ドキュメンタリー映画「WE MET IN VIRTUAL REALITY」:
「たとえ現実の家族に会えなくても、ここには家族がいるのです」メタバースで生きるとはどういうことか
2022年08月18日 09時00分更新
新刊『メタバースビジネス覇権戦争』(NHK出版新書)著者・新清士さんがメタバースの時流を解説する新連載「メタバース・プレゼンス」がスタート。第1回のテーマは、メタバースに生きるとはどういうことか。メタバースをテーマにしたドキュメンタリー映画「WE MET IN VIRTUAL REALITY」をモチーフに、新書収録のエピソードに加筆・編集を加えてお届けします。
メタバースは人の心の避難場所となり癒しにもなる
2021年に米サンダンス映画祭で奇妙なドキュメンタリー映画が発表されました。「WE MET IN VIRTUAL REALITY(私たちはVRで会った)」というイギリスのジョー・ハンティング監督の作品です。7月末からアメリカの映像配信チャンネル「HBO Max」で配信が始まりました。
この90分の作品は、全編がメタバースとして認識されているVR SNSの「VRChat」で撮影された映像で作られたもの。コロナ禍でロックダウンが行なわれる中、メタバースで暮らす人達がどのように生きているのかに焦点を当てて、ストーリーが展開されます。時期的には、2020年から2021年にかけてのことがテーマとなっています。
中心的に語られているのは、2組のカップルと手話を教える2人です。カップルの2組は、VRChatのなかで出会いながら、どちらもが何千キロも離れて暮らし、ロックダウンの中、現実世界での物理的なつながりを持たず、VRChatの中で恋人関係を作っています。物語は、こうした人々の日常に焦点が当てられ、なにか劇的な事件が起きるということはありません。
登場するアバターは、体つきが妙にセクシャルでありながら、顔はアニメキャラクターであったり、エイリアン姿だったり、ピクセル姿の動物であったり、獣の耳がついていたりしっぽがあったりと、現実ではありえないような姿をしています。VRChatのような世界を知らない人には奇異に映ることでしょう。
ダンスクラスであったり、2021年の年明けを一緒に祝うカウントダウンのホリデーパーティには日本のコミュニティの姿も紹介されます。さらにはラストシーンを飾る豪華なウェディングドレス姿のアバターで行われる結婚式までが紹介されています。この映画のなかでは、その目線は常に優しく肯定的に描かれています。
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