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企業のデジタルビジネス、DX推進にオブザーバビリティが欠かせない理由

「オブザーバビリティ」とは? モニタリングとの違いは? ソーラーウインズに聞いた

2022年09月26日 09時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

提供: ソーラーウインズ

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 ITシステムの運用監視において、近年「オブザーバビリティ(observability)」という言葉に注目が集まっている。ただし、率直に言ってわかりづらいコンセプトだ。「可観測性」と訳されることもあるが、訳語にするとさらにわからなくなる。

 そもそもオブザーバビリティとは何なのか、これまでのモニタリング(IT監視)とどう違うのか、そのメリットは何なのか――。20年以上にわたってIT監視/管理製品を提供し、現在は「SolarWinds Hybrid Cloud Observability」という新たなオブザーバビリティソリューションも展開するソーラーウインズのHead Geek、サシャ・ギース氏に詳しく聞いてみた。

米ソーラーウインズ Head Geekのサシャ・ギース(Sascha Giese)氏

「オブザーバビリティ」とは? モニタリングとの違いは?

 オブザーバビリティの辞書的な定義を調べると「システムからの出力を調べることで、内部の状態を推測できること」と説明されている。つまり、システム外部からの観測を通じて、システムの稼働状態などを知ることができるという意味だ。

 これまでのモニタリングにおいても、システムが出力するさまざまな計測データから稼働状態を推測することは行われてきた。ただし、モニタリングを行う監視ツールは監視対象ごと(ネットワーク、システム、データベース、セキュリティ、アプリケーションなど)に分かれ、計測データも分断されていた。このように“サイロ化”されたモニタリング環境の中で、IT担当者は計測ポイントごとのデータや状態しか知ることができなかった。

 オブザーバビリティは、こうしたモニタリングが「進化」したものだとギース氏は説明する。さまざまな計測技術(メトリクス、ログ、トレースなど)を統合したツールを提供し、個々の計測データを関連づけて一元的に分析/可視化できるようにすることで、「システム全体としての稼働状態はどうか」「トラブルの根本原因はどこにあるのか」といったことまでを観測可能にする。ここがモニタリングとの大きな違いだ。

 「オブザーバビリティによって、データの『意味』がより迅速に理解できるようになります。ITチームは、従来のモニタリングでは(何らかのトラブル発生に応じて動く)受動的な対応しか取れませんでしたが、オブザーバビリティを通じてより能動的に動くことができるようになります。トラブルに対する“応急処置の繰り返し”ではなく、システム全体の最適化に集中できるわけです」(ギース氏)

従来のモニタリング/監視ツールとオブザーバビリティソリューションの違い

 オブザーバビリティは、サイロ化したITチームにもメリットをもたらす。サーバー、クラウド、ネットワーク、アプリケーション……などとITチーム内の担当が細分化されている場合、それぞれの監視ツールもバラバラにサイロ化されていることがほとんどだ。何かトラブルが発生しても自分の担当領域しか見ず(見えず)、根本原因の解明には時間がかかる。さらには、トラブルの原因や対処を互いに押しつけ合うといったことにもなりかねない。

 「一方で、オブザーバビリティのツールセットがあれば、トラブルの根本原因を即座に示し、チーム全体ではなく解決策を持つ適切なグループにエスカレーションできます」(ギース氏)

 さらに単一のプラットフォームに計測データを集約することで、AI/機械学習によるIT運用の効率化=「AIOps」も実現しやすくなる。

オブザーバビリティのメリットとは?

 こうしたオブザーバビリティの実現によって得られる最大のメリットは「コスト削減」だとギース氏は語る。

 現在のIT部門は、IT環境全体の一部分だけをモニタリングできる監視ツールを大量に導入し、使用している。状況分析が必要な場合、担当者はたくさんのツールを個別に確認して情報収集することになり、時間とエネルギーの浪費につながる。また、監視ツールはそれぞれにライセンスやサブスクリプションのコストがかかる。したがって、監視ツール群をオブザーバビリティプラットフォームに統合し、置き換えることができれば、大幅なコスト削減が見込める。

 多くの企業がオブザーバビリティに注目している背景には、世界的な「IT人材不足」もあるという。ビジネスのデジタル化、DX推進の必要が叫ばれるようになっているにもかかわらず、企業はそれを支えるテクノロジーに精通した人材を十分に確保することができずにいる。一方で、ハイブリッドクラウド/マルチクラウドの活用が浸透して、IT環境は急速に複雑化している。そこで、すべてのIT環境の稼働状態をまとめて1カ所で把握できるオブザーバビリティ実現への期待が高まっている。

 「IT分野で働いている人に『最も大きな課題は何か』と尋ねると、ほとんどの場合『複雑さだ』という答えが返ってきます。ビジネスリーダーはこれを問題視し、解決策を模索し始めています。予算がない、あるいは適切な人材が見つからないためにIT人員が増やせない場合は、IT部門のアジリティ(迅速さ)を向上させる適切なツールが必要なのです」(ギース氏)

 ギース氏が必要性を指摘するこの「IT部門のアジリティを向上させるツール」こそが、オブザーバビリティプラットフォームの「SolarWinds Hybrid Cloud Observability」である。

20年以上にわたる実績に基づく「SolarWinds Hybrid Cloud Observability」

 ソーラーウインズではこれまで20年以上にわたり、ITの監視と管理にフォーカスしたソリューションを開発、提供してきた。その同社が今年(2022年)、新たな方向性を示すソリューションとして提供を開始したのがHybrid Cloud Observabilityとなる。ギース氏は「モニタリングからオブザーバビリティへの移行は、ソーラーウインズにとって必然的な進化でした」と語る。

 「ソーラーウインズでは顧客のニーズに基づいてソフトウェアを開発しています。新機能や改善すべき点の提案を募り、ユーザーフォーラムの『THWACK』でオープンなディスカッションやユーザー投票を行って、将来の製品リリースの参考にしています。そうした取り組みを通じて、現在のITチームが人員や予算の削減によって、最適化やイノベーションに十分な時間を割くことができないという課題を抱えていることも理解しました。そこでソーラーウインズは、自動化や機械学習/AIといった最新のテクノロジーを活用して、ITチームや管理者を支援する新たなツールの開発に乗り出しました」(ギース氏)

「SolarWinds Hybrid Cloud Observability」の特徴

 Hybrid Cloud Observabilityは、ネットワーク、システム、データベース、セキュリティ、アプリケーションに対して包括的な可視性をもたらす。これらはモジュール化されており、ユーザー企業は必要な領域からオブザーバビリティを実現していくことができる。また、ライセンスはノード単位の年間サブスクリプション方式となっており、導入はシンプルだ。

 市場ではさまざまなオブザーバビリティツールが登場しているが、他社と比較した優位性について、ギース氏は「ソーラーウインズのように全体のストーリーを語れるベンダーはいません」と説明する。たとえばアプリケーションパフォーマンス監視(APM)のような特定の分野から参入した他社とは異なり、ソーラーウインズはこれまでネットワーク、システム、データベース、アプリケーション、セキュリティと幅広い領域のモニタリング製品を展開してきた。こうしたすべての情報をまとめられるベンダーはほかにないと、ギース氏は強調する。

 「ITの課題は国を問わず、また業種を問わず類似しています。そのためソーラーウインズのソリューションは、特定の地域や分野だけを対象としたものではなく、マルチベンダーに対応して、想定しうるあらゆる導入シナリオをサポートします。ハイブリッドクラウド化を始めたばかりの企業、組織も支援します」(ギース氏)

「DX推進」を目指す日本企業でもニーズの高まるオブザーバビリティ

 ソーラーウインズでは、日本市場におけるHybrid Cloud Observabilityの展開を加速していく方針だ。

 「日本市場においても『監視ツールのサイロ化』という問題は深刻です。同じ企業でもグローバルと日本、あるいは日本の国内拠点ごとに異なるツールを採用し、異なるポリシーで運用しているケースはよくあります。さらにネットワークやサーバー、仮想環境、クラウドなどを個別に監視している企業がほとんどです。その結果、障害発生時の問題特定や解決に時間がかかるという課題が残っています」(ギース氏)

 それでも、オブザーバビリティに対する理解が少しずつ進んでハイブリッドIT環境を統合監視しようという機運が高まっていること、さらに「IT運用の高度化」がDX推進を支える重要な要素であることへの理解も進んでいることから、オブザーバビリティに対するニーズは今後も高まっていくと見ている。

SolarWinds Hybrid Cloud Observabilityのターゲット顧客

 日本市場においてはチャネルパートナーをはじめ、マネージドサービスプロバイダー(MSP)やグローバルなシステムインテグレーター(SIer)とも協業しながら、Hybrid Cloud Observabilityを積極的に推進していく。すでに製品の認知度と理解度の向上を目指して、エンドユーザーやパートナー向けのオンラインイベント、トレーニングも提供している。

 「既存製品であるソーラーウインズの『Orionプラットフォーム』は、日本国内でも数多くのお客様にご利用いただいてきました。新しいHybrid Cloud Observabilityプラットフォームは、多様化したITインフラを統合し、コストを削減し、最終的には投資収益率(ROI)を向上させるのに役立つと確信しています」(ギース氏)

(提供:ソーラーウインズ)

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