第3回 大河原克行の「2020年代の次世代コンピューティング最前線」

日本のスパコンを支える「八ヶ岳」とは

文●大河原克行

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利用者からのさらなる大規模計算や大容量計算への強いニーズ

 先に触れた「産業利用の広場」では、スーパーコンピュータを活用し研究開発を加速したい企業を対象に、HPCIの利用事例や利用成果、利用方法などを紹介。産業利用支援として、HPCIを利用する方法などを、ニーズに対応する形で無償で支援する仕組みを用意。利用経験が少ない企業に対しては、HPCIの利用前の段階から、相談対応や支援を行い、利用経験が豊富で高いスキルを有する企業には、より効率的で、高速に計算する方法などを提案しているという。

 産業利用の募集は、富岳では秋(A期)と春(B期)の2回。第二階層のスパコン群では秋(A期)にだけ募集が行われる。

 富岳の定期募集では、「一般課題」、「産業課題」、「若手課題」があり、一般課題では、国が重点的に推進すべき課題を優先的に採択する制度も用意。2021年度は、感染症対策に資する研究開発と、次世代コンピューティングに資する基盤研究開発がそれに該当している。

 また、随時募集も行われており、ここでは少量の計算資源を利用可能であり、比較的短期間の審査で利用が可能になる。機動的課題、試行課題、有償課題なども募集。応募はいつでも行える。

 2021年秋(A期)の募集では、応募総数は149件となり、前回A期の142件から増加。そのうち、富岳には83件の応募があり、19件も増加した。また、第二階層スパコンには、66件の応募があったという。

 なお、今回の募集では、利用者からのさらなる大規模計算や大容量計算への強いニーズがあったことから、富岳の一般課題において利用できる資源量の上限を、年間2000万NHに倍増。これに伴い富岳全体の要求資源量は前年度A期に比べて約2.1倍に増加。1課題あたりの要求資源量も約1.6倍に増加したという。

 さらに、2022年1月27日からは、より簡単な申請で富岳を活用できる新たな仕組みとして、試行課題(ファーストタッチオプション)」を追加した。1000ノード時間以下の計算資源量で、試行課題を申請する際に、課題申請書を作成、提出する必要がなく、利用報告書の様式も簡易版にしている。

 「最短1週間で利用を開始でき、アプリケーションソフトウェアの動作確認や性能確認、お試し計算などが行える。富岳の利用において、感触をつかんだ利用者が、より本格的な利用に進むことも期待される」としている。

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