メタが6月1日、最新のVR/MRヘッドセット「Meta Quest 3」を発表しました。従来機よりも解像度が高く、薄型で新しいデザインを採用したもの。価格は128GBモデルは500ドル(日本では7万4800円)で、さらにストレージ容量が多いモデルも提供予定です。
性能は「Quest 2」の2.5倍、「Quest Pro」の1.2倍?
500ドルという価格は、円安の進んでいる日本では若干高いですが、ザッカーバーグが予告していたとおりほどほどの値段におさまっています。
Quest 3の仕様についてまだ詳細はわかっていませんが、「思ったよりも高性能」というのが初めの感想でした。特に大きいのが次世代Snapdragonですよね。グラフィックス性能がQuest 2の2倍ということがアピールされていました。
昨年11月、チップセットの出荷が始まったときのベンチマークスコアを中国のレビュアーが制作したという情報が出ていたのですが、記事によると性能としてはApple M1に迫るレベル。Quest 2のベースチップとされている、2年前のハイエンド「Snapdragon 865」に比べて2.5倍の性能になっています。これがもともとQuest 3に搭載されるという噂だったのですが、正しかったことになります。
Quest Proに搭載されているチップセットに比べても1.2倍あまりの性能向上があり、それで500ドルにおさえているというのは相当攻めた価格帯なんじゃないかと思います。
コントローラーはQuest Proの「Quest Touch Pro Controllers」に非常に似ており、リングがない形状なので、本体背面にセンサーを搭載してくるのではないでしょうか。公開されたCGでは見えない角度になっているので意図的に隠しているようにも思えます。これだけでも300ドル(日本では3万7180円)で販売されているものなので、相当費用圧縮に工夫がなされているのでしょう。
また、カメラパススルー機能が強化され、2つのRGBカメラ、深度センサー、Quest 2よりも10倍以上の画素のパススルーが搭載され、現実世界との複合性を進めるMRデバイスとしてかなりの強化をしています。コスト高につながりやすい、レンズの品質についてははっきりしていませんが、上位モデルにあたる「Quest Pro」のノウハウをいかに廉価版に落とすかというのがQuest 3のコンセプトなのではないかと思いました。
代わりに、Quest Proに搭載していたフェイストラッキングとアイトラッキングはカットしています。そうしなければコストが下げられなかったんでしょうね。
総合的に見ると、ソフトで売上を立てなければハードを売っても利益が出ないギリギリの線を攻めた作りなのではないかと感じます。レンズサイズを縮小して軽量化を進めている点など、性能的にはかなり頑張って、魅力ある製品という印象です。資金力のあるメタでないとこの価格にはできないのではないでしょうか。

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