連載649回、連載650回と2週続けてインテル製品のロードマップアップデートをお届けしたので、今週からはAMDのロードマップアップデートである。こちらもすでにCES 2022での発表についてKTU氏のレポートが掲載されているが、もう少し深掘りしてみよう。
動作周波数を下げても性能が向上している
Ryzen 7 5800X3D
基調講演での順番とは異なるが、まずはRyzen 7 5800X3Dについて説明する。これは3D V-Cacheを搭載したZen 3コアである。コード名は不明だが、EPYC向けがMilan-Xだったことを考えるとやはりVermeer-Xあたりであろう。
少し驚いたのは、Ryzen 9ではなくRyzen 7として発表されたことだろうか。もっとも理由はなんとなくわかる。3D V-Cache搭載のダイはMilan-Xに優先的に供給されることになっており、デスクトップ向けにはそれほど潤沢にはまわせないために、2ダイを利用するRyzen 9ではなく1ダイで済むRyzen 7にすることで供給量を確保しよう、というあたりだろう。
このRyzen 7 5800X3DはSocket AM4、つまり現在利用しているAMD 400/500シリーズでそのまま利用可能(ただしBIOSアップデートはさすがに必須だろう)となり、現行プラットフォームでそのまま利用できる最後の製品(?)になると思われる(これは後述)。
性能に関して開示されたのは、Ryzen 9 5900Xとの比較、およびCore i9-12900Kとの比較である。

Core i9-12900Kとの性能比較。Far Cry 6もWatdh Dogs LegionもGPU負荷が高いゲームなので、この結果はわりと納得できる。ただ、Gears 5やCS:GOのようにCPU負荷が高いゲームで差がないあたりの振る舞いがおもしろい
興味深いのは、Ryzen 7 5800X→5800X3Dでは動作周波数がむしろ下がっている(Base 3.8GHz→3.4GHz/Boost 4.7GHz→4.5GHz)ので、シングルスレッド性能という観点ではむしろ不利に働くはずなのに、それでも性能が向上しているという点だろうか。
またCore i9-12900Kとの性能比較で言えば、Ryzen 7 5800X3Dの方はDDR4-3600 8GB×2の構成、一方Core i9-12900Kの方はDDR5-5200 16GB×2の構成になっており、メモリー帯域は圧倒的にCore i9-12900Kの方が有利なのに同等以上のスコア、というあたりは案外他の用途であっても結構性能が期待できる可能性がある。このあたりは実際の製品でテストできる機会が待ち遠しいところだ。
あとは気になるのは価格であろうか? 1月20日付の価格をAmazonで調べたところ以下のとおり。
日本Amazonでの価格 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
Ryzen 7 5800X | \52,527 | |||||
Core i9-12900K | \77,499 | |||||
米国Amazonでの価格 | ||||||
Ryzen 7 5800X | $359.91 | |||||
Core i9-12900KF | $589.99 |
(米国AmazonではちょうどCore i9-12900Kが品切れで、マーケットプレイスでは704ドルから売られていたが、これはあまり参考にならないと判断した)
ということで、日米とも2万円強の価格差がある(米国の方がむしろ価格差が大きい)。米国で500ドル台前半、日本円で7万円前後なら十分競争力がありそうであるが、さてどうなることか?

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