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年次イベント「Dell Technologies World 2023」現地レポート

Dellがアズ・ア・サービス「APEX」強化、NVIDIAと生成AIソリューションも発表

2023年05月30日 07時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 Dell Technologiesが2023年5月22日~25日、米国ラスベガスで年次イベント「Dell Technologies World 2023」を開催した。同イベントでは、アズ・ア・サービスの「Dell APEX」拡充のほか、エッジ、生成AI分野におけるNVIDIA提携など数多くの発表が行われた。現地からレポートする。

“アイディアを素早くイノベーションに変える”企業を支援

 2020年以降、コロナ禍の影響でオンライン開催やオンライン中心のハイブリッド開催が続いてきた各ITベンダーの年次イベントだが、今年は本格的にリアル会場でのオンサイト開催に戻っている。Dell Technologies Worldも昨年はハイブリッド開催だったが、今年は1万人が登録し会場は活況だった。昨年は日本からの参加もほとんどなかったというが、今年はかなりの数のパートナーと顧客企業がラスベガスに足を運んだ。

Dell Technologies World 2023は、ラスベガスのマンダレイ・ベイ・リゾートで開催された

 Dell Technologies Worldの今年のテーマは「Transform ideas into innovation faster」、すなわち“アイディアを迅速にイノベーションへと変える”というものだ。顧客企業が必要としているその動きを支援するのが、Dellのテクノロジーということになる。

 初日の基調講演でステージに立ったのは、39年前に“アイディア”を持ってDellを創業したマイケル・デル氏だ。デル氏は最新のトレンドとして生成AIに触れ、「人類の進歩は技術革新と結びついている」と述べる。

Dell Technologies 会長兼CEOのマイケル・デル(Michael Dell)氏

 生成AIをはじめとするAIでは、データが多いほど優れたモデルを開発することができる。デル氏は、「2025年までに、エッジにあるAIワークロード向けのサーバーの88%が推論処理に利用される」というIDCの予測に触れながら、「これをサポートするには、これまでとは桁が違うような、高速かつ効率のよい新しいアーキテクチャが必要になる」と説明し、「Dellはその準備ができている」と強調する。

 「AIワークロード、エッジ、テレコム、クラウド、データセンターなどさまざまな用途に向けた、堅牢でコンパクト、パワフルなサーバーを用意している」(デル氏)

 Dellが描くのは、クラウド/エッジ/オンプレミスがすべて統合され、1つのシステムのように扱うことができる世界だ。デル氏は、「NVIDIA HGX H100 Tensor Core GPU」を8基搭載したAI用途向けサーバー「PowerEdge XE9680」(詳しくは後述)、マルチクラウド時代に向けたソフトウェア定義インフラである「PowerFlex」といった製品を紹介しながら、デルの製品やソリューションはすべて“マルチクラウド・バイ・デザイン”で生み出されていると紹介した。「Dellのストレージ、コンピュート、エッジセキュリティ、データ保護、データ管理ソリューションはすべて、マルチクラウドシステムのすべての要素と接続できるように設計されている」(デル氏)。

Dellのアズ・ア・サービス戦略を担う「Dell APEX」を拡充

 2日目の基調講演でマルチクラウド・バイ・デザインのコンセプトを説明した同社 共同COOのジェフ・クラーク氏は、現在の企業が抱える課題は「パブリッククラウド、オンプレミス、エッジ、コロケーションサーバーがあり、どのワークロードをどこで動かすか、最適化するか」にあると説明する。

Dell Technologies 共同COOのジェフ・クラーク(Jeff Clarke)氏

 こうした課題に対するDellの回答がDell APEXだ。APEXは、さまざまなクラウドで一貫した体験を提供し、アプリケーションやデータがどこにあっても予測可能で最適なコストで利用できる。これにより「アジャイル」「伸縮性」「ダイナミック」「簡単にコンシュームできる」の4つの特徴を持ったマルチクラウドの運用が可能になると、クラーク氏は説明する。

 APEXで実現するマルチクラウド・アーキテクチャの中心となるのが、共通のストレージレイヤーだ。クラーク氏は、これは「クラウドとクラウドを結ぶ接続ファブリック」であり、「クラウド、ワークロードをつなぎ、収集したデータをシームレスかつ効率的につなぎ、オンプレミス資産とパブリッククラウドストレージの間のデータモビリティを実現する」ものだと語る。

 APEXは共通のストレージレイヤーを中心に、オンプレからクラウド(「グラウンド・ツー・クラウド」)、クラウドからオンプレ(「クラウド・ツー・グラウンド」)、それに管理という、3つの要素を備える。

 今回のDell Technologies Worldでは、1年前に発表した「Project Alpine」を製品化した「APEX Storage for Public Cloud」(「APEX Block Storage for AWS」「同 for Microsoft Azure」「APEX File Storage for AWS」)、“クラウド・ツー・グラウンド”としてオンプレミス環境でクラウドを拡張するプラットフォーム「APEX Cloud Platforms」(「Dell APEX Cloud Platform for VMware」「同 for Azure」「同 for RedHat OpenShift」)などが発表された。

 「共通のストレージレイヤーがAPEX Cloud Platformに統合されているため、開発者はどのスタックを選んでも、要件に基づいてワークロードを最適な場所に配置できる。インフラや場所について考える必要はない」(クラーク氏)

 また、ベアメタルインフラのアズ・ア・サービス「APEX Compute」、PCアズ・ア・サービス「APEX PC-as-a-Service」も発表された。アズ・ア・サービスで「PCからインフラまで提供できるベンダーはDellだけだ」と、クラーク氏は胸を張る。

 管理では、パブリッククラウドにあるDellのストレージソフトウェアの実装、プロビジョニングなどのライフサイクル管理のための「APEX Navigator for Multicloud Storage」およびコンテナ向け「APEX Navigator for Kubernetes」が登場した。

グラウンド・ツー・クラウドの「APEX Storage for Public Cloud」、クラウド・ツー・グラウンドの「APEX Cloud Platforms」、管理の「APEX Navigator」などを発表した

 なお、APEX Storage for Public Cloudで対応するパブリッククラウドは、現時点ではAWSとAzureのみだ。これについて同社 共同COOのチャック・ウィトン(Chuck Whitten)氏は、「顧客が求めているものを考慮しながら順に取り組み、今後も拡大していく」と語った。

 このように、APEXはハードウェアベンダーからサービスへ転身を図るDellにとって重要な製品だ。ただし、Dellの戦略では「グロース(成長)エリア」ではなく、PCやストレージなどと共に「コア」と位置づけられている。

 これについて同社 APJ プレジデントのピーター・マース(Peter Marrs)氏は、APEXは「顧客がインフラを簡単に導入できるようにするための方法」であり、「成長分野をいかに推進するかを担う」ものだと説明した。

「コア」と「グロースエリア」で示された、Dell Technologiesのビジネス戦略

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