新たな材料開発とビジネスモデルの創出を狙った住友ゴム
住友ゴム工業は、早いタイミングで富岳を利用した企業の1社だ。
自動車用タイヤ向け材料の研究や実験計測などに富岳を活用。分子運動に加えて化学変化まで表現できるゴム材料のシミュレーションを行なった。
ここでは、市場のデータや計測データを同化させた計算技術や、マルチスケールシミュレーション研究にも取り組んだという。
具体的には、市場でタイヤがどんな使われ方をしているのかといったことを、材料の計測データと同化させながら、新材料の開発につながったり、既存材料のポテンシャルの向上につなげたりといった成果を見込んでいる。
実は、タイヤがガソリン車の燃費に与える影響は20%と高く、さらに、EVでは40%に高まるという。つまり、EV全体の高効率なエネルギー対策のためにも、タイヤの材料開発はますます重要になるというわけだ。
タイヤからセンシングすることで得られる空気圧情報や摩耗グリップ情報、路面情報などから、ビッグデータ解析を行なうことにより、エネルギーの高効率化を図ったり、サブスクリプションモデルによるタイヤのメンテナンスフリー化といった新たなビジネスモデルの創出、危険予知や回避といった安全性の高度化などにもつなげる考えも示す。
社内で利用しているスーパーコンピュータでは実現できない計算を、富岳を活用してカバーし、新たな材料開発とビジネスモデルの創出に生かそうとしている。
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