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ITとデザインの視点でフードロス削減を考えるアイデアソン<イノラボ×多摩美>

文●石井英男、ASCII編集部

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 SDGsの17の目標の中でも、達成状況に向けた課題があるとされているのが、目標12「つくる責任、つかう責任」である。そんな目標12を達成するための施策として注目されているのがサーキュラーエコノミーだ。株式会社電通国際情報サービス(ISID)の研究開発組織であるオープンイノベーションラボ(イノラボ)では、サーキュラーエコノミーの実現に向け、ITテクノロジーを活用した貢献の余地があると考えていた。そこでイノラボはその一環として、多摩美術大学と共同で「フードロス(Food Loss & Waste)削減のためのアイデアソン」を企画し、2021年12月21日に実施した。はたしてどんなアイデアが出てきたのか。その様子をレポートする。

●アイデアの一部(詳しくは記事後半で)

※日本ではまだ食べられるのに廃棄される食品(Food Loss & Waste)のことを「食品ロス」と呼びますが、今回のアイデアソンでは米国の呼称を元に「フードロス」という呼び方に統一しました。本記事にある「フードロス」は、食品の生産から加工・製造、流通、消費(小売・飲食・家庭)までの全ての過程において発生する食品ごみのことを指します

サーキュラーエコノミーの「デザイン」に注目

 統合デザイン学科、生産デザイン学科プロダクトデザイン専攻の学生の授業のプログラムの他、有識者のレクチャーによる学びの機会の提供や、活動をさらに社会へ広げていくためのイベント開催など様々な取り組みを行なっている。

 サーキュラーエコノミーの実現に寄与する施策はさまざまなものが考えられるが、「冷蔵庫やエアコンの冷媒の回収」や「陸上風力発電」などは、個人で取り組むのが難しい。それに対し、「フードロス(食料廃棄)の削減」は多くの人が取り組める、身近で効果がある施策である。特に、日本は食料自給率が低い国であり、フードロス削減は喫緊の課題でもある。

 多摩美術大学では、統合デザイン学科の永井一史教授と生産デザイン学科の濱田芳治教授らが進める美術大学によるSDGs時代の廃棄物循環型経済モデル「すてるデザイン」プロジェクトを実施していた。廃棄物の発生抑制や、資源や付加価値製品への転換により、製品の捨て方を根本から変えようというSDGs時代の廃棄物循環型経済モデルを、複数の企業と連携してデザインする内容だ。

 サーキュラーエコノミーの企画を進めていたイノラボが、このプロジェクトを知り、一緒に何かできないかと考えたことが、このアイデアソンが誕生したきっかけだったと、イノラボの藤木隆司氏は語る。

 「私は技術分野のエンジニアとして、『デザイン』が持つ力を感じています。たとえば、ゼロックスのパロアルト研究所ではパーソナルコンピューターの原型となるプロダクトを作っていたわけですが、世の中に浸透させられなかった。それを世の中に浸透させたのはビル・ゲイツやジョブズだったわけですが、それは見た目だけでなく人間の活動様式の中に当たり前をデザインしていくデザイン力が大きいと思っています。そこで、そのテクノロジー×デザインで新しいことができるのではないかとメンバーで考えたのが最初のきっかけでした」(イノラボ藤木氏)

ISIDオープンイノベーションラボ藤木氏

 今回のアイデアソンは、フードロスに関する専門的知識を取り入れるために、すてるデザインプロジェクトとの共同で運営されており、プロジェクトでメンターやアドバイザーを務めていたフードエコロジーセンターの高橋巧一CEOの他、廃棄物や食品ロスの研究を進められている大正大学の岡山朋子教授、帝京大学の渡辺浩平教授が事前レクチャーや当日の講評を担当した。

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