AI検索、OLTP、分析ワークロードを高速化、省電力化やリソース効率向上も
オラクルの“分散クラウド”戦略を支えるExadata、最新版「Exadata X11M」発表
2025年01月21日 07時00分更新
日本オラクルは2025年1月17日、データプラットフォーム製品の最新版「Oracle Exadata X11M」を発表した。RAGのAIベクトル検索やトランザクション処理、分析処理(OLTP、OLAP)などの大幅なパフォーマンス向上に加えて、エネルギー効率の向上、より柔軟なリソース拡張なども実現している。
AIベクトル検索、OLTP、分析クエリのすべてでパフォーマンス向上
Exadataは、多様なデータベースワークロードを高速に処理できるアプライアンス製品だ。最新の「Oracle Database 23ai」ソフトウェアを中核に、最適化されたスケールアウト型のデータベースサーバーとストレージサーバーを、高速/低遅延のRDMAネットワークで接続したハードウェアを組み合わせて提供する。
従来、Exadataは大規模なデータベース処理を必要とする企業がオンプレミス導入し、自社で運用するのが一般的だった。だが現在はそれだけでなく、顧客データセンター内でオラクルが運用/提供するマネージドサービス「Exadata Cloud@Customer」や、オラクルのパブリッククラウドサービス「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」、さらに「Oracle Database@AWS」や「Oracle Database@Azure」のような他社クラウドでのOracle Databaseサービスの基盤としても利用されている。
日本オラクル 執行役員でExadata製品を統括する斉藤千春氏は、「特に2024年の1年間は、Exadataにとって大きな変化を経験してきた」と述べる。AI/生成AI領域におけるデータニーズへの対応、「Exadata Exascaleアーキテクチャ」の発表とクラウドでの提供、AWSやAzure、Google Cloudといった他社パブリッククラウドでのExadataサービスの提供などだ。
前バージョンのExadata X10M発表からおよそ1年半ぶりとなる今回のバージョンアップでは、そうした「大きな変化」も背景とした機能強化が行われている。
まずX11Mでは、ハードウェア/ソフトウェア両面の強化によってパフォーマンスが大きく向上している。
たとえば、生成AIのRAGにおいてニーズが高まっているベクトル検索処理では、HNWS(インメモリベクトルインデックス)の検索クエリで最大43%、またIVF(永続的ベクトルインデックス)の検索クエリで最大55%高速化されているという(いずれも前バージョンのX10M比、以下同様)。
「インメモリのHNSWでは、第5世代のAMD EPYCが対応する高速メモリ(DDR5-6400)、ストレージサーバーで採用したPCIe 5.0対応のフラッシュなどで性能向上を実現した。またIVFでは、ストレージサーバー上に新しいアルゴリズムを入れて高速化している」(首藤氏)
そのほかにも、新しいTop-Kアルゴリズムの使用でストレージサーバー上でのデータフィルタリングが最大4.7倍、バイナリベクトルの検索クエリが最大32倍、それぞれ高速化した。
OLTP処理においては、シリアルトランザクション処理、同時トランザクション処理のパフォーマンスがそれぞれ最大25%向上しているほか、ストレージサーバーへの書き込みIOPS、XRMEM(ストレージサーバーが搭載するRDMAメモリキャッシュ)の読み取りレイテンシ、フラッシュの読み取りレイテンシもそれぞれ改善した。
また分析処理においても、分析クエリ処理は最大25%高速化し、フラッシュの読み取りスループットは最大2.2倍高速化している。
消費電力量の抑制、リソース拡張の柔軟性を実現する新たな仕組みも
Exadata X11Mにおける、エネルギー効率の向上、消費電力量の削減についても強調された。上述したようなパフォーマンスの向上に伴って、既存のデータベースワークロードはより小規模なシステムで処理できるようになる。これが消費電力や、データセンターの冷却電力削減につながる。
加えて、新たな電力管理モードにより動的に消費電力を抑える仕組みも備えている。たとえば、使用していないCPUコアをシャットダウンする機能、“パフォーマンス優先”ではなく“消費電力優先”で電力消費量の上限を設定する機能などだ。
システムの稼働効率やコストパフォーマンスについても、新たな仕組みにより向上が図られている。
X11Mでは、Exascaleアーキテクチャを採用したことで、柔軟なスケール拡張が可能になっている。具体的には、データベースサーバーとストレージサーバーのそれぞれを個別に、1ノード単位で拡張していくことができる。つまりオンプレミス導入においても、必要に応じた最適なリソース量に調整できる仕組みだ。
「データベースサーバーとストレージサーバーの構成比率をより柔軟にしたうえで、オンプレミスの顧客にとってもリソースの利用効率を高め、コストパフォーマンスを最大化することに寄与する。さらに、データベースサーバーにおけるVM(仮想マシン)の高密度化も進めており、従来は1ノードあたり10VM前後だったものが、50VM前後を立ち上げられるようになった」(首藤氏)
