過半数が「キャリアパスに不安」の調査結果、“次世代のIT運用組織”IPEチームへの変革を
“若者は定着せず、シニアはあきらめの境地” そんなIT運用部門を変えるには? ガートナーが提言
2024年12月06日 09時00分更新
ガートナージャパンが国内企業を対象に実施した調査で、IT運用に関わる人の過半数が、自身のキャリアパスに「不安や不満」を持っていることが明らかになった。その背景には「成果が表に出ず、評価されにくい」「新しい技術に触れる機会がない」といったIT運用組織の現状があるという。こうした状況に対し、ガートナーでは「ビジネス価値に直結する『次世代のIT運用組織』」への移行を提言している。
2024年4月にガートナーが日本企業(従業員500名以上)に行った調査では、IT運用担当者の過半数が「自身のキャリアパスに不安や不満がある」と回答した。そう考える具体的理由を尋ねたところ、「他のIT部門のメンバーと比べて昇級・昇進が遅い」(65%)、「待遇が悪い/評価されない」(60%)、「新しい技術に触れる機会がない」(57%)が上位3つだった(冒頭の図版を参照)。
順位の入れ替わりこそあるものの、この3つの理由は1年前(2023年4月)の調査結果とまったく同じである。
こうした結果について、ガートナージャパン シニアディレクターアナリストの米田英央氏は、IT運用の仕事は「安全/安定にやって当たり前であり、評価されにくい」「文書化/形式知化しにくく、長年の経験による判断や行動が必要とされる」「人手不足に加えて若い人はやりたがらず、人材が固定化している」ととらえられていることを指摘する。
さらに、現在はあらゆる企業がDXの実現を目指しているが、IT運用部門が得意としてきたのはレガシーシステムを中心とした運用と保守、ウォーターフォール型の拡張や更改であり、DX推進に向けてアジャイルな変更を求める開発者やビジネスとの対立も起きかねない。
つまり、IT運用担当者の“キャリアパスが見えない”不安の大きな原因は、担当者個人や部門自身ではなく、企業内における“IT運用部門の位置付け”にあると言える。
こうした状況を変えるために、ガートナーでは、IT運用部門の位置付けを見直して「ビジネス価値に直結する『次世代のIT運用組織』」へ転換することを提言している。具体的には、これまでのインフラと運用の領域(ガートナーでは「I&O領域」と呼ぶ)でのノウハウと、DevOpsのアプローチをベースに、企業のビジネスに資するプラットフォームを提供する「インフラストラクチャ・プラットフォーム・エンジニアリング(IPE)チーム」への転換が求められているとする。
ガートナーは、IPEチームの役割を「クラウドを含む社内外のインフラリソースを選択(キュレーション)し、開発チームにデジタルサービスを実現するプラットフォームとして提供すること」と述べている。開発チームの要件を聞くと同時に、提供価値を可視化してデジタルサービスのエンドユーザーに届けるフィードバックループを実現することで、「開発の生産性向上ならびにビジネス成長に直接寄与することができる」とする。
なおガートナーは昨年の発表の中で、「2027年までにIPEのデリバリ・モデルへ変革できないI&Oリーダーの70%は、レガシー・インフラストラクチャ・サービスのみを管理することになる」と予測している。
なおIPEチームへの転換に向けてIT運用担当者が身につけるべきスキルとして、ガートナーは、IaC(Infrastructure as Code)やPaC(Policy as Code)などに代表される「ソフトウェア・エンジニアリング」、さらに「SRE(サイト・リライアビリティ・エンジニアリング )」のスキルを挙げている。