャットUIが開き、質問例をクリックする

 続いて、チャットで文書の内容について指示してみる。社内レビューを行なっている状況を仮定し、「文書の内容でおかしいところはないですか?」と聞いてみたところ、発表日が2024年になっているとか、「2025年初頭」と言う表現は具体的にした方がいいなどと指摘してくれた。

 しかも、回答にはどの部分を参照したのかがわかるようにリンクが付いている。小さな数字をクリックすると該当部分にフォーカスされるのだ。ファクトチェックが簡単なのはありがたい。

 今のところ「人間のレビューが不要になる」とまでは言えないが、それでも見落としを見つけてくれる可能性があるのでとても助かる機能だ。

「おかしなところはないか」とAIにレビューしてもらう

PDFだけではなく、Office文書にも対応する

 英語の文書を読み込ませて、日本語でやりとりすることも可能。2024年の日本におけるネット詐欺のレポートを読み込ませて質問したところ、きちんと内容をまとめて、わかりやすく教えてくれた。これは、海外の論文やレポートを読むのにとても役立つ。これまで、テキストをコピペして翻訳サイトに入れていた手間がなくなり、より効率的に情報収集できるようになる。

 ただし、日本語環境で英語のように異なる文書を扱う際は引用元を表示できないという。ここはちょっと残念。

英語の文書を読み込ませて質問し、日本語で回答してもらえる

 Word文書をドラッグ&ドロップし、AIに質問することもできる。PDFと同じように質問例を選んでもいいし、チャットで指示してもいい。文書内の各節ごとにAIのアイコンが表示されている。アイコンをクリックすると、「このセクションを要約」とAIに指示が飛び、チャット欄で要約を日本語で表示してくれる。

 Wordだけでなく、テキストやPowerPoint、Excelにも対応する。文書を作成している際、最終的にはPDFにするにせよ、途中でAIに何か聞きたいことがある場合、変換せずに対応できるのは便利だ。

PDF以外にWordファイルなども読み込みAIに質問できる

「要約」ボタンをクリックするとセクションを日本語で解説してくれる

複数文書の対応 契約書の更新箇所をAIが抽出

 複数文書にも対応している。たとえば、契約書を作成しているとき、いろいろなバージョンが生まれることがある。事前にやりとりしていた内容と、本番の契約書の内容が違っていたら大問題だ。とは言え、毎回、膨大な文書を精読するのも難しい。そんな時こそ、AIの出番だ。

 ホーム画面の上にある「おすすめのツール」から「ファイルを選択」をクリック。比較したい契約書のファイルを選び、「Chat with PDF」をクリック。「二つの文書の異なる点を教えてください」と入力してみる。

 すると、契約期間や更新期間が大幅に短くなっていることが判明した。自分でチェックする場合、小さい文字なので、読んで見つけるのは苦労しそうだが、AIなら一瞬で見つけてくれる。参照リンクをクリックし、本当に記載が変わっていることも確認できる。

おすすめのツールから複数ファイルをアップロードする

新旧契約書の異なるポイントをすべて見つけ出してくれた

年額8080円でAcrobatにAI機能を追加できる

 「Acrobat AIアシスタント」はAcrobat Standard/Pro、Acrobat Reader、Acrobat Web、Acrobat Readerモバイルアプリ、ブラウザ拡張機能などから利用できる。料金はAcrobat本体とは別料金になり、プランは月々プランが月額980円(税込)、年間プランの月々払いが月額680円(税込)、年間プランの一括払いが年額8080円(税込)となる。月当たりの料金としては、年額一括払いがもっともお得になる。ちなみに、学生版は月額220円(税込)で利用できる。

 AcrobatでAIが動くのはとても便利だ。また、AIもビジネス利用に適しているのも見逃せない。たとえば、アドビの大規模言語モデル(LLM)は中立で、バイアスや有害コンテンツを防ぐ機能を備えている。入力したデータをAIの学習に使うこともなく、安心して社内文書についてAIに質問できるのだ。

 登場したばかりの機能ではあるが、とても完成度が高い。特に、レビュー作業に活躍してくれることだろう。ぜひ触ってみることをお勧めする。

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