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武闘派CIO×サイボウズ社長のDX対談

DX人材は採れると思うな。社内の総力戦で勝つための二つのポイント

2022年11月29日 09時00分更新

文● 指田昌夫 編集●MOVIEW 清水

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 サイボウズは「kintone IT Special Seminar 2022――成功企業に学ぶDXの本質と勘所」と題したオンラインセミナーを開催した。そのオープニングセッションは「“変わる”の思いを進化につなげる! DX推進の勘所」と題して、喜多羅株式会社の喜多羅滋夫氏が、サイボウズ代表取締役社長の青野慶久氏と対談。日本企業がDXを成功させるための課題と解決策について語り合った。

日本企業のグローバル化に対する誤解

 喜多羅氏は、P&G、フィリップモリスといった外資系企業で事業変革や多国籍間のIT運営に従事した後、2013年から2021年まで、日清食品のグループCIOとして同社のDXを牽引。現在は独立し、ラックの執行役員CIO、ダイドーホールディングスのIT統括責任者を務める。自ら「武闘派」と名乗る、デジタル改革の第一人者である。以下本稿では、喜多羅氏と青野氏の議論を対談形式でお届けする(以下、敬称略)。

青野:日本企業にもDXという言葉は浸透してきました。しかし、うまくいっていないところが多いようです。なぜでしょうか。

喜多羅:いわゆるグローバル企業は、つねにグローバルで収益を最大化するための戦略を考えています。私が過去に在籍したP&Gは、米国企業らしく経営者が決めた方針に全社がびしっと従う企業でした。また、P&M(フィリップモリス)は少し違って、欧州の文化も取り入れ、ある程度個々の違いを尊重しながら最適化していく進め方でした。いずれにしてもグローバルで一つの形を作る方向性です。

喜多羅滋夫氏

それに対して、日本企業が行なってきたグローバル化は、各国が独立採算で、それぞれがいいように進めていました。それを本社のグローバル部門が全体を緩く見ています。このアプローチの違いを強く感じます。

青野:その結果はITにも表れます。外国企業は、システムが決まれば、一斉に切り替わりますね。

喜多羅:はい。それを使え、で終わり。議論をしている時間がもったいないという考えです。とりあえずグローバルのテンプレートで始めて、埋められないところは検討する。そういうシンプルさはありました。

一方、日本企業は各国の事業が独立採算で、局所ごとで改善に注力してしまいます。例えばワークプレイスのツールでも、ある地域ではマイクロソフトで固めていて、別のところではガルーンを使っている。さて、グローバルで会議を開こうというとき、何のツールを使うか、から始めなければいけません。このスピード感の違いは大きいと思います。

トップが「デジタルわからない」と言ったらおしまい

青野:とはいえ、DXは日本企業にもずいぶん広がって、多くの企業がやらなきゃと変わってきた気がしています。

喜多羅:DXという言葉自体は、メディアやイベントでよく使われるようになりました。しかし、意味を理解しているかについては疑問です。

たとえばある企業で「RPAで数千時間削減した」というニュースが出ると、他の会社の社長が情シスに電話をかけて、「うちのRPAはどうなっている」と言って、後を追わせます。しかし、何のためにRPAを使うのか、プロセスを整流化するのかを考える前に、まずRPAで、できることをやろうということで、ゴールが設定されていないままPoCを始めてしまうことになります。

その結果、部分的には成果が出てきますが、そもそも、「そこはDXを目指していたところ?」という問いには明確に答えられません。ゴールセッティングができていないことが問題だと思います。

青野:大局的なところからゴールを設定できるリーダーが必要ですね。

喜多羅:そうです。私が政府のDXレポートを策定するメンバーだったときも、経営者のコミットの必要性について議論しました。やはり組織の方向性を示すのはトップで、トップの指示が曖昧では、その下がどれだけがんばってもうまくいきません。

青野:ですが、日本企業のトップで、デジタルを語れる人は少ないと思います。

喜多羅:そうですね。「私、ITは苦手だから」と平気で言ってしまう。たとえば社長が、「私、財務諸表が読めない」と言ったら、ええっ!?となります。それなのに、ITがわからない、スマホが使えないと平気で言えるのはなぜなのか。そういうリーダーがDXに取り組んでも、トップのメッセージはどれだけ伝わるのか。極めて疑問です。

青野:企業の情シスからも、経営者の理解度が低いという話を聞きます。情シスは、これをどう乗り越えていくべきでしょうか。

喜多羅:外部に対する顧客満足と同じように考えればいいと思います。社長を顧客と見立て、社長の関心事にITがどう貢献できるかを説明して、理解を得ることです。

ただ、これまでの情シス部門は、コストダウンと効率化だけを求められ、それに応えてきました。上司や経営者を説得するというスキルは必要ではありませんでした。これからは数字だけでなく、その改善によって経営にどれだけインパクトがあるのかを語れるようにならなければいけません。

うまく伝えるコツは、「相手にわかる言葉」で話すことです。このスキルは繰り返し練習すれば、必ず身に着きます。会社として変わるためには、社員1人1人が変わっていかなければいけないと思います。

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