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荻窪圭の“這いつくばって猫に近づけ” 第748回

数年ぶりに同じ場所で同じ猫に出会ったのでニコンのハイエンドカメラ「Z 9」で記念撮影

2022年01月25日 12時00分更新

文● 荻窪 圭/猫写真家 編集●ASCII

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ふさふさした毛が暖かそうな冬の長毛猫。大あくびした瞬間を連写。歯もしっかりしてるよいあくび顔なのだった。2022年1月 ニコン Z 9

 何年かぶりに訪れた場所で以前と同じ猫に出会うと「おおー、生きていたかー、元気かー!」ってなって妙にうれしい。冒頭のあくび長毛猫がそう。小さな駐車場の脇のブロックの上にちょこんと座ってたのだ。

 鞆の浦って猫によく出会うし、似た模様の猫が多いので個体の識別が苦手な人には判断しづらいのだけど(わたしがそうです)、これだけ特徴的だと印象に残ってる。長毛でふさふさのキジトラである

 おじいさんだかおばあさんだかわからないけど、見た目が老猫っぽいので余計に感慨深いのだ。歯もちゃんと揃ってるし。

2022年元日。長く生きてますって顔がいい。そういえば、昔、まったく同じ場所で会ったよね。2022年1月 ニコン Z 9

 以前に会ったのはいつだったっけ、とAdobeのLightroom Classicで古いライブラリを開いて探してみた。Lightroom Classicで写真を管理してるのです。「鞆の浦」ライブラリを開いて大量の写真からだだだっと目視で探してて発見した。2018年の1月2日。ちょうど4年前だ。しかもまったく同じ場所。うしろに止まってる車もまったく同じ。ここが定位置だったんだねえ。

4年前の1月2日。まったく同じ場所で、しかもうしろに止まってる車もまったく同じっぽい。同じ日に撮ったと言われても信じるくらい。2018年1月 ソニー Cyber-shot DSC-RX10M4

 別構図の写真も発見。いい顔をしてますな。さすがに4年前だと今より顔が若い。

4年前の1月2日。顔がわかくて凛々しい。毛のツヤも違う。いい顔である。2018年1月 オリンパス OM-D E-M1 Mark II

 となると、この猫が写ってるもっと古い写真はないかと探したくなる。そしたら見つかったのである。なんと2015年。7年前だ。ほぼ同じ場所で、石畳をとことこと歩いてくる写真が残ってたのだ。

 撮影したのは2015年の9月。顔の周りはすっきりしてるけど、尻尾はやたらふさふさしてるし、夏だったから毛も短かったんじゃなかろうか。顔の模様も同じなので同じ猫だと思うのだよね。

夏だからか毛はすごく短いけど、色といい鼻やおでこの模様といい、同じ猫だと思う。しかもすごく若々しい。2015年9月 富士フイルム X-T10

 同じということにしておこう。年に1~2回しか訪れない場所で(しかもコロナ禍もあって久しぶりの訪問で)、旧知の猫に会えたって予想以上にうれしいもんだわ。

 そうなると、他にもいないかと探したくなるのだが、意外にいない。外猫って寿命が短いし、貰われていったり違う場所に移ることもあるし、人なつこい猫じゃない限りいつも出てきてくれるとはかぎらないから。同じ猫がいた、と思って真剣に見比べたら微妙に模様が違ってたとかそんなんばっかである。

 その中でこの猫は同じかも、と思ったのは階段上にある寺院で出会ったキジトラ。こちらは2019年8月。2年半前だ。こちらへ歩いてくる姿を撮ったもの。

とことことあるいてくるキジトラ。右の耳がカットされてるので地域猫として管理されてるのだろう。凛々しい若猫である。2019年8月 オリンパス OM-D E-M1 Mark II

 続いて、2022年1月。カメラと天候と季節が違うと難しいんだけど、カットされた耳先(去勢したという印)の場所や形が同じで、おでこの模様も同じっぽいのできっと同じ猫だ。

よく見ると、口元や目元の模様、カットされた耳先がそっくりだ。そこそこ近づいてくるけど、撫でようとすると逃げるという距離感も同じ。2022年1月 ニコン Z 9

 当然向こうはこっちを覚えてないし、こっちはこっちで覚えてなかったのでアレなんだけど、元気で何より。予想外だったのは港で出会った猫。背景の山や漁港らしい建物がよかったのでローアングルで狙ってみた。

冬のプチ漁港で陽射しを浴びてまったりしてるキジトラのハチワレ。2022年1月 ニコン Z 9

 でもって、以前撮った写真をパラパラと見ていたら、「もしや、同じ猫じゃね?」って猫がいたのだ。2019年の8月。2年半前、この小さな港に元気な子猫がいたのである。だいたい、顔に比べて耳がデカければ子猫だ。痩せてるけど元気に走り回っていたのである。

 それがこの写真。早朝の長く伸びる影がよかったのでそれがわかる構図で狙った記憶がある。

カメラを構えてたら興味深そうに近づいてきて、直前で止まったときの図。まだ子猫なので顔に比べて耳がデカい。2019年8月 オリンパス OM-D E-M1 Mark II

 2022年に出会った猫は、ふくふくしてて顔も大人の顔になってるのだが(2年半もたてば大人にもなるさ)、鼻の周りやハチワレの形がそっくりなのである。左前足にかけての模様もそっくり。

無事生き延びて立派な大人になって再会できるとはびっくり。2022年1月 ニコン Z 9

 いやあ、無事に大人になれて、しかも健康そうで何より。小さな漁港だし、鞆の浦といっても観光エリアからかなり離れてた場所なので旅行者もまずこないし、交通量も少ないしで猫的には伸び伸びできるいい環境なんだろう。このプチ漁港、以前訪れたときに比べると、係留されている船もめっきり少なくなってた。近海で魚がめっきり獲れなくなり、漁師の高齢化も進んで、漁をする人がいなくなりつつあるんだそうな。

 猫が元気なのはうれしいけど、歴史ある街だけに悩ましい問題である。

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筆者紹介─荻窪 圭

 
著者近影 荻窪圭

老舗のデジタル系ライターだが、最近はMacとデジカメがメイン。ウェブ媒体やカメラ雑誌などに連載を持ちつつ、毎月何かしらの新型デジカメをレビューをしている。趣味はネコと自転車と古道散歩。単行本は『ともかくもっとカッコイイ写真が撮りたい!』(MdN。共著)、『デジカメ撮影の知恵 (宝島社新書) (宝島社新書)』(宝島社新書)、『デジタル一眼レフカメラが上手くなる本』(翔泳社。共著)、『東京古道散歩』(中経文庫)、『古地図とめぐる東京歴史探訪』(ソフトバンク新書)、『古地図でめぐる今昔 東京さんぽガイド 』(玄光社MOOK)。Twitterアカウント @ogikubokei。ブログは http://ogikubokei.blogspot.com/

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