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新型コロナ重症化、「DOCK2」の変異に関連=大規模ゲノム解析

2022年08月12日 06時41分更新

文● MIT Technology Review Japan

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国内の専門家で構成する共同研究グループ「コロナ制圧タスクフォース」は、アジアで初めて新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者と健常者との遺伝子型を網羅的に比較する大規模ゲノムワイド関連解析を実施。その結果、免疫機能で重要な役割が知られる「Dedicator of cytokinesis 2(DOCK2)」と呼ばれる遺伝子の領域の遺伝子多型(バリアント)が、65歳以下の非高齢者における重症化リスクと関連性を示すことを解明した。

国内の専門家で構成する共同研究グループ「コロナ制圧タスクフォース」は、アジアで初めて新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者と健常者との遺伝子型を網羅的に比較する大規模ゲノムワイド関連解析を実施。その結果、免疫機能で重要な役割が知られる「Dedicator of cytokinesis 2(DOCK2)」と呼ばれる遺伝子の領域の遺伝子多型(バリアント)が、65歳以下の非高齢者における重症化リスクと関連性を示すことを解明した。 研究チームは今回、新型コロナウイルス感染症の第1~3波で集積した約2400人分のDNAのゲノムワイド関連解析により、日本人の患者ではDOCK2という遺伝子領域の一塩基多型(SNP)が、65歳以下の非高齢者において約2倍の重症化リスクを有することを見い出した。さらに、第4波と第5波で収集した2400人分のDNAでも、DOCK2のバリアントが重症化リスクとなることを確認した。 同チームは次に、実際のDOCK2発現量を調べて、重症の患者では非重症の患者や健常者と比べてDOCK2の発現が低下していることを発見し、DOCK2は新型コロナウイルス感染症の疾患感受性遺伝子であるだけなく、重症化のバイオマーカーとなる可能性を指摘した。さらに、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染動物モデル(シリアンハムスターモデル)を用いたDOCK2の機能解析により、DOCK2が新型コロナウイルス感染に対する宿主免疫応答に重要な役割を果たしており、その機能を阻害すると感染が重症化することを示した。 コロナ制圧タスクフォースは2020年5月に、感染症学、ウイルス学、分子遺伝学、ゲノム医学、計算科学、遺伝統計学を含む、異分野の専門家が集まり、立ち上げた共同研究グループ。新型コロナ対応の最前線に立つ医療従事者からも賛同を得て全国100以上の病院が参加し、2022年7月末時点で6000人以上の患者の協力を得て、アジア最大の生体試料数を持つ研究グループへと発展している。DOCK2が新型コロナウイルス感染症の重症化のマーカーとなるだけでなく、同感染症の治療標的となることを示した今回の成果は、今後の新しい治療戦略につながることが期待される。 研究論文は、国際科学誌ネイチャー(Nature)のオンライン版に2022年8月8日付けで掲載された

(中條)

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