9月30日より、Ryzen 7000シリーズの店頭発売が開始された。いきなりAMDマニアの林先生がTSUKUMOeX.の店頭に並んでいてさすがと思った、という話は置いておいて……。
すでにKTU氏による性能ベンチマークが公開されているので、その性能と消費電力の評価結果は記事をお読みいただければと思う。大雑把にまとめると、「性能も上がったが消費電力も上がった」というあたりである。
消費電力の方は、1つにはチップセット(X670Eの場合、2チップ構成になっている)が理由でもあるが、基本的には5nmプロセスを省電力化に振るのではなく、動作周波数向上の方に振ったのが最大の要因であろう。
一方の性能の方だが、これが以前説明したよりも、もう少し踏み込んだ情報が説明されたので、このあたりを今回説明しよう。まずZen~Zen 4の変遷をまとめたのが下の画像だ。
Zen 4では13%のIPC向上、と説明されているが、その内訳はこれまで明らかにされてこなかった。さてその内訳であるが、Zen 4のマイクロアーキテクチャーが下の画像だ。
ちなみにZen 3のマイクロアーキテクチャーが下の画像である。見比べてみると、実は実行ユニットの数などはまったく同じで、デコード段は4命令/cycleの速度でx86命令を解釈するのも、Dispatch Unitからは最大6命令/サイクルで発行されるのも同じである。
スケジューラーの入り方もZen 3とZen 4はまったく同じである。ただ実はここにも少し書いてあるが、Op CacheからMicro-op Queueへの帯域が、Zen 3の8 MacroOps/サイクルからZen 4では9 MacroOps/サイクルに増強されている。
要するに8 MacroOps/サイクルの命令供給では、依存関係を解消しての6命令同時発行を十分に生かし切れておらず、この効率向上を目的としたものと考えられる。
もう少し細かく見てみよう。まずフロントエンドだが、基本的な構成は変わらないものの以下のような変更点がある。
- Op Cacheが4K Opsから6.75K Opsと大幅に増量され、かつOp CacheからMicro-op Queueへの帯域が8 Ops/cycle→9 Ops/cycleに拡大された。
- 分岐予測に利用するBTB(Branch Target Buffer)が、L1が2×1K Entry→2×1.5K Entryに、L2が2×6.5K Entry→2×7K Entryにそれぞれ大型化された。
BTBが2×なのは、Zenでは同時に2スレッドを実行できるから、それぞれのスレッド用に別々のBTBが用意されるためである。BTBに限らずキャッシュ類は一般に、大型化するとそれだけHit率が上がる(=BTBなら正しく飛び先を認識しやすい)一方で、大型化の弊害としてレイテンシーが増えやすい(大きくなると、それだけテーブルを全件検索するのに時間がかかる)という弊害もあるが、おそらくこの程度では目立って遅くはならないだろう。
ただBTBも構造的にはキャッシュやRegister Fileと同じくSRAMで構成されるから、大型化するとそれだけエリアサイズを喰ってしまう。このあたりはZen 3→Zen 4でプロセスを微細化したことで、多少ゆとりができたことで実現したと考えられる。といったあたりだ。ちなみに“Predict 2 taken branches per cycle”そのものはZen 3の時点ですでに実現されている。
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