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私たちのバイクはどうなる? イタリアの「EICMA」で見た日本メーカーの最新電動バイクたち

2022年11月27日 15時00分更新

文● 岸本ヨシヒロ 編集●ASCII

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僕たち私たちのモビリティの未来はどうなる?

 当記事ではイタリアで行なわれたバイクイベント「EICMA」をレポートしますが、その前にバイクを取り巻くEV化の現状を説明させてください。

 読者の皆さんも「カーボンニュートラル」という言葉を、最近よく聞くようになったと思います。人口爆発に工場やモビリティの増加、CO2やメタン、フロンガスなどの排出ガスの影響、森林減少などたくさんの原因があるのですが、簡単に言うと増えた温室効果ガスが原因で地球が温暖化することで、異常気象や海面の上昇など深刻な状況を引き起こすということがわかってきたので、ガス排出量から吸収量と除去量を差し引いて合計をゼロにし、ニュートラル=中立にして人間が自然界に及ぼす影響を少なくしようぜ! ということです。

 ここ近年の世界共通の取り決めになってきて、多くガスを出す主要先進国が特に努力義務が課せられています。2020年には日本も首相が「2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指す」と宣言しています。

環境省HPより(https://ondankataisaku.env.go.jp/carbon_neutral/about/)

 モビリティの世界もこの実現に向けて、世界的に排出ガスを出さずに走ることができるEV化が進んでいて、製造工程やリサイクルでも技術が進んできています。バイクの世界も例外ではありません。EV化は自動車だけではないのです。

 ホンダは2025年までに10モデル以上の電動バイクをグローバル展開することを発表。ヤマハは2050年までに約90%の電動化、KAWASAKIは2035年までに主要モデルを電動化、スズキも今のところ具体的には何年までと発表していませんが、新しい電動バイクを開発しているとのことです。

 また電動化のネックになっている航続距離の問題も、日本の4メーカーとENEOSが共同でGachaco(ガチャコ、バッテリーシェアリングの会社)を設立し、この分野で先行する台湾を追いかけ、日本独自のバッテリーシェアリングサービスをスタートさせたところです。

Honda Power Pack Exchanger e:

 前振りが長くなってしまいましたが、その最新の潮流が垣間見れる最前線が、イタリアで開催された「EICMA」というバイクのイベントです! 僕たち私たちが乗るバイクが、EV化によりつまらない乗り物になるのでは?と危惧する方もいますが、本当でしょうか? その疑問の答えを探すべく、往路14時間、帰路12時間もかかるイタリアの最前線へ取材に行ってきました。盛りだくさんの内容なので、複数回に分けてレポートします!

いざ、世界最大のバイク見本市へ!

 EICMAとは「Esposizione internazionale del ciclo, motociclo」の略称で、訳すと「モーターサイクル国際見本市」です。イタリアのミラノで1914年から開催されている世界で一番大きいバイクの見本市で、既存のモデルはもちろん、新車の発表やコンセプトモデル、次年度のデザインや仕様などバイクのトレンドを占う重要なショーです。また、まだ見ぬパーツを探したりBtoBのビジネス、パーツや用品やアパレルなどの買い付け等、ビジネスショーとしての側面もあります。バイク版のモーターショーだと思ってください。

今年のEICMAの会場「Fiera Milano」は20の展示ホールを持つ巨大施設です(幕張メッセは11ホール)

2022年は6ホールでEICMAが開催されましたた。年によって使うホールの増減があるようです。会場が大きすぎで1日で回りきれず、めちゃくちゃ疲れます

 今回は、私が代表の電動バイクチーム「TEAM MIRAI」で電動バイクを製作しマン島やアメリカなど、レースで世界を転戦した経験を活かし、私・岸本ヨシヒロことキッシーがイベントで見つけた面白い電動バイクを独自の切り口で紹介・分析したいと思います!

 今年はコロナ禍が明け切れてないにもかかわらず、世界45ヵ国・1370の有力ブランドが出展しました。また電動バイクの出展も多く、各社からいろいろな電動バイクが発表され、前述のカーボンニュートラルでまさにバイクの変革期、「電動元年」といってもいいくらい当たり年でした。ここに行けば世界的なバイクのトレンドがわかるのです。

 まずは日本でも知られている有名メーカーから見ていきましょう!

個人利用向けのEVスクーター
HONDA EM1 e:

 日本ではすでに業務用電動バイクをリース販売しているHONDAですが、ヨーロッパの個人向けにいよいよ電動バイクを発売します。

 最高速度45km/h、1回の充電で航続距離40km以上という発表で、 価格やそれ以上の詳細なスペックは未発表でしたが近いうちに発表されると思います。

 最高速度が45km/hなのは、AM免許(対象:16歳以上、45km/h以下のバイク)というヨーロッパの法律基準に合わせた最高速に設定してるためです。現状はヨーロッパや中国向けですね。また、EM1 e:は中国のグループ会社・五羊本田が発売している「U-GO」(公式サイト)をベースにしているように見えますが、バッテリーは「Honda Mobile Power Pack e:」を搭載します。

 このバッテリーパックは重量約10kgで、YouTubeの広告からも個人が自宅でバッテリーを充電することを想定しているようです。

 同時にバッテリー交換ステーションの展示がなかったことからも、ヨーロッパでバッテリーシェアリングステーションの仕様や整備に時間がかかっているとも言えます。バッテリーパックが1個だと航続距離が短いので、メットインスペースを使用して2個乗せることも将来的に考えているでしょう。

 ちなみにバッテリーシェアリングステーションに関してはEICMAの会場で展示ブースが多く、航続距離の課題を解決するために2輪メーカー含め、いろいろな会社が参入しています。

カラーバリエーションはパールサンビームホワイトのほかに、デジタルシルバーメタリック、マットブラックメタリックの合計3色が用意されていました

EM1 e:は展示の中でもかなり目立つ位置にあり3色を展開していました

会場でもEM1 e:の広告が出ていました

2人乗り用のタンデムステップ。日本では原付にあたるクラスですが、2人乗りもできるようです

インホイールモーターは思ったよりもコスト重視な感じ。今回はヨーロッパの規格に合わせていましたが、中国では定格1.2kWのモデルもあるので、日本向けの展開も期待したいですね!

ヨーロッパでのベストセラーが電動化
YAMAHA「NEO'S(ネオス)」

 ヨーロッパで3月に発売された電動スクーターで、現地ではAM免許で乗れる最高速度が45km/hまでの区分になります。

 EICMAで配られたパンフレットを見ると、ヤマハの中ではNEO'SはUrban Mobility(都市移動)のカテゴリーに入っています。実際、イタリアをレンタカーで走たのですが、街中はけっこう渋滞がひどく、立ち乗りのキックボードや自転車、バイクが縦横無尽に走り回っていました。これは実用的な面でも電動バイクにメリットはありそうです。

 製造はベトナムで東南アジアでの発売も予定しているとのこと。販売計画はヨーロッパで1万台、価格は3099ユーロ(約45万円)からということで、これに納車整備費用や各国での税金がかかります。

 日本ではあまり知られていませんが、ヤマハがヨーロッパで展開しているエンジンスクーター「Neo's 4」が発売されており(欧州での超ベストセラー原付)、デザインが非常に似ているのですが、このNEO'Sはより近未未来的にデザインされた電動スクーターです。デザインは同じ2灯でリアのシェイプも似ていることから、むしろNeo's 4がNEO'Sをオマージュしているのかな? と思ったら、リリースにも「デザインを引き継ぎ、凛としたシンプルさや飾り気のない余白感を演出」とあったので、その通りだったようです。

 フレームはアンダーボーンの新設計を、デリバリー業務もこなせる強度を持たせたとのこと。タイヤサイズは13インチに引き上げられていますが、これはヨーロッパの石畳が多い路面や東南アジアの荒れた路面など、地域特性に合わせたものでしょう。

 ちなみにリアタイヤは、リム分割構造でタイヤ交換がしやすいとのこと。正直、助かります~! 電動スクーターでタイヤ交換のネックは配線の取り外しで、何気に時間もかかりますし、気もつかいます。ショップも余分な時間工賃を請求しにくいし、そして何より面倒臭い(笑)。整備性を上げてくれたのは長年電動スクーターを販売しているヤマハならではの、現場からのフィードバックがあったからだ思います。

筆者もまたがってみました

 バッテリーの展示はなかったのですが、シート下の1本8kgのバッテリーは取り外し可能で、2本まで搭載できます。1本目のバッテリーが少なくなると、自動的に2本目のバッテリーへ切り替わる方式です。

 インホイールモーターは同社の電動スクーター「Passol」や「EC-03」にも採用されたものを熟成させYIPUⅡに進化。EC-03は自分も所有していますが、アクセレーションがよくて制御の味付けが良いので、乗りやすいです。ただ、回生ブレーキがなかったので、アクセルを戻した時にエンジンバイクと比べると違和感があったため、YIPUⅡに進化してどう変わったのか興味があります。日本仕様の発売も期待しましょう。

NEO'S(ネオス)主な諸元

最高速度:45km/h
車両重量:98kg(バッテリー重量1本8kg、2本まで搭載可能)
定格出力: 2.3kW
最大出力:2.5kW
電圧:50.4V/19.2Ah
充電時間:8時間
タイヤサイズ:13インチ
キーレス仕様
フロントディスク・リアドラムブレーキ
ABS、CBSはなし

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