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クラウド時代に対応する“クラウドスケールテクノロジー”採用、オンプレミスからSaaSまでの一元管理を進める

ベリタス、統合データ保護の最新版「NetBackup 10」の強化ポイントは

2022年05月09日 08時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 ベリタステクノロジーズが、エンタープライズ向け統合データ保護製品の最新版である「NetBackup 10」を2022年2月末にリリースした。この最新版では「Veritas Cloud Scale Technology(クラウドスケールテクノロジー)」による拡張性や機能性の強化を掲げ、クラウド時代に適した新世代のアーキテクチャを採用しているという。

 さらに、近年の買収を通じて獲得した複数の製品や技術もNetBackupへの統合を図り、オンプレミスからIaaS、コンテナ、さらにSaaSまで、幅広い環境にある重要なデータを一元的に可視化し、管理を効率化/自動化できる仕組みも整えている。企業にとって大きな脅威となっているランサムウェア攻撃に備える「回復力(サイバーレジリエンシー)」も、最新版の重要なキーワードだ。

 今回は、2021年4月から日本法人社長を務める四條 満氏、同社 テクノロジーソリューション部 ディレクターの高井隆太氏に、NetBackup 10の持つ特徴や導入メリット、今後の市場戦略などを聞いた。

「クラウドスケールテクノロジー」をベースにクラウドへの最適化やオペレーション自動化、サイバーレジリエンシ-を実現する最新版「NetBackup 10」

ベリタステクノロジーズ 代表執行役員社長を務める四條 満(しじょう みつる)氏、同社 テクノロジーソリューション部 ディレクターの高井隆太氏

データ保護/管理でエンタープライズが抱える「4つのC」の悩みを解消する

 NetBackupの話に入る前に、まずは現在のエンタープライズがデータ保護/管理について抱えている課題と、その解消に向けたベリタスのアプローチについて整理しておきたい。

 テクノロジーソリューション部 ディレクターの高井氏は、企業においてDX(デジタルトランスフォーメーション)による変革が急速に進む一方で、データ保護/データ管理の取り組みは進化が遅れており、成熟度に「ギャップが生じている」ことを指摘する。そのギャップから生まれる課題が「4つのC」だという。

 「“コスト、サイバー(セキュリティ)、クラウド、コンプライアンス”という『4つのC』について、多くの顧客企業が悩みを抱えている。データの量が急増し続ける中でそれを管理していくコストの効率化と削減、ランサムウェア攻撃に代表されるサイバー攻撃に対する回復力の向上、ハイブリッド/マルチクラウド利用が進む中でのデータ管理の分断解消、利用が増加するSaaSも包含するデジタルデータのコンプライアンス、これら4つを実現していく必要がある」(高井氏)

DX/デジタル化とデータ保護/管理の進化にギャップによって、コスト、サイバー、クラウド、コンプライアンスという「4つのC」の課題が生じている

 ベリタスは長年にわたってデータ保護/管理市場をリードしており、その領域においてソリューションを提供していくという基本スタンスに変わりはない。ただし、時代の変化に応じた“ベリタス自身のトランスフォーメーション”も必要になっている。具体的には、クラウド時代に最適なアーキテクチャと顧客提供モデルの追求、そしてベリタス内部でのオペレーションモデル(ビジネスモデルや組織)の変更といった取り組みだ。ベリタスは「まさにそうした変革を進めているところ」だと、高井氏は説明する。

 ベリタスでは2019年に「データ保護」「可用性」「インサイト」の3領域を統合するエンタープライズデータ管理基盤を発表していた。その3領域における機能強化を図るために、それからおよそ2年間、ベリタス自身が開発した新たなテクノロジーと買収した各社テクノロジーをNetBackupへ統合する取り組みを進めてきた。

 時代の変化に追随して、プロダクトの提供モデルも変化している。たとえば、主要なビジネスSaaS(Microsoft 365 Outlook、SharePoint、OneDrive、Google Drive、Boxなど)に対してエンタープライズグレードのデータ保護機能を提供する「NetBackup SaaS Protection」(旧HubSpot)、メールアーカイブ/eディスカバリSaaS「Enterprise Vault.cloud」をメール以外のコミュニケーションツール(Slack、Teamsなど)にも対応させるアドオン「Veritas Merge 1」、コスト効率の高いNetBackup専用クラウドストレージ「NetBackup Recovery Vault」などは、すべてSaaS型で提供している。もちろんこれらのSaas群は、NetBackupの単一コンソールから統合的に管理することが可能だ。

「データ保護」「可用性」「インサイト」の3領域に対する機能強化を進めてきた

「NetBackup SaaS Protection」「Enterprise Vault.cloud+Merge 1」の概要/p>

ハイブリッド/マルチクラウド時代に対応する「NetBackup 10」

 ベリタスではNetBackup 10のリリースと同時に、ハイブリッド/マルチクラウド時代に求められる運用のアジリティ、効率性、安全性を確保するための新たなビジョン、「ベリタス クラウドスケールテクノロジー(Veritas Cloud Scale Technology)」を発表した。

 このビジョンにおいては、あらゆるクラウド内/クラウド間で最も効率的かつパフォーマンスの高い方法で運用できる「マルチクラウド環境への最適化」、管理者の運用負荷を軽減する「自律的な運用」、あらゆる脅威からの確実なデータ保護や復元を可能にする「サイバーレジリエンシ-」の3つが具体的なキーワードとなっている。その技術を実装した最新版製品がNetBackup 10という位置づけだ。

 ただしクラウドスケールテクノロジーという言葉は、特定の技術を指すものではないという。NetBackupアプリケーション自身のコンテナ化やマイクロサービス化、オーケストレーション、またAI/機械学習技術、自動化、セルフサービス化といった、モダンアプリケーションで使われる幅広い技術や手法を指す。さらに、パブリッククラウドが提供するクラウドネイティブなテクノロジーとの連携も含まれる。

 「たとえば『伸縮自在のスナップショット保護』というのは、AWSやAzureのネイティブなスナップショット機能と連携して、必要なときにだけコンテナ化したバックアップエンジンを展開し、不要になればなくす(破棄する)仕組み。必要なときに必要なだけリソースを確保するので、クラウドコストの最適化につながる」(高井氏)

NetBackup 10は「マルチクラウドへの最適化」「自律的な運用」「サイバーレジリエンス」という3つのキーワードを掲げる

「NetBackup Cloud Scale Technology」の概要

 ちなみにNetBackup 10では、AWSやAzureに対するサポートを拡張し、強化されたティアリング(クラウドストレージの自動階層化)機能や重複排除機能を提供することで、大幅なストレージコストの削減を可能にすると発表している。各クラウドのマーケットプレイスから容易にデプロイできる点もメリットだ。

 また、主要なKubernetesディストリビューションをサポートしたことで、オンプレミスのKubernetes環境やパブリッククラウドのマネージドKubernetes環境など、幅広いプラットフォームの間で、バックアップしたコンテナ環境をどこにでもリストアできる環境を整えたという。

 そのほか、前述したNetBackup SaaS ProtectionによるSaaSデータ保護の統合、AIベースでバックアップのサービスレベルやリスク評価をレポートする「NetBackup IT Analytics」(旧Veritas APTARE)の統合と基本機能の無償提供などの強化点もある。

訂正:ベリタス クラウドスケールテクノロジーについての説明文を一部修正しました。(2022/05/11 9:50:00、筆者)

ランサムウェア対策のための「サイバーレジリエンシ-」

 日本国内でも大きな被害が報道されるようになったランサムウェア攻撃。その被害から迅速に業務を回復させる「サイバーレジリエンシ-」の実現も、NetBackup 10の重要なキーワードだ。

 「ランサムウェア攻撃に対しては、そもそもの侵入を防ぐ、感染前に検知して対処する、感染後の内部拡散を防ぐなどさまざまなアプローチが考えられる。とは言え、感染してしまったシステムについては回復、リカバリするしか方法はない。そのときに『どうやってクリーンなデータから回復させるのか』が主要な課題となる」(高井氏)

 これはランサムウェア被害からの回復において、重要なポイントである。たとえバックアップデータからリストアができたとしても、すでにランサムウェアに感染しており、あるいはシステムの一部が攻撃被害(暗号化、破壊)を受けている時点のバックアップであれば、回復後に再び被害が発生してしまうからだ。

 そこでNetBackup 10では、新たにマルウェアの「検出」機能が追加された。バックアップ処理のタイミングで、バックアップデータにあちしてAIによるアノマリー検知(異常検知)を行い、リスクスコアが高い場合にはマルウェアスキャンを自動実行してランサムウェアの感染を早期に発見するという。

 また最近のランサムウェア攻撃では、バックアップからのリストアを妨害するために、最初の攻撃対象としてバックアップサーバーやバックアップデータを狙う手法が登場している。これに対抗するために、バックアップデータの破壊(書き換え)や消去を防ぐ、不変ストレージ(イミュータブルストレージ)やWORMストレージへの対応を行っている。

 さらにバックアップサーバーそのものの感染被害を防ぐため、NetBackup以外のプロセスが動作しない、Linuxベースの専用OSを搭載したアプライアンスも提供している。高井氏は「アプライアンスに乗り換えていただくだけで、とても手軽に堅牢な仕組みになる」と紹介した。なお従来、日本市場におけるアプライアンス製品の売上比率は海外よりも低かったが、この1、2年で急速に伸びているという。

ベリタスNetBackupで実現できるランサムウェア対策

「統合バックアップ」としての理解を浸透させていきたい

 四條氏は、昨年(2021年)4月から日本法人の社長を務めている。ベリタス日本法人では四條氏の就任前から最近までおよそ2年間、「エンドユーザーやメディアに対する積極的な情報発信活動ができていなかった」という反省点があるという。そこで就任後には新たなマーケティング責任者や広報担当者を招くなど、マーケットへの情報発信力の強化に取り組んできた。

 特にエンドユーザーに対する情報発信については、現在のNetBackupが備える幅広い機能群の理解が浸透しておらず、「非常にもったいない」と感じることがあるという。

 「パートナー経由でNetBackupを導入いただいているお客様でも、バックアップを取るだけの単純なツールとして使われているケースが多い。NetBackupではこの2年間、さまざまな機能強化を行ってきたが、それが顧客に伝わっておらず、非常にもったいない。統合バックアップであるNetBackupをフルに使っていただくことで、データ保護の投資コストも運用コストも下げられるものと考えている」(四條氏)

 そうしたメッセージを伝えるために、ハイタッチ営業を強化すると共に、パートナーに対する訴求も進めていきたいと語る。

 「クラウドに移行する際に、新たな(データ保護の)ツールを入れてしまって、無駄な投資が増えたり管理が複雑になったりといったことが起きている。NetBackupはAWSやAzureのマーケットプレイスからすぐにデプロイでき、クラウド移行のためのツールも用意している。すでにNetBackupを使っているお客様であれば、単純にクラウドまで足を伸ばす(管理対象に追加する)だけで使っていただけるので、そうしたことをしっかりとお伝えしていきたい」(四條氏)

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