「Amazon Bedrock」事例、金融業界特化の生成AIユースケースが続々
金融向けサービス+生成AI “5つの実例” ―RAGの実装は? モデルの選択は?
2024年09月09日 07時00分更新
アマゾン ウェブ サービス ジャパンは、2024年9月5日、「金融領域における業務アプリケーションへの生成AI組み込み事例」に関する記者説明会を開催した。
AWSは現在、「Amazon Bedrock」を中心とした生成AIアプリケーションを開発するためのソリューションを提供し、さらに、ユースケースの検討段階から手厚く支援するプログラムも展開しながら、生成AIによる課題解決の推進に力を注ぐ。
これは金融領域においても同様だ。同社の金融事業開発本部長である飯田哲夫氏は、同領域における生成AI活用が、一般的なユースケースから業界特化のユースケースへと広がりを見せており、RAGやファインチューニングなどを用いた精度向上に取り組む企業が多いと説明する。
金融領域におけるもうひとつの生成AIトレンドが、顧客向けの業務アプリケーションに生成AIを組み込む事例の増加だ。飯田氏は、「(このトレンドにより)今後、何十社、何百社という企業が生成AIを活用するようになる。アプリケーションに組み込まれることでUIも洗練されていき、今後、明示的に意識しなくても業務支援に生成AIが取り込まれていくフェーズに移っていく」と強調した。
ここからは、Amazon Bedrockを用いて、金融業界向けアプリケーションに生成AIを組み込んだ5社の取り組みを紹介する。
インテック:金融向けCRMに特定ユースケースに強いAIエージェントを
インテックが生成AIを組み込むのは、金融機関向けCRMの「fcube」である。現在は、このCRMに搭載するユースケース特化型の生成AIエージェントを開発中であり、2024年度中にリリース予定だ(「商談記録の要約・分析」「行内情報を踏まえたFAQ」の2つのユースケースで試行版を提供中)。
アーキテクチャーとしては、Amazon Bedrockを核に据え、“AIエージェント基盤”、“fcubeサービス基盤”、“データ利活用基盤”の3つで構成。AIエージェント基盤はサーバレスで構築し、ユースケースに応じたエージェントをAPIとして疎結合させ、fcubeサービス基盤にデプロイされた各サービスで柔軟に利用できる。データ利活用基盤には、データ加工のためのデータパイプラインを内包し、安全にデータのやり取りができるよう設計されている。
同社が最終的に目指すのは、生成AIと意識させずに、蓄積したデータを基にパーソナライズされた機能を実装することだ。インテックの宮丸友輔氏は、「ユーザーのニーズに応えて、蓄積されたデータを継続分析していくことで、人に寄り添ったエージェントを生み出して、使いやすいCRMを提供したい」と語った。
キャピタル・アセット・プランニング:保険の募集関連文書チェックサービスを展開
キャピタル・アセット・プランニングは、生成AIを組み込んだ生命保険の募集関連文書チェックサービス「リベリス(LibelliS)」を提供予定だ。
保険における募集関連文書は、ガイドラインや規定を遵守していなければならないため、作成作業の大半はその調査に費やされる。この課題を解決するのが、生成AIが文章を分析・評価してくれるリベリスであり、同社内の検証では「調査業務の65%を削減できる」という。
仕組みとしては、まずBedrockがPDFを解析、次に評価基準を検索するが、精度を高めるためにエンタープライズ検索サービスである「Amazon Kendra」を用いて“Graph RAG”を構築している。最後にBedrockが、検索された情報をモデルにインプットして、評価結果を生成する。基盤モデルは、Anthropicの「Claude 3.5 Sonnet」を使用。マルチモーダルに対応するため、表形式を含む資料からも、高精度なテキスト抽出が可能だ。
同サービスは、2025年4月に正式リリース予定。キャピタル・アセット・プランニングの佐々木勝則氏は、「リベリスは、金融業界全般に適用可能であり、機能の強化に合わせて、今後、銀行や証券などの領域にも拡大していく」と語った。