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kintoneパートナーセレクション 第5回

コロナ禍で加速化するビル管理ビジネスの変化に迅速に対応

デジタル化しないと勝てない 老舗ビル管理会社をkintoneで支援する富士通Japan

2023年01月25日 09時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

提供: 富士通Japan

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 西日本を中心に2,300件以上のオフィスビル管理を手がける星光ビル管理。コロナ禍を契機に大きく変化するビル管理のビジネスに対応すべく、パートナーの富士通Japanとkintoneを活用したデジタル化にチャレンジしている。星光ビル管理の情報システム部と富士通Japanにkintone導入と展開について聞いた。(インタビュアー ASCII編集部 大谷イビサ)

攻めのITに転じた老舗ビル管理会社の危機感

 1963年にビル管理業に本格進出し、2023年5月29日にビル総合管理業進出60周年を迎える星光ビル管理。オフィスビルや病院・商業施設など西日本のビルを中心に管理を手がけており、設備管理、警備、清掃、工事や施設のリニューアルまで包括的に請け負っているのが特徴だ。従業員は4,000名規模で、多くの従業員がお客様のビルに常駐し、設備点検、警備、清掃などを担っている。

 星光ビル管理の情報システム部は、もともと経理部門から独立した経緯もあり、長らくバックオフィスが中心だったが、今は全社挙げてのIT化を担っている。星光ビル管理 情報システム部長 システム開発グループ長 黒木穂氏は、「5年前までは経理や事務管理がメインで、いわゆる本業にあたるビル管理に関するITまでは手がおよびませんでした。しかし、今はビル管理を行なっている現場のサポートも担っているので、デバイス管理やフロント向けシステム構築まで担当領域が広くなっています」と振り返る。

星光ビル管理 情報システム部長 システム開発グループ長 黒木穂氏

 まさに守りのITから攻めのITへ。その背景にある危機感はかなり強烈だ。「あらゆる分野・領域でデジタル化していかないと、もはや競争力優位性を維持できません。人間が高い品質でサービスを提供する時代から、人間とロボットやAIを組み合せた効率的かつ付加価値ある提案・訴求力がビル管理会社にも求められています」と黒木氏は語る。スリム化を前提としたバックオフィスも守りながら、現場に密着したシステムで業務を効率化し、デジタルで新たな価値を提案していくことが求められるようになったわけだ。

 コロナ禍や労働人口の減少といった社会的背景を契機に、ビル管理のビジネスにも大きな変化が訪れている。たとえば、ビル管理の中で大きなウェイトを占める清掃業務については、「センサーやカメラのようなIoTを用いて、人材配置を最適化するなど、本格的な人不足を前に実用化に向けて本格的なビジネス展開をする会社も今後出てくると思います。コロナ禍でオフィスビルの利用頻度が落ちたのをきっかけに、新しいビル管理手法が急速に広がろうとしています」と黒木氏は説明してくれた。

基幹システムだけではダメ パートナーの富士通Japanも同じ危機感

 こうした市場動向もあり、2021年に出された星光ビル管理の中期経営計画ではデジタル化も経営の柱として、トップダウンで「デジタル化推進会議」が作られた。「経営としては、デジタル化に遅れているという認識。早期にキャッチアップしないといけないという危機感がありました」(黒木氏)。

 デジタル化は全社の目的となり、現場からさまざまな相談が情報システム部に持ちかけられるようになった。「これまではオフコンメンテナンスのための情シスといっても過言ではありませんでした。でも、今後は保守等、専門ベンダーにお任せし、われわれはコア業務をきちんとグリップすることが求められるようになりました。攻めの情シスへシフトして行きたいと考えています」と黒木氏は語る。

 同社のITパートナーである富士通Japanも、まさに同じ危機感を共有し、攻めのITへの提案を模索しているところだったという。富士通Japanの辻本和也氏は、「われわれも長らく基幹システムを中心にビジネスをしてきたのですが、基幹システムだけでは当然お客さまのニーズを満たすことはできません。今後、不動産やビル管理でよりよいソリューションを提供していかなければと考え、各種他社サービスを調べる中でサイボウズ社のkintoneにつながりました」と振り返る。

富士通Japan 産業・流通デリバリー本部 業種ソリューション事業部 第二ソリューション部 部長 辻本和也氏

 星光ビル管理でのkintone導入のきっかけになったのは、2018年に行なった基幹システムのリプレースだ。長年使っていたオフコンを富士通のERPパッケージである「FUJITSU Enterprise Application GLOVIA smart ビルメンテナンス・不動産プロパティマネジメント(以下、GLOVIA smart)」に移行。これにより、同社はオープンの世界に舵を切った。基幹システムとより柔軟に連携できるようになり、SaaSやクラウドの導入も加速していたという。

 そんな2020年の初頭、kintoneは現場からの報告や連絡ツールとして導入された。黒木氏は、「最初から確たるビジョンがあったわけではないですが、社内に散らばったExcelをどう巻き取っていくかはテーマでした。バックオフィスを担う基幹システムより小回りの利く、各所から適切に情報を吸い上げる基盤システムとしてkintoneは1つの解決策だと思っていました」と語る。

現場から情報を吸い上げるラストワンマイルのツール

 kintone選定の理由は使いやすさだ。現場でシステムに入力してもらうことを考えると、ユーザーインターフェイスは重要。「従業員の平均年齢が高いこともあり、なかなかITになじめず、苦手意識を抱える方も多い。現場からの情報の吸い上げを実現するには、kintoneのようなわかりやすいシステムが必要だと考えました」(黒木氏)。

 導入時、星光ビル管理が富士通Japanとともに作ったのはビルの作業履行アプリだ。「これまでは清掃などの作業報告を紙に記録・報告・保管していました。でも、これって無駄だよねということで、kintoneでアプリ化しました」と黒木氏は振り返る。富士通Japanの辻本氏は、「現場の方に起案してもらった意見をどのように具現化していくか。情報システム部とわれわれがいっしょにくみ取って、アプリとして提供していきました」と振り返る。ただ、残念ながら試験運用を開始しようとした矢先にコロナ禍となり、対応のためにいったん休止した。

 しかし、停滞していたのはコロナ禍の初期だけだったようだ。その後はNotesやExcelを使っていたクレームやトラブルの管理システムをkintoneで構築。また、コロナ禍で出社を絞る目的もあり、今まで紙ベースだった申請業務についてもkintone上に汎用ワークフローとして移行することにした。他の部署への作業依頼、総務や人事関連含めて220種類以上の申請をパターン化し、kintoneに載せ替えたという。

 黒木氏の口から出てくるのは「現場とのラストワンマイルをつなぐツール」というフレーズだ。基幹システムを対象とした既存の情報システムの枠を脱却し、現場からの情報を吸い上げ、経営に活かすためのまさに「ラストワンマイル」。単なる紙からデジタルへの移行のみならず、変化するビル管理のビジネスに対応するためのツールとしてkintoneを活かそうと画策しているわけだ。

基幹システムとの連携を推進 業界に新しい価値を提案

 最新の取り組みとしては、年末にkintoneによる営業支援システムが稼働を開始したばかりだ。ビル管理会社としては、新規導入を増やすだけではなく、既存のビルオーナーとの関係強化が収益に直結する。「お客様のビルを預かる我々がビルの課題をもっとも理解・把握しているのなら、設備管理、警備、清掃という日常業務だけでなく、施設の健全化維持のための工事やリニューアルの追加提案もできます」と黒木氏は語る。たとえば、提案履歴や設備の状態・点検の履歴を分析すれば、適切なタイミングでアップセルを提案できるというわけだ。

 こうした提案のベースになる営業支援システムは専用システムも検討していたが、最終的にkintoneで構築することにした。「汎用ワークフローやトラブル管理などいろいろ使っていたので、kintoneはもう全社の基盤になると考えました。確かに営業支援の専用システムは機能豊富で画面等よくできているのですが、要はどんなシステムでも上手く活用するかが重要です。基盤としてのkintoneの優位性や将来性へ投資した感じです」と黒木氏は語る。単機能のSaaSは安価だが、kintoneを基盤として導入し、利用範囲を拡げていけば、よりコストパフォーマンスは高まるという考え方だ。

社内ミーティングでもkintoneが活用されている

 星光ビル管理がいま進めているのは、Oracleを基盤とした統合データベースの構築だ。基幹システムのGLOVIA smartや現場から吸い上げたkintoneのデータをこの統合データベースに登録し、経営や戦略の立案に活かしていきたいという。「またkintoneを統合データベースのインターフェイスとするだけでなく、現場で発生した勘定系に直結する情報をどのようにkintoneを介して、GLOVIA smartに持っていくのかは大きなテーマですし、富士通Japanさんには多方面の提案・技術支援も期待しているところです」と語る。

 富士通Japanとしても、コスト面でも中堅企業・中小企業をターゲットとしたkintoneは導入ハードルが低く、APIも用意されているため、連携もしやすいという。辻本氏は、「当社が今まで知らなかったバックオフィス業務以外の現場業務をどんどん理解できるようになり、お客さまも増えてきたので、将来的には1つ1つをテンプレート化し、業界向けサービスとして提供していきたいと思います」と語る。

 既存の顧客とベンダーの関係を超え、業界に対して新しい価値を共創している星光ビル管理と富士通Japan。両者が現場を理解し、課題解決に結びつけるための強力な武器がkintoneというわけだ。

(提供:富士通Japan)

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