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阪大など、脳内のオキシトシンを高感度に検出できる蛍光センサー

2022年09月30日 05時59分更新

文● MIT Technology Review Japan

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大阪大学、金沢大学の研究グループは、神経ペプチド「オキシトシン」を脳内で検出可能にする蛍光センサーを開発した。オキシトシンは「幸せホルモン」とも呼ばれる神経ペプチドであり、分泌量に異常をきたすとさまざまな精神疾患の発症に関係するとされる。これまで、生きている動物の脳内でオキシトシンを感度良く捉えることは困難であり、オキシトシンが脳内でどのように働いているのかははっきりしていなかった。

大阪大学、金沢大学の研究グループは、神経ペプチド「オキシトシン」を脳内で検出可能にする蛍光センサーを開発した。オキシトシンは「幸せホルモン」とも呼ばれる神経ペプチドであり、分泌量に異常をきたすとさまざまな精神疾患の発症に関係するとされる。これまで、生きている動物の脳内でオキシトシンを感度良く捉えることは困難であり、オキシトシンが脳内でどのように働いているのかははっきりしていなかった。 研究グループはまず、細胞外でオキシトシンが結合することで、明るさが大きく変化する蛍光センサーを開発した。これには、オキシトシンと結合する細胞膜タンパク質であるオキシトシン受容体と、緑色蛍光タンパク質で構成するキメラタンパク質を使用した。キメラタンパク質センサーに変異を加えていき、最終的にオキシトシンの最大8倍もの蛍光強度変化を示すセンサーを完成させた。 次に、完成したセンサーをマウスの脳に注入し、さまざまな条件で脳内オキシトシン濃度を計測した。その結果、薬物投与や光刺激などの人為的な刺激で脳内オキシトシン濃度が上昇するだけでなく、外界からの多様な刺激に応答した内因性のオキシトシン濃度変化も観測できたという。刺激の種類によって、秒単位、分単位、時間単位と時間間隔が異なるオキシトシン濃度変化が脳内で起こっているという、これまでの予想を覆す結果が見えてきたとしている。 研究成果は9月23日、ネイチャー・メソッズ(Nature Methods)誌に掲載された。オキシトシンは自閉スペクトラム症や統合失調症などの難治性疾患の治療の鍵となる物質と考えられている。今回開発した手法を活用することで、難治性疾患の病因解明や治療薬開発が進むことが期待できるという。

(笹田)

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