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デジタルヘルス先行企業5社が語るDTx発展・業界活性化に求められることとは?

「急接近するデジタルヘルスの時代、先進企業が語る課題と現在」レポート

連載
JAPAN INNOVATION DAY 2022

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 2022年3月11日~3月18日に開催されたASCII STARTUP主催のビジネスイベント「JAPAN INNOVATION DAY 2022」では、「急接近するデジタルヘルスの時代、先進企業が語る課題と現在」と題したセッションを実施。新しいサービスで先行する5社のキーマンが、ヘルスケア分野やデジタルセラピューティクス(DTx)領域の現状や未来などを語った。

 登壇したのは、薬事承認取得で話題のニコチン依存症治療用アプリなどを展開するCureApp 取締役COOの宮田尚氏、治療用アプリや臨床試験効率化のためのシステムを開発するサスメド 取締役の市川太祐氏、2型糖尿病患者向けのDTxに取り組むSave Medical 代表取締役社長の淺野正太郎氏、遠隔心臓リハビリシステムの開発を手掛けるリモハブ 代表取締役の谷口達典氏、習慣化アプリ「みんチャレ」を提供するエーテンラボ 代表取締役CEOの長坂剛氏の5名。大阪大学大学院医学系研究科 特任准教授の八木雅和氏がモデレーターを務める形でセッションが進められた。

大阪大学大学院医学系研究科 特任准教授の八木雅和氏

 まず最初に八木氏は、現在あるいはこれまでの「課題感」や「キーポイント」について各社に聞いた。

 CureAppの宮田氏は、ニコチン依存症治療用アプリの領域では今後、後続企業の参入が予想されることから、「複数領域での早期の事業展開が重要になる」と考えている。さらに、複数領域での並行開発には資金面などでのさらなる対応が求められることあるため、必要であれば「他社との共同開発も視野に入れる」という方針を示し、その第一例目となる「がんの領域での第一三共との提携」などを紹介した。

CureApp 取締役COOの宮田尚氏

 サスメドの市川氏は、自社が現在に至るまでの重要なファクターとして3つを挙げた。1つ目は、ビジネス的に役立った点として「医療者が専門領域を核に起業した」こと。2つ目は、モノづくりと評価を円滑に進められた点として「優秀な臨床開発担当者とエンジニアを早期に確保できた」こと。そして3つ目は、市川氏がうまく対応できなかった点として「バックオフィス業務を担う人材を早期に登用する」ことを挙げた。とくにこの3つ目について市川氏は、社長が社長としての業務に集中するためには「もっと早期に力を入れるべきだった」と振り返り、「ベンチャーキャピタルなどの投資家からのサポートもあると助かる」と補足した。

サスメド 取締役の市川太祐氏

 Save Medicalの淺野氏は、ヘルスケア分野のスマホアプリは治療効果や診断に利用されることを企図する場合には「医療機器の開発プロセスに則って対応する必要がある」ことを指摘し、通常のアプリと比べて「開発に時間を要してしまうのは仕方がない」という認識を示す。さらに、そういった背景も踏まえて「スピード感よりも質の向上に専念すべき」と語り、例えば医学的な有効性だけでなく「患者が使いたくなるようなサービスに育て上げることが問われる」と付け加えた。

Save Medical 代表取締役社長の淺野正太郎氏

  リモハブの谷口氏は、サスメドの市川氏やSave Medicalの淺野氏の意見に同調するとともに、「特許への対応」を重要なポイントとして提示。「スピード感も必要だが、先行者利益を守るために、柔軟な知財戦略を構築していくことも大事ではないか」との考えを示した。この点についてCureAppの宮田氏は、大企業のような知財部門がない立場では「限られるリソースの中で創意工夫しているのが実情に近い」と自社の現状を明かした。

リモハブ 代表取締役の谷口達典氏

 エーテンラボの長坂氏は、アプリで行動変容を促す手法がさまざまにある中で、自社がとくに重視している点として「アウトカムの最大化」を挙げる。例えば、どんなに優れたアプリでも、多くの人に使ってもらえなければ「世の中にインパクトは起こせない」(=起業した意味がない)ことから、アプリ開発と社会実装の「両輪を回しながら試行錯誤している」と答えた。

エーテンラボ 代表取締役CEOの長坂剛氏

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