1.5キロなので持ち歩ける17.3インチPCですね

ASUS 「Zenbook 17 Fold OLED」実機レビュー = 世界最大の2つ折りディスプレーが大迫力で超便利だった!

文●写真 ジャイアン鈴木 編集● ASCII

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 ASUS JAPANは折りたたみ型有機ELディスプレーを採用したWindowsタブレット「ASUS Zenbook 17 Fold OLED UX9702AA」を12月1日に発売を開始した。

 本製品は17.3型の折りたたみ可能な有機ELディスプレーを搭載。折りたたみWindowsタブレットとしてはレノボに先行を許したが、17.3型という大画面をひっさげて登場した魅惑のマシンだ。

 ASUSが同社初のフォルダブルタブレットをどのような製品に仕上げてきたのかじっくりとレビューしていこう。

「ASUS Zenbook 17 Fold OLED UX9702AA」64万9800円

Core i7-1250U+RAM16GB+SSD1TB
1モデルのみをラインナップ

 ASUS Zenbook 17 Fold OLEDに用意されているのは1モデルのみ。OSは「Windows 11 Home 64ビット」、CPUは「Core i7-1250U」(10コア[Pコア×2+Eコア×8]、12スレッド、最大4.70GHz)を採用。メモリーは16GB(LPDDR5-5200)、ストレージは1TB(PCIe Gen4 x4接続)を搭載している。

 ディスプレーは17.3型2.5K有機EL(2560×1920ドット、4:3、DCI-P3カバー率100%、リフレッシュレート60Hz、応答速度0.2ms)を採用。

 DisplayHDR 500 True Black、PANTONE、TÜV Rheinlandの各種認証を取得している。横持ちしたときの左側ベゼルには、491万画素赤外線(IR)カメラ、アレイマイクを内蔵。スピーカーは1W×4のクアッド構成だ。

 インターフェイスはThunderbolt 4×2、3.5mmコンボジャックのみを装備。ワイヤレス通信はWi-Fi 6(11ax)、Bluetooth 5.1をサポートしている。

 同梱品はACアダプター、Bluetoothキーボード、USB Type-C to Type-Aケーブル、専用スリーブ、製品マニュアル、製品保証書、Microsoft Office Home and Business 2021ライセンスカード。Bluetoothキーボードは80キーの英語配列だ。

サイズ/重量は、本体のみで378.5×287.6×13.3mm/約1.53kg、本体+キーボードで287.6×193.5×23.1~34.4mm/約1.83kg。設計容量75011mWh、フル充電容量75793mWhのバッテリーを内蔵しており、バッテリー駆動時間は約12時間と謳われている。

パッケージには本体、ACアダプター、USB Type-C to Type-Aケーブル、紙製補助スタンド、Bluetoothキーボード、専用スリーブ、説明書類(製品マニュアル、製品保証書、Microsoft Office Home and Business 2021ライセンスカードなど)が同梱

ディスプレーは17.3型2.5K有機EL(2560×1920ドット、4:3、DCI-P3カバー率100%、リフレッシュレート60Hz、応答速度0.2ms)を搭載

開いた状態での本体背面

閉じた状態での本体天面にはASUSのロゴが配されている

閉じた状態での本体底面にはゴム足がふたつ設けられている

Bluetoothキーボードを挟んだ状態での本体前面と本体背面。本体前面にはThunderbolt 4×1、ボリュームボタン、1W×4構成のクアッドスピーカーが配置されている

Bluetoothキーボードを挟んだ状態での本体右側面と本体左側面。右側面には電源ボタン、電源インジケーター、3.5mmコンボジャック×1、Thunderbolt×1が用意されている

本体のみの右側面。ヒンジは専用に開発されており3万回以上の開閉テストに合格している

Bluetoothキーボードの表面。80キーの英語配列仕様。2台のデバイスを切り替えて利用できる。厚みは5.8mm

Bluetoothキーボードの裏面。ASUS Zenbook 17 Fold OLEDのベゼル部に安定して装着できるようにゴム足が設けられている

ACアダプターの型番は「AD2129320」。仕様は入力5V 3A、9V 3A、15V 3A、20V 3.25A、容量65W。実測重量は221g

ASUS Zenbook 17 Fold OLED本体の実測重量は1521g

Bluetoothキーボードの実測重量は309g

2つに折るか折らないか!?
目的に応じて6つのスタイルで活用できる

 ASUS Zenbook 17 Fold OLED最大の売りは折りたたみ可能な17.3型2.5K有機ELディスプレー。このディスプレーの構造を生かし、

・ソフトウェアキーボードを表示した「ノートPCモード①」
・Bluetoothキーボードをディスプレー片面に置いた「ノートPCモード②」
・横置きした本体の前にBluetoothキーボードを置いた「デスクトップPCモード」
・単体で利用する「タブレットモード」
・雑誌のようなスタイルで読める「リーダーモード」
・折り曲げた本体の前にBluetoothキーボードを置いた「拡張モード」

の6つのスタイルを選択できる。

 スペースの狭い場所ではノートPCモード、横置きの最大画面サイズで作業したいならデスクトップPCモード、書類作成やブラウジングなどで前後の見通しを重視したいときは拡張モードと、さまざまなスタイルで利用できるのは非常に便利だ。

 本体とBluetoothキーボードを合わせると実測1830gとなるが、1台で複数の用途をカバーできるのだから、それを考慮して評価するべきだろう。

ディスプレーの折りたたみ部は消灯すると折り目が見えるが、点灯すればまったく気にならない

ソフトウェアキーボードを表示した「ノートPCモード①」

Bluetoothキーボードを乗せた「ノートPCモード②」

本体を横置きにして手前にBluetoothキーボードを置く「デスクトップPCモード」

本体背面にはキックスタンドが設けられている

キックスタンドは最大60度まで展開可能。角度は無段階で調整できるが、あまり起こしてしまうとうしろに倒れてしまいそうでちょっと怖い

本体のみで利用する「タブレットモード」

電子書籍などを読むための「リーダーモード」 ※鈴木みそ氏「ナナのリテラシー1」より

適度に折り曲げた本体の前にBluetoothキーボードを置いた「拡張モード」。個人的にはこのモードが一番未来的、かつ実用的で気に入った

本製品のパッケージと同梱の紙製補助スタンドを利用すると、ディスプレーを縦置きにして利用できる

 ASUS Zenbook 17 Fold OLEDは単に折り畳み可能な大画面ディスプレーを搭載しただけでなく、アプリウインドーを再配置・管理する「App Navigator」、ウインドーを1/2/3画面表示する「Landscape Mode」、ウインドーを任意の位置に配置可能な「アプリスイッチャー」などの独自ソフトウェア機能が用意されている。

 特に便利なのがアプリスイッチャーで、タイトルバーをつかんで少しずらすと4分割、横2分割、縦2分割の任意の位置にウインドーを素早く配置可能だ。

 Windows 11自体にも「ウィンドウスナップ」という機能が用意されているが、両方を使い比べてみて気に入ったほうを利用するといいだろう。個人的にはアプリスイッチャーのほうが素早く選択画面が表示されるので、使いやすいと感じた。

下の画面の右端に表示されているのが「ScreenXpert」アイコン

「ScreenXpert」アイコンをタップすると、アプリウインドーを再配置・管理する「App Navigator」、マイクのオンオフ、ウインドーを1/2/3画面表示する「Landscape Mode」、「設定」にアクセスできる

ASUSの2画面ノートPC「Duo」シリーズ譲りの「アプリスイッチャー」も実装されている

 80キー英語配列のBluetoothキーボードは、キーピッチが実測19mm、キーストロークが1.4mm。厚みが5.8mmと非常に薄いにもかかわらず、心地よい打鍵感を実現している。

 ASUS Zenbook 17 Fold OLEDのディスプレー面に乗せると磁力で固定されるので、大きくずれてしまうこともない。タイピング時にわずかにぶれることはあるが、実用上問題はないと思う。バックライト非搭載がちょっと残念だが、軽量化と省電力化に配慮した仕様なのだろう。

キーピッチは実測19mm

キーストロークは1.4mm

 17.3型2.5K有機ELディスプレーはDCI-P3カバー率100%の色域と謳われている。カラーキャリブレーション機器「1iDisplay Pro」と色度図作成ソフト「ColorAC」で実測したところ、sRGBカバー率は100.0%、sRGB比は158.2%、AobeRGBカバー率は99.2%、AdobeRGB比は117.3%、DCI-P3カバー率は100.0%、DCI-P3比は116.7%という値が出た。

 DCI-P3だけでなくAdobeRGBでも広い色域をカバーしているわけだ。動画のカラーグレーディングだけでなく、AdobeRGBの色空間の写真を現像するのにも利用できるスペックを備えている。

有機ELディスプレーを採用しているだけに階調豊かに画像、映像を表示できる

実測したsRGBカバー率は100.0%、sRGB比は158.2%。AobeRGBカバー率は99.2%、AdobeRGB比は117.3%。DCI-P3カバー率は100.0%、DCI-P3比は116.7%

 本製品には横置きした際の左側、縦置きした際の上側に491万画素赤外線(IR)カメラを内蔵している。RGBカメラとIRカメラが搭載されており、室内灯下でも明るく、自然な発色で撮影が可能だ。

 またノイズも非常に少ない。RGBとIRを統合したハイブリッドカメラはコストの面では有利だが、画質はやや厳しい。今後、この独立式が主流になることを強く望みたい。

ベゼル部には491万画素赤外線(IR)カメラ、アレイマイクを内蔵

Windows 11の「カメラ」アプリで撮影(HDRオフ)。「HDR pro」を有効にしなくても、室内灯下で明るく、自然な発色で撮影可能だ

第12世代Coreシリーズのおかげで
「Core i7-1165G7」搭載機比1.4倍の性能を発揮

 最後にパフォーマンスをチェックしよう。まずCPU性能については、「CINEBENCH R23」で8123pts、「CINEBENCH R20」で3078ptsとなった。

 「Core i7-1165G7」(4コア、8スレッド、最大4.70GHz)を搭載する「ExpertBook B9」がR23で5622、R20で2163だったので、ASUS Zenbook 17 Fold OLEDはその約1.44倍、約1.42倍のスコアを記録したことになる。

HWiNFO64 Proで取得したシステムの概要。ストレージは「SAMSUNG MZVL21T0HCLR-00B00」が搭載されている

「CINEBENCH R23」のCPU(Multi Core)は8123pts、CPU(Single Core)は1632pts、「CINEBENCH R20」のCPU(Multi Core)は3078pts、CPU(Single Core)は620pts

「CINEBENCH R23」実行中のCPU温度は平均89.89℃、最大95℃、クロック周波数は平均2457.84MHz、最大2832.4MHz

「CINEBENCH R23」実行中の消費電力は最大45.93W、平均36.78W。アイドル時の消費電力は平均9.21W

 3Dグラフィック性能は、「3DMark」のTime Spyで1448、Fire Strikeで3685、Wild Lifeで9001となった。

 ExpertBook B9はTime Spyで1854、Fire Strikeで5236、Wild Lifeで13509だったので、ASUS Zenbook 17 Fold OLEDはその約80%、約70%、約67%のスコアを記録したことになる。

 内蔵グラフィックスは同じIntel Iris Xe Graphicsだが、クロック周波数の差が結果として表われたようだ。とは言え「ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレ」と同等の3Dゲームであれば実用的な速度でプレイ可能だ。

「3DMark」のTime Spyは1448、Fire Strikeは3685、Wild Lifeは9001、「ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレ ベンチマーク」(1920×1080ドット、標準品質、ノートPC)のスコアは5666(普通)

 ストレージベンチマーク「CrystalDiskMark 8.0.4」では、シーケンシャルリードは6954MB/s、シーケンシャルライトは5241MB/sとなった。

 ASUS Zenbook 17 Fold OLEDはPCIe Gen4 x4接続のSSD「SAMSUNG MZVL21T0HCLR-00B00」を搭載している。SSDのカタログスペックどおりのリード、ライト性能を引き出せているわけだ。

「CrystalDiskMark 8.0.4」のシーケンシャルリード(SEQ1M Q8T1)は6954MB/s、シーケンシャルライト(SEQ1M Q8T1)は5241MB/s

 バッテリー駆動時間については、ディスプレー輝度40%、ボリューム40%でバッテリー残量2%までという条件でYouTube動画をWi-Fi環境で連続再生したところ、7時間27分動作した。

 17.3型という大きな有機ELディスプレーを搭載しているタブレットとしては、実用上十分なバッテリー駆動時間である。

現時点で最も巨大
17.3型フォルダブルディスプレーに物欲をそそられる

 ASUS Zenbook 17 Fold OLEDはASUSのフォルダブルデバイス1号機なのにもかかわらず、ハードウェアはこなれた作りで、大画面を生かす独自ソフトウェア機能も搭載されている。

 1号機でこれだけの完成度を実現したのは、デュアルディスプレー搭載ノートPCを数多く開発してきたASUSの強みだ。スペックで残念だったのがデジタイザーペンに対応していないこと。次期モデルではぜひサポートしてほしい。

 64万9800円という価格はたしかに高価だ。しかし、現時点で最も巨大な17.3型フォルダブルディスプレーをコンパクトに持ち運べることを考えれば、物欲をそそられずにはいられない1台なのである。

 

過去記事アーカイブ

2024年
01月
02月
03月
04月
2023年
01月
02月
03月
04月
05月
06月
08月
09月
10月
12月
2022年
01月
02月
03月
04月
05月
06月
07月
08月
09月
10月
11月
12月
2021年
01月
02月
03月
04月
05月
06月
07月
08月
09月
10月
11月
12月
2020年
01月
02月
03月
04月
05月
06月
07月
08月
09月
10月
11月
12月
2019年
05月
06月
07月
08月
09月
10月
11月
12月