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日本オラクル、2023年度の国内クラウド・アプリケーション事業戦略を説明

「SaaS志向なしにはDXの総量に間に合わない」日本オラクル善浪氏

2022年08月09日 11時59分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 日本オラクルは2022年8月8日、「Oracle Cloud Applications」で進めるクラウド・アプリケーション事業の説明会を開催した。同社の常務執行役員でクラウド・アプリケーション事業を統括する善浪広行氏はSaaS事業が好調であることを強調、今後のDXブームに対して「これまでのやり方では間に合わない。DXにSaaSを取り込んで変化に対応させていく必要がある」と述べた。

2023年度のクラウド・アプリケーション事業 重点施策

日本オラクル 常務執行役員 クラウド・アプリケーション事業統括の善浪広行氏

「SaaS事業はキャズムを超えた」2022年度は2桁成長を持続

 2022年度の振り返りとして善浪氏は、会計基盤の刷新にクラウドERPを採用したパナソニック、調達でクラウドERPを採用した本田技研工業、経営基盤構築の短期化に向けてクラウドERPを採用したファイントゥデイ資生堂など、多数の事例が出てきていることに触れ、「SaaSビジネスは2桁成長を継続した。キャズムを超えた1年だった」と述べた。

 導入企業の増加に合わせて、善浪氏の“肝入り”でSaaS専門のユーザー会も発足させた。「Oracle Applications & Technology Users Group(OATUG)」という名称で、「ERP/EPM Cloud SIG」と「CX Cloud SIG」という2つの専門部会が始動しているという。

2022年度に発表した国内のOracle Cloud Applications採用事例と、発足したユーザー会「OATUG」の概要

「SaaS志向なしには、DXの総量に対して間に合わない」

 2023年度の重点施策を説明するにあたって、善浪氏はまず日本オラクルの戦略として、インフラ側の「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」とSaaSの「Oracle Cloud Applications」が「売上と成長の両軸になる」と説明した。

 日本オラクル全体では、「ミッションクリティカル・システムの近代化」「ビジネスプロセス全体のデジタル化」「安全、安心で、豊かな暮らしを支える社会公共基盤の実現」「社会・起業活動のサステナビリティを加速」「ビジネスパートナとのエコシステムを強化」と5つの重点施策を掲げている。このうち、SaaSは直接的には「ビジネスプロセス全体のデジタル化」に関与するが、「すべてに関わる」とも述べる。

 背景にあるのは、インドが人口で中国を上回るなどの人口動態の変化に始まり、地政学リスクの高まり、加速するテクノロジの進化、産業構造の変化、気候変動と資源不足などのビジネス環境の変化だ。

 善浪氏は「個人的見解だが」と前置きしながら、「日本で必要なDXの総量に対して、これまでのウォーターフォール型でプロジェクトを進めていたのでは間に合わない。SaaS志向でプロジェクトを進める。AS-ISで作り込みをしすぎることなく、DXの中にSaaSを取り込み、変化に対応していくことが重要ではないか」と述べた。

 善浪氏は、クラウドで日本に貢献するかたちとして「世間(社会)」「仲間(パートナー)」「買い手(顧客)」「売り手(Oracle)」の“四方良し”を掲げてきた。この考えは今年度も継続していくという。

製品、顧客、パートナー向けに4つの重点施策

 日本オラクルのクラウド・アプリケーション事業の重点施策は次の4つだ。

1.:真のデジタル・トランスフォーメーション実現の支援
2.:顧客との多角的なエンゲージメントの深化
3.:パートナー・エコシステムの強化
4.:顧客とパートナーを支える体制の強化

 まず1点目の「真のデジタル・トランスフォーメーション実現の支援」は、米OracleのOracle Applications開発総責任者であるスティーブ・ミランダ氏が今年度掲げているメッセージ「Design for Change. Built for You.」に沿って説明した。

 このメッセージは「Oracleのサービスは顧客の変革、そして成功のためにある」という意味である。そのために「必要なものを揃える」「イノベーション」「顧客サクセス」という3つの柱で包括的、網羅的なクラウドアプリケーションを提供し、顧客のイノベーションにコミットしていく方針だと、善浪氏は解説した。

現在のOracle Cloud Applicationsが掲げるキーメッセージ

 「必要なものを揃える」について、Oracle Applicationsでは「コンプリート(完全な)スイート」と「コンポーザブルな(組み替え可能な)アーキテクチャ」を提供しており、顧客が必要とするものをすべて揃え、同時に「囲い込みではなく、コンポーザブルなかたちでプロジェクトを進めることができる」(善浪氏)。また、ミッションクリティカル業務を支えるOCIを土台としている点も重要な差別化要素であり、パフォーマンス、セキュリティ、高い可用性といたOCIのメリットも享受できる。実際にデータへのアクセス制御を重視し、OCIのテクノロジーをきっかけにOracleのSaaSを採用したケースもあるという。

 「イノベーション」の項目では、サステナビリティについて紹介した。Oracleとしては2008年からサステナビリティの取り組みを進めてきた。現在、最高サステナビリティ責任者はSaaS開発部門に所属しており、製品開発に反映させる体制を整えているという。善浪氏は「今後、SX(サステナビリティ経営)はDXに近づいていく」と述べ、この分野でも顧客をサポートする戦略だと説明する。

 「顧客サクセス」については、「カスタマーファーストのマインドセットだ」と説明する。クラウドにおける顧客の成功を担当するカスタマーサクセスマネージャーを拡充するだけでなく、開発部門も積極的にプロジェクト支援やパートナー支援に関わるケースが増えていると説明した。

顧客の成功を支援するために、独自のクラウド導入方法論を確立している

 重点施策の2つめ、「顧客との多角的なエンゲージメントの深化」では、発足させたユーザー会の拡大、本社製品開発チームとの連携強化などに取り組むという。後者については、日本の要件を米国本社に伝える橋渡し役の専任社員をアサインしたという。

 3つめ「パートナー・エコシステムの強化」では、エコシステムの拡大を進めると同時に、スキル領域拡大の支援などパートナーのエネーブルメントも強化する。7月にハイブリッド開催した「OPN(Oracle Partner Network)Japan Partner Kickoff」では、約800名のパートナーが参加したという。「SaaSベースで日本のDXを変えていくエコシステム化を本格的にやっていく」と善浪氏は話す。

 最後の「顧客とパートナーを支える体制の強化」については、カスタマーサクセスの体制強化に加え、サステナビリティ/ESGなど社会課題をテーマとした顧客支援など、事業戦略部門の新設、インダストリーソリューション推進組織の新設なども計画しているという。

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