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強電場における量子電磁力学をエキゾチック原子で検証=理研など

2023年05月30日 06時36分更新

文● MIT Technology Review Japan

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理化学研究所などの国際共同研究チームは、最先端のX線検出器である「超伝導転移端マイクロカロリメータ(TES)」を用いて、負ミュオン(電子よりも約200倍重く、負の電荷を持つ素粒子)と原子核からなる「ミュオン原子」から放出される「ミュオン特性X線」のエネルギースペクトルを精密に測定。強電場における量子電磁力学をエキゾチック原子(原子を構成する原子核または電子を他の荷電粒子で置き換えてできた原子)で検証するための原理検証実験に成功した。

理化学研究所などの国際共同研究チームは、最先端のX線検出器である「超伝導転移端マイクロカロリメータ(TES)」を用いて、負ミュオン(電子よりも約200倍重く、負の電荷を持つ素粒子)と原子核からなる「ミュオン原子」から放出される「ミュオン特性X線」のエネルギースペクトルを精密に測定。強電場における量子電磁力学をエキゾチック原子(原子を構成する原子核または電子を他の荷電粒子で置き換えてできた原子)で検証するための原理検証実験に成功した。 研究チームは今回、大強度陽子加速器施設「J-PARC」で得られる低速負ミュオンビームをネオン(Ne)気体に照射し、生成されたミュオン原子(ミュオンNe原子)が放出するミュオン特性X線(原子核に束縛された負ミュオンが高いエネルギーの軌道から低いエネルギーの軌道に遷移する際に放出されるX線)のエネルギーを、TES検出器を使って精密に測定。ミュオン特性X線のエネルギーを、1万分の1を下回る絶対精度で決定し、強電場における真空分極(仮想電子・陽電子対の生成・消滅に伴うエネルギー変化)の効果を5.8%という極めて高い精度で検証できた。 電荷を持つ粒子と光の間のミクロな相互作用を記述する量子電磁力学(Quantum ElectroDynamics:QED)については、どこまで正しい物理理論なのか検証することが課題となっている。強電場環境はQED検証の舞台として非常に重要であるが、これまでの測定では精度が大きく損なわれていることが指摘されてきた。今回の研究で実証された高効率かつ高精度なX線エネルギー決定法は、ミュオン原子を用いた非破壊元素分析法などさまざまな研究分野への応用が期待される。 研究論文は、科学雑誌フィジカル・レビュー・レターズ(Physical Review Letters)オンライン版に2023年4月27日付けで掲載された

(中條)

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