通信事業者とサービスプロバイダーの国内データセンターを紹介
信頼のブランド ネットワークと省エネに強いデータセンター4選
2025年02月12日 10時00分更新
企業のインフラを安心して運用できるデータセンターは果たしてどこか? 専業の3事業者を紹介した前回(関連記事:これぞスタンダード 専業データセンター3選)に続き、今回は通信事業者やサービスプロバイダーのデータセンターとして、さくらインターネット、インターネットイニシアティブ(IIJ)、NTTコミュニケーションズ、オプテージを紹介する。
郊外型データセンターのはしり GPU集積拠点となる石狩データセンター(さくらインターネット)
レンタルサービス、ホスティング、クラウドなど幅広いサービスを手がけるさくらインターネット。自前の北海道石狩データセンターに加え、東京に3ヶ所、大阪堂島に1ヶ所の都市型データセンターを運営する。
2011年にオープンした石狩データセンターは、郊外型データセンターの代表格。東京ドームの約1.1倍という広大な敷地に、現在3号棟まで建設されている。北海道の冷涼な気候を活用した省エネに当初から取り組んでおり、1・2号棟は外気を直接取り込む直接外気冷房方式、3号棟は温度変化の少ない間接外気冷房方式を採用。2023年6月には、水力発電を中心とした再生可能エネルギー電源100%に切り替えている。
石狩データセンターは、2018年9月に起こった北海道胆振東部地震の影響で北海道電力からの電力供給を失ったが、非常用発電で60時間を乗り切った。現在は同社が1000億円(国からの助成金500億円を含む)を投資して調達したNVIDIA製GPUの整備を進めており、昨年8月には2000基の整備完了を発表している。最新技術の実験場であり、つねに話題を提供し続ける石狩データセンター。その進化には今後も目が離せない。
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省エネに注力し続けてきたIIJ コンテナもいち早く導入(インターネットイニシアティブ)
日本のインターネットを黎明期からリードしてきたインターネットイニシアティブ(IIJ)。インターネット接続、MVNO、システムインテグレーション、アウトソーシングサービスなど多彩な事業を手がけているが、データセンターに関しては島根県松江市と千葉県白井市にある自社データセンターを中心に、国内16ヶ所で運営する。最大のメリットは、同社が誇る国内最大級のバックボーンへ直結できること。データセンター規格の「ファシリティスタンダード」においても、最高位のティア4、またはティア3相当以上に適合するほか、情報セキュリティや品質に関する国際規格にも対応している。
自社データセンターでは、いち早く省エネに注力してきたのがポイントだ。2011年に日本初の商用コンテナ型データセンターとして、島根県に「松江データセンターパーク」を開設。直接外気冷却を採用した独自開発のコンテナモジュール「IZmo(イズモ)」の採用により、消費電力を大幅に削減している。太陽光パネルによる発電も進め、2022年4月に再生可能エネルギー率100%を達成している。
2019年にはデータセンターの集積地区である千葉県の印西地区に「白井データセンターキャンパス」をオープン。4万㎡の敷地に約6000ラック規模という大規模なデータセンターとなっており、現在は2号棟まで建設されている。松江で培ってきた直接外気冷却による消費電力の削減はもちろん、最新のリチウムイオン蓄電池、三相4線式UPSなどを用いた電力の効率化など、脱炭素に向けた施策も常時アップデートし続けている。
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再エネ+液冷で実現する超省エネデータセンター IOWN APNのネットワークも魅力(NTTコミュニケーションズ)
「Nexcenter」ブランドでデータセンター事業を展開しているNTTコミュニケーションズ。2022年のNTTグループの事業再編以降、国内は東京(千代田区、江東区、文京区、北区、三鷹市、武蔵野市)、横浜、大阪(大阪市、茨木市)、香川県(高松市)で、海外は上海、香港でデータセンターを運営しており、世界20以上の国や地域でデータセンター事業を手がけるNTT Ltd.とも連携する。通信事業者ならではの高速なネットワークが売りだが、他社の回線サービスも選択可能。もちろん、セキュリティの各種認証やサービス安定度の信用格付け評価も受けており、コロケーション施設としての信頼性は高い。
現在、注力しているのは、超省エネデータセンター「Green Nexcenter」だ。2023年に国内で初めて直接液冷方式のサーバーに対応し、横浜第一データセンターでは設備の一部をリノベーションし、ラック単位での利用可能にしている。従来型データセンターに比べ、サーバー機器の冷却消費電力を約30%削減しているという。
また、2024年10月には高速・大容量、低遅延な通信を可能にするIOWNのオールフォトニクスネットワーク(APN)を活用することで、NVIDIA GPU搭載のサーバーを分散配置した生成AI学習の実証実験にも成功。液冷への取り組みともに、生成AIの需要増や省エネでのGPU活用といった課題に対して、現実的なソリューションを提供している。
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関西圏の一等地にコネクティビティデータセンターを新設(オプテージ)
2019年にケイ・オプティコムから社名変更した関西電力グループの通信事業者、オプテージ。「eo光」ブランドのFTTH、「mineo」ブランドのMVNOなど個人向けサービスのイメージが強いが、法人向けネットワークサービスをはじめ、クラウド、システム開発まで法人サービスも幅広く提供する。データセンターに関しては、大阪市内において20年に渡る運用実績を誇る。
オプテージのデータセンターは梅田北、心斎橋など大阪市内の一等地に位置しており、アクセスしやすいというメリットがある。免震構造の地震に強いビルを採用し、淀川の氾濫や津波に対する浸水対策、電力会社のノウハウを活かした停電対策なども行なっている。
2026年1月には地上14階建の曽根崎データセンターを新たにオープンする予定。クラウドやIXとの接続ポイントのある堂島・心斎橋エリアのデータセンターと、同社が保有する光ファイバーで直結するほか、同データセンター自身にもIXやISP、DCIなどの誘致も進めることで、クラウドやインターネットへの高いコネクティビティを提供する。免震設計や電源系統の冗長性、72時間以上の連続稼働が可能な非常用発電機、24時間365日の常駐管理など、JDCCの定めるティア4に準拠した安心・安全な環境を提供するという。今後、関西での一等地になることは間違いない。
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