横浜中華街流行通信~地元発のディープな街歩き~ 第12回

横浜中華街に対する不満ベスト10を、横浜中華街発展会専務理事が公開!

文●石河陽一郎

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 ゴールデンウィークが終わり、数日呆然としてやっと日常を取り戻してきました。僕も連日カフェの店頭に立っていまして、お陰さまで、オープンからラストまでほぼ満席。キッチンで、前屈みでお皿を洗いすぎて若干腰が痛くなっている50歳です、ハイ…

 前回の記事はこちら

ついに公開! 横浜中華街映画祭・最後の作品『Odore.』

※過去の連載記事はこちら:横浜中華街流行通信~地元発のディープな街歩き~

 横浜中華街の街全体も、久しぶりのにぎやかさを取り戻してきたように感じます。本当によかったです。

 コロナ禍以降で初めて来場者数が9万人を超えるような日もあって、やっと横浜中華街が横浜中華街らしい雰囲気になってきたな、という気がしています。ただ、各店舗のオーナー達にヒアリングしたり、細かくデータを見ていくと、まだ遠方からのお客様が少なかったり、ツアーや法人、ご高齢のお客様が戻ってきてくださっていなかったり。また、日中はにぎわうけれど、夜はまだまだお客様が少なかったりと、やはりコロナ前とは若干違います。

 でも、ここまでお客様が戻ってきてくださったんです。

 横浜中華街が活気を取り戻し、純粋にうれしいです!! 継続して気を緩めず感染対策をしっかりしながら、一歩一歩前に進んでいきたいです!!

 さてさて、先日ある番組で、横浜中華街に対する愛があるゆえの不満にテーマを当てるというものがあり、とても大きな影響がありました。つい先日も深夜に再放送があったので、ご覧になられた方もいらっしゃるのではないでしょうか?

 僕も横浜中華街発展会協同組合の髙橋理事長と一緒にゲストとしてスタジオに呼ばれて、ひな壇の出演者たちに楽しくディスっていただき、タジタジでした(笑)

 横浜中華街に対して不満として上がったのは以下の10個です。

「横浜中華街の愛のウップン」
➀ゴミ箱が全くない
②食べ物以外のおみやげがない
③行きたい場所に全然行けない
④似た店が多すぎる
⑤1年中クリスマスがうざい
⑥ゆっくりする場所がない
⑦路地裏に怖くて行けない
⑧何が真実かわからない?
⑨鏡トラップがうざい
⑩YouTubeが酷すぎる

 どれも僕たちにとっては耳の痛い話ばかりです。

 しかし、これらはひとつひとつを解決していくことで、さらにお客様に横浜中華街を好きになってもらうことができるのですから、少しでも解決に向けて努力をしていくことをスタジオで皆さんに約束してきました。

 スタジオではしっかりお話できなかったので、ここでいくつかについて少しだけ言い訳をさせてください!! また同時に問題に対して取り組んでいる(またはこれから取り組む予定の)対策についてもご紹介させていただきます。

➀ゴミ箱が全くない

 これ、本当に大きな問題だなと僕たちも考えています。しかし、ゴミ箱を置くことでゴミがゴミをさらに呼びます。以前は、横浜中華街には住民の方が捨てるためのゴミ集積所が数か所あったのですが、今はほとんど無くしてしまいました。というのも、本来は住民のためのゴミ置き場に観光客の方々がゴミをどんどん捨てていくのです。毎日数万人の来街があるので、1日で膨大な量になってしまいます。しかも景観も(臭いも)とても悪い。ですので、今はほとんどの集積場をマンションなどの敷地の中にしまわせていただきました。

 本当は街中のそこかしこにゴミ箱を設置したいのですが、設置するには歩道や路上に置く必要があって、それはなかなか許可がおりません。また前述の通り多くの観光客の方がいらっしゃいますので、当然ゴミも相当量になってしまいます。歩行者天国の時間が長いので、回収車も入って行くことができません。

 そこで僕たちが考えた対策は「ゴミの融通化」です。よく考えて見たら、ゴミが出るのってほとんどがテイクアウトグルメのお店からです。お店で買ったものをそのお店に返す人もいますけど、移動していたりすると、そのお店に戻るのもなかなか大変ですよね。ですから、まずテイクアウトグルメを提供している店舗には必ずゴミ箱の設置をしてもらうということです。そして、ここからがポイントなのですが、自分のお店で出たゴミ以外のゴミについても受け入れてもらうということです。テイクアウトグルメを販売している全てのお店がそれぞれお互いのゴミをもらいあってくれたら、ゴミは無くなります。今これを一生懸命取り組んでいます。

②食べ物以外のおみやげがない

 これ、そうですかね? そんなこともないと思うのですが、外からみるとそうなんだなーというのが勉強になりました。僕は「ROUROU」というアパレルブランドをやっていて、地方から目指してきてくださる方もいらっしゃいますが、確かにおみやげって感じでもないですもんね。外からみると食べ物以外のおみやげってあんまりないのかもしれません。なんかデザインして中華街みやげを作っちゃおうかな。

③行きたい場所に全然行けない

 今でも僕もたまに迷子になることがあるので、その通りだなーと思います。でも、迷ってしまうのもこの街のおもしろさの一つかなー、なんて楽観的にも感じています。ただ、本当に行きたいところに行けないというのは問題なので、今、年間60万部印刷している「横濱中華街街道指南(マップ)」のリニューアル案なんかも検討しています。横浜中華街は小道や裏道にも魅力あるお店が多いし、その裏路地自体が名物なので、この辺りはどうやったら観光コンテンツとして確立することができるのか、なんかについても考えています。

④似た店が多すぎる

 なるほど。そうなんですね。僕みたいに、それぞれのお店に実際に入って食べたり飲んだりしているとそのお店の違いは歴然とわかるのですが、一度も入ったことがなければ確かに似たような中華料理店にしか見えないのかもしれませんね。これについても、お客様が「旅前」や「旅中」でどのようにお店を探すのかも含めて研究して、今後行きたいお店をスマートに探せる仕組みを作っていきたいと考えています。

⑤1年中クリスマスがうざい

 全然そんなことないので… 割愛します。

⑥ゆっくりする場所がない

横浜中華街の中には山下町公園という結構大きな公園があるのですが、知らない人が多いのかもしれません。 これも僕たちのマップ(「横濱中華街街道指南(マップ)」)の案内とかにもっと改善が必要かなーと思います。また、外でゆっくりもいいのですが、できれば、お店の中に入ってゆっくりしてもらいたいなーとも思います。テイクアウトグルメも横浜中華街の楽しみ方の一つですし、全国の観光地のトレンドでもあるのだと思いますが、お店に入らないと味わえない料理や雰囲気もあるはず。もっとお客様に店舗に入ってもらうにはどうしたらいいですかね? 何か良いアイディアがあればぜひ皆さんのお知恵をお貸しください。

⑦路地裏に怖くて行けない

 この連載でも、僕がやってるアパレルブランド「ROUROU」から路地に入ったところにある「ROUROU Cafe」を取り上げていますが、実は番組の担当ディレクターは本番まで全くその存在を知らなかったそうです(汗)。確かに、横浜中華街の路地裏に入るには勇気が必要かもしれませんが、裏路地も横浜中華街の魅力を感じてもらう大切な要素の一つだと思ってるんですよねー。みなさんはどう思いますか?

⑧何が真実かわからない?

 横浜中華街のあちこちで見かけるNo.1の看板。あまり気にしたことがなかったのですが、番組に取り上げられて、いわれてみれば疑問に感じます。街では本当に何かのNo.1なら、そのエビデンス(裏付け)をお客様にわかりやすく表示をしてもらうこと、そして万が一事実と異なる表現があるなら、看板の表示を正しいものに改めてもらうお願いをする取り組みを始めました。

⑨鏡トラップがうざい

 これは、みなとみらい線から出た長い廊下の先にある鏡のせいで、どこまでも廊下が続いているように見える錯覚についてのことです。この鏡もそうですが、そもそもこの廊下って長くて退屈ですよね。これについてはまだここではお話しできないのですが、この番組が放送される前からいろいろ計画がありますので、乞うご期待!!

⑩YouTubeが酷すぎる

 見ていただくとわかるのですが、横浜中華街の公式YouTubeは確かに素人の出来です。

 これはコロナ禍で、これまで定期的に開催して、たくさんのお客様が楽しみにしていた恒例の伝統行事がなかなか実施できない中で、この時期にできることをやり、個店に光を当てたいと始めたものです。とはいえ予算がありません。でもお客さんがいないから時間だけはある! ということで、理事たちみんなで手分けをして、紹介を希望する店舗は、ほぼ全て自分たちで動画を撮影&インタビューしました。そりゃー、撮っているのがプロじゃないから、出来上がりはイマイチかもしれません。

 でもその動画を通じて、少しでもお店に興味を持っていただいたり、オーナーの経営に対する想いを皆さんにお届けできたらと思いました。また、これはメディアに店舗を紹介する際にとても役に立っているんです。メディアの方々は情報収集をする際にSNSの口コミを見るだけでなく、大概過去に取材された他局の他番組をチェックします。ですから、過去に一度でも取材されたことがある店舗に取材が集中する傾向があります。隠れた名店がほかにもあるんだろうなと思いつつも、全てのお店にロケハン行くわけにはいかない、そんな時にこの動画が役に立っています。プロだからこそ、出来よりも映像の向こう側にあるお店の魅力を見抜く力があるのだと思います。

 それにしても300を超える店舗の撮影は本当に力技でした。最後の方は撮影や編集にもみんな慣れてきたので、いずれ少しずつ更新していくことができたら良いなと考えています。

 ついでに、僕が自分のカフェを紹介している動画はこちらです。よかったら見てください。

 ところでスタジオで感じたことなんですけど、芸能人の方って本当に頭の回転が早いですよねー。よくもまぁ、即興で気の利いたことをパッと返せますよね? しかも、カメラが回ってない時と回ってる時の切り替えもすごい。ああいうのって訓練なんですかね? 感心しきりでした。

 同じ番組で同日呼ばれていた回転寿司の全国チェーンがあります。僕たちの出番が回ってくる前に、控え室(楽屋)で収録の様子がわかるのですが、おいしそうなお寿司の話題を僕たちもモニタで見てました。お腹が減ってきた理事長が突然、「ちょっと抜けて寿司食い行こうぜ」と言い、楽屋を抜け出してスタジオ近くにたまたまあった寿司屋に駆け込み、大将にその日のおすすめなんかを聞いてお寿司をご馳走になりました。芸能人の方々もすごいですが、これからまさに自分たちの収録があるというのに、平然と寿司を頬張る理事長の肝っ玉もすごいもんだな、改めて感じた1日でした。

 先日、おもしろい写真撮れたので、皆さんにもシェアします。

 さてみなさんお待ちかね今回の #ボス飯 は、「慶福楼(けいふくろう)」の「福建炒麺」(1100円、福建郷土風焼きそば)です。

 「慶福楼」は広東料理と福建料理のお店。福建省は海が近いこともあり、海産物を豊富に使ったメニューが多いです。野菜に豚肉とエビ、イカ、アサリなどの海産物をスープとともに炒めます(少しスープがあるのがポイント!)。

 このスープと具がコシのある平打ちの麺によく絡んでめちゃめちゃうまいです。福建省の家庭料理らしいのですが、これは多分、長崎ちゃんぽんと同じルーツです。鎖国時代、唯一の開港地であった長崎・出島にはたくさんの中国人が往来していましたが、そのほとんどが当時交易に大きな役割を担っていた福建省の方達。この方たちが作った料理の一つが長崎ちゃんぽんなのです。

 二日酔いの時は最高のメニューです!!

◆店舗DATA
店名:慶福楼本店 市場通り
住所:横浜市中区山下町190【市場通り】
電話:045-222-7868
営業時間:11時~23時(LO22時)
 ※現在新型コロナウィルスの影響のため、営業時間に変動があります。事前にお電話にて直接お問合せを。
休み:なし
公式サイト:http://www.keifukurou.com/
食べログ :https://tabelog.com/kanagawa/A1401/A140105/14030707/

◆横浜中華街公式SNS

文/石河 陽一郎

 いしかわ よういちろう。1972年生まれ。株式会社ロウロウ・ジャパン代表取締役・総合プロデューサー。横浜中華街発展会協同組合専務理事。茅ヶ崎出身、横浜市在住。幼少期をシンガポールで過ごす。趣味はシステマ、焚き火。