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致死性心室不整脈の治療に炭素イオン線使用=量子研などが初

2023年03月31日 05時42分更新

文● MIT Technology Review Japan

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東海大学と量子科学技術研究開発機構QST病院らの共同研究チームは、致死性心室不整脈(心室頻拍)に対する、世界初の炭素イオン線(重粒子線)による放射線治療を2023年2月に実施した。これまで炭素イオン線治療は主にがん治療を対象としていたが、難治性不整脈に苦しむ患者の新たな選択肢となる可能性がある。

東海大学と量子科学技術研究開発機構QST病院らの共同研究チームは、致死性心室不整脈(心室頻拍)に対する、世界初の炭素イオン線(重粒子線)による放射線治療を2023年2月に実施した。これまで炭素イオン線治療は主にがん治療を対象としていたが、難治性不整脈に苦しむ患者の新たな選択肢となる可能性がある。 今回の治療では、患者は治療室へ独歩で入室し、麻酔などの使用はなしで、治療時間は準備を含め1時間、照射時間は8分であった。治療中、植込み型除細動器の誤作動や故障はなく、バイタルサインは安定。治療後、急性心膜炎や心不全などの合併症はなく、4日後に退院し、1カ月後も有害事象なく経過しているという。 難治性心室頻拍に対する体外放射線照射はX線が使用されているが、治療対象領域(ターゲット)周辺の健常組織を完全に回避することが難しいという問題がある。そのため、心臓を栄養する冠動脈とターゲットが近接している症例は治療が困難なことがあった。今回の治療では、病巣で最大エネルギーを放出して止まるという炭素イオン線の物理特性をいかすことで、冠動脈を回避することに成功した。 炭素イオン線を用いた重粒子線治療は放射線医学総合研究所(現 量子科学技術研究開発機構:QST)で1994年6月に開始され、現在までに約1万5千人のがん患者に実施されてきた。新世代の放射線治療として、今まで一貫してがんや肉腫などの悪性腫瘍性疾患を対象に使用されており、今回のような非腫瘍性疾患に対する適用は初めての試みである。

(中條)

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