このページの本文へ

マルチクラウド体験を進化させる「Project Alpine」と「Project Frontier」も紹介

デルが「Dell APEX」で解消を狙うマルチクラウド時代の新たな課題

2022年12月08日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 デル・テクノロジーズは2022年12月6日、同社が“as-a-Service”モデルで展開する「Dell APEX」ポートフォリオ管理の責任者らが出席し、APEXを通して同社が実現しようとしているのマルチクラウド戦略や、最新の開発プロジェクトを紹介するメディアブリーフィングを開催した。

最新のクラウド体験とコンサンプション体験を、マルチクラウド世界のあらゆる場所で実現するのがDell APEXの大きな狙いだ

Dell Technologies 「Dell APEX」製品管理担当バイスプレジデントのチャド・ダン(Chad Dunn)氏、APJシニア ディレクター 兼 プリセールス責任者 「Dell APEX」クラウド&コンテナ ソリューションのグレン・ハイアット(Glen Hyatt)氏

APEXを通じて「顧客をマルチクラウドの世界へと導く」

 Dell APEXの戦略について、ダン氏はまず「Dell Technologiesの顧客の9割はすでにハイブリッドクラウド環境を活用しており、さらにそのうちの75%は3つ以上のパブリッククラウドを利用している」と切り出した。

 「まさにマルチクラウドの世界への移行が進んでいると言える。APEXが目指すのは、オンプレミス、パブリッククラウドのそれぞれが抱える課題を解決しつつ、顧客をマルチクラウドの世界へと導くことだ」(ダン氏)

APEXでは現在、コンピュート(仮想マシン、コンテナ、HPCなど)やストレージ(ブロック、ファイル、オブジェクトなど)、そしてデータ保護のそれぞれを、オンプレミスも含むマルチクラウドをまたぐかたちで“as-a-Service”で提供している

 すでによく知られるとおり、オンプレミスITには導入にかかるコストや時間の柔軟性に欠けること、一方でパブリッククラウドにはセキュリティやコスト、パフォーマンス、データグラビティ(クラウドで生成されたデータをほかに移動しづらいこと)の課題がある。

 さらに、複数のパブリッククラウドを併用するマルチクラウド環境においても、ワークロードやデータの分散/サイロ化、サイバー攻撃のアタックサーフェス拡大、相互運用性の問題とロックインなど、課題は山積している。

オンプレミス環境とパブリッククラウド環境の抱える課題、さらにマルチクラウド環境の抱える課題

 「(オンプレミスの)ITインフラに対する設備投資には限界がある。しかし、パブリッククラウドに移行するとしても、今挙げたような課題がある。顧客としては非常に難しい“妥協点”を探らなければならなくなっている」(ダン氏)

 そうした課題に対して最適解を持つのがAPEXだと、ダン氏は続ける。Dell APEXはマルチクラウド環境を前提とした(“マルチクラウド by design”)ソリューションであり、パブリッククラウドのメリットである柔軟な体験と同時に、オンプレミスのメリットであるコスト性、セキュリティ、パフォーマンス、ガバナンスなどを実現するからだと説明する。

 そうした(オンプレミスも含む)統合されたマルチクラウド体験を実現するために、Dell Technologiesでは「グラウンドトゥクラウド」と「クラウドトゥグラウンド」、すなわちオンプレミスからクラウドへ、クラウドからオンプレミスへという両方向のアプローチで、それぞれの課題を解消しメリットを生かす製品の開発に取り組んでいるという。

クラウドからオンプレミスへ、オンプレミスからクラウドへという2つのアプローチで、統合的なマルチクラウド体験を実現しようとしている

APEXのマルチクラウド体験を進化させる2つの開発プロジェクトを紹介

 APJシニア ディレクター 兼 プリセールス責任者 「Dell APEX」クラウド&コンテナ ソリューションのグレン・ハイアット氏は、APEXにおけるマルチクラウド体験を進化させるための新たなテクノロジー開発として、「Project Alpine」と「Project Frontier」を紹介した。

 今年1月に発表されたProject Alpineは、パブリッククラウド上でDellのエンタープライズストレージサービス(ブロック/ファイル/オブジェクト)を実現するSoftware-Defined Storageの開発プロジェクトだ。Dellのオンプレミスストレージ製品群との一貫した体験を実現するのと同時に、パブリッククラウドのネイティブサービスとの親和性も持たせる。

 オンプレミスのテクノロジーをパブリッククラウドに展開するこの“グラウンドトゥクラウド”の取り組みが必要な背景として、ハイアット氏は、パブリッククラウドにおける「データグラビティ」の課題を指摘した。

 「(データグラビティは)マルチクラウドのソリューションを現実に活用していくために、解決しなければならない大きな問題の1つだ」「パブリッククラウドはそれぞれ、あまり相互運用性を持たない。(Project Alpineによる)Software-Defined Storageで共通のストレージレイヤーを構成することにより、利用者はパブリッククラウド間でワークロードを自由に行き来させることができるようになる」(ハイアット氏)

Project Alpineの概要。現在すでに「PowerFlex in AWS」(早期アクセス版)が提供されている

 一方、今年10月に発表されたProject Frontierは、エッジコンピューティング環境の一元的な運用管理を行うオーケストレーションプラットフォームの開発プロジェクトである。

 IoTやAI/機械学習の活用が進むなかで、エッジコンピューティングへの注目が高まっている。しかし、エッジ環境にはそれ特有のさまざまな課題が残っていると、ダン氏は説明する。「多様なハードウェアと環境」「大規模な分散システム運用」「業界/用途ごとに特化したワークロード」「サイロ化」「現場でのIT専門家の不在」などだ。

 「このように大変な課題がたくさんあるなかで、どうしてまともな考えを持った企業がエッジコンピューティングに取り組みたいと思うでしょうか。われわれはここに新たなソリューションを提供することで、そうした考えをあらためていきたい」(ダン氏)

エッジ環境にはそれ特有の課題があると説明

 Project Frontierを通じて、ゼロタッチでのプロビジョニングとワークロードのインストール、一元的なセキュリティや運用を実現していくという。また、エッジ環境では業界別や目的別の多様なワークロードが必要とされることから、「SIerとのパートナーシップに重点を置いて展開していく。われわれが(Project Frontierで)オーケストレーターを提供し、SIパートナーにはワークロードの提供を担っていただく」と説明した。

 なお、現在のところProject FrontierはDell製エッジデバイスの運用管理をターゲットに開発が進められているが、将来的にはサードパーティ製デバイスにも対応していく方針だという。また、特定業界向けのソリューションを開発するISVとのパートナーシップについても拡大していく方針であり、すでに一部では開始していると語った。

Project Frontierが掲げる3つの目標

■関連サイト

カテゴリートップへ