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次の10年にあるべきデータ管理を再定義、自動化の先にある「自律化」を目指す

ベリタスが「NetBackup 10」で掲げる“Autonomous Data Management”とは

2022年10月04日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 ベリタステクノロジーズが今年リリースした統合データ保護製品の最新版「NetBackup 10」では、新たに「Autonomous Data Management(ADM)」というビジョンが掲げられている。これは自動化の先にある“自律化”を実現し、複雑化するデータ保護環境における人手での運用管理や最適化の作業を削減していくというものだ。

 米ベリタステクノロジーズ SVP International Salesのマーク・ナット氏は、Autonomous Data Managementは「ベリタスが次の10年に向けてデータ管理を再定義したもの」だと説明する。そのメリットやベリタスの現在位置などについて聞いた。

ベリタスの掲げる「Autonomous Data Management」の概要。自動化と高度なAIを融合させることで、自律的な適応やレジリエンス向上、サイバー脅威防御などに役立てる

米ベリタステクノロジーズ SVP International Salesのマーク・ナット(Mark Nutt)氏。EMEA(欧州、中東、アフリカ)とAPAC(アジア太平洋地域)、そして日本のセールスを統括する

自動化の先にある“自律化”を目指して

 ナット氏はまず、現在のベリタスが注力する5つの戦略を紹介した。Autonomous Data Managementはそのうちの1つであり「非常に力を入れている」(ナット氏)領域だ。ほかにもサイバー攻撃被害に対するレジリエンシー(回復性)、マルチクラウドへの対応、サブスクリプションやas-a-Serviceといった新しい製品提供モデル、パートナービジネスを通じた成功といった戦略が並ぶ。

現在のベリタスが注力する5つの戦略

 もちろんこうした戦略は、エンタープライズを中心とした同社の顧客ニーズの変化に基づくものだ。また個々の戦略において、エンタープライズ顧客が高度な水準の技術やソリューションを必要としているのも特徴である。

 たとえばサイバーレジリエンシーの能力は、被害が拡大し続けているランサムウェア攻撃への備えとして強く求められている。「顧客企業はより高度なセキュリティ、たとえばイミュータビリティ(書き換え不能環境)やエアギャップ(隔離環境)を実現するソリューションを探している」(ナット氏)。

 マルチクラウドにおいても、単に幅広いクラウド環境に対応するというだけでなく、ワークロードやデータのプロビジョニングの見直し、クラウドを管理する人材の人件費の問題、デジタルコンプライアンスの問題など、高度な問題への対応を支援できるようなソリューションが求められているという。

 ナット氏は、現在の顧客が求めるより高度な問題解決においては「自動化が鍵となる」と語る。ただし、それは「単なる自動化を超えた自動化」でなければならないとも強調する。稼働している環境に応じて学習をし、進化する「自律化」が必要なのだ。

 「複雑化した環境では、単にデータの管理と保護の手段があるというだけではだめで、これを自動化していくことをあわせて考える必要がある。しかもその(自動化された)データの管理は、表には見えないようなかたち、裏で自律的に実行されるようなかたちで実行されている必要がある。人の介在をなくしたほうがよい部分では積極的に自律化を進める、そういう姿勢が重要だと考えている」

 ただしエンタープライズ領域では、高度な知識と経験に基づいて人間の専門家が行ってきたデータ管理を自律的に処理できなければならず、自律化には高度なレベルが求められる。「お客様の何十年にも及ぶ管理経験に匹敵する理解をもって望まなければならないということだ」とナット氏は強調する。

自動化と自律化(自律的)の違い。自動化はあくまでも人間が設定したパラメータに応じて判断するもののため、やはり人が介在する必要が生じる

 自律化により生まれるメリットとは何か。ナット氏はシステムが継続的に学習することによって、環境変化に即応し、常に最適化や修正が図られるデータ管理環境が実現することに加えて、ビジネスレジリエンスの向上、運用の効率化、サイバー脅威に対する積極的な防御、さらにシステム稼働の最適化による二酸化炭素排出量の削減といったメリットがあると説明する。

次の10年に向けてデータ管理を再定義、すでにその一歩を踏み出す

 このように、ベリタスが次の10年に向けてデータ管理を再定義したものがAutonomous Data Managementである。

 AI/機械学習によるさまざまな機能の自律化については、他の競合ベンダーも同様のビジョンを掲げているのが実情だが、ナット氏は「ベリタスにとっては将来的な話というわけではなく、すでにその道のりに一歩踏み出している」ことが強みだと語る。つまり、NetBackup 10ではそうした自律化の一部がすでに組み込まれ、使えるようになっているという意味だ。

 「自律化を通じて、たとえばマルチクラウド環境への最適化、サイバーレジリエンスの自動化、運用の自動化といったものを実現する。たとえばサイバーレジリエンスにおいては、アノマリーディテクション(異常検知)やマルウェアスキャンなどをアーキテクチャに組み込んだかたちで、自動化して提供している。またデータ管理の運用においては、オートプロビジョニングやオートヒーリングといった自律化を実現している」

 たとえばこのオートプロビジョニングでは、顧客が新たに稼働させたワークロードをNetBackupが検知し、すでに稼働しているワークロードと比較したうえで、新しいワークロードと共通点の多いワークロードと同じデータ保護ポリシーを自律的に判断、適用できるという。まさに「人間を介在させずに」判断し、実行するわけだ。

ナット氏は「現在のところ“真の自律型ソリューション”を提供しているのはベリタスをおいてほかにはないと言ってよいだろう」と語った

 ナット氏は、このAutonomous Data ManagementにおいてNetBackupが他社を先行しているのは、過去のバージョンから取り組みを積み重ねてきたからだと説明する。NetBackup 8.3ではAPIに対応、NetBackup 9.0ではコンテナベースのアーキテクチャを採用し、さらにNetBackupではパブリッククラウドへの弾力的な展開を進めた。そうした先史があってこそ、NetBackup 10でAutonomous Data Managementの道のりに一歩踏み出すことができたという。

 「現在、ベリタスは大きな変化のときを迎えている。NetBackupの次のリリース(バージョン)では、このAutonomous Data Managementのさらなる機能強化が期待できる。わたし自身も楽しみだ」

Autonomous Data Managementを実現できた背景には、これまでのNetBackupが積み重ねてきたアーキテクチャの強化があるという

 最後にナット氏は、市場のリーダーとしてのベリタスの役割について、あらためて強調した。

 「ベリタスは市場のニーズに後追いで答えていくのではなく、市場のニーズを再定義して『市場のニーズを作っていく』、そういう立場にある企業だと考えている」

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