第1回 大河原克行の「2020年代の次世代コンピューティング最前線」

スパコン富岳が4期連続4冠を獲得した意義とは

文●大河原克行 編集●ASCII

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パワポも動かせるArmのアーキテクチャー採用

 富岳は、2019年8月に運用を停止したスパコン「京」の後継機として、2014年から文部科学省の「フラグシップ2020プロジェクト」によって、総開発費1300億円をかけて開発が進められた。

 開発には富士通が全面的に協力。ハードウェアの開発は富士通川崎工場で行ない、ソフトウェア開発は富士通沼津工場および川崎工場が担当。システム評価は富士通沼津工場で行なわれ、生産は石川県かほく市の富士通ITプロダクツで行なわれた。

 2019年12月から出荷を開始し、兵庫県神戸市の理化学研究所計算科学研究センターに搬入。2020年5月にすべての筐体の搬入を終了。2021年3月9日から共用を開始している。

 432筐体15万8976ノードで構成しているほか、すべての機能をワンチップに集約しており、CPUピーク性能は京の24倍となる3TFLOPS、メモリバンド幅は京の16倍となる1,024GB/sを実現している。富岳1台で、スマホ2000万台分の性能に匹敵するという。

 富岳では、心臓部となるCPUに、Armのアーキテクチャーを採用した。これが汎用性を高めることにつながっている。

 Armは、スマートフォンやゲーム機、組み込みシステムなどに採用されているCPUであり、富岳では、Armのv8-A命令セットアーキテクチャーをスパコン向けに拡張した「SVE(Scalable Vector Extension)」を使用。「A64FX」と呼ばれる新たなチップを開発した。ここでは、富士通が蓄積してきた60年以上に渡る半導体技術を活用。そして、台湾の半導体企業TSMCが持つ最先端技術を用い、7nm FinFETプロセスで生産している。

 松岡センター長は、「圧倒的に性能が高く、圧倒的に消費電力が低く、そして汎用性があるCPUを開発できたことは、日本の技術力を示すことにつながった。CPU開発で後塵を拝してきた日本の半導体産業の復興」とも胸を張る。

 従来の京ではCPUにSPRACが採用されていたが、2010年以降、利用できるツールが減少しており、汎用性に限界があると判断。そこでArmの採用に踏み切ったという。

 「Armであれば、極端な話、PowerPointも動作させることができる。ハードウェアが完成しても、アプリケーションの開発に3年も、4年もかけて、ようやく使えるというものでは意味がない」(松岡センター長)

 本稼働前の富岳で新型コロナウイルス対策の飛沫シミュレーションを実施できたのも、様々なアプリを動作させられる汎用性の高さが生きた。

 また、開発の途中では、京にはなかったAIやクラウドへの対応といった点でも変更を加えているが、ここにもArmならではの汎用性が活かされている。

「検討段階では、AIがいまのような大きな流れにはなっていなかった。また、Society 5.0という考え方もなかった。だが、AIは欠かせない要素だと考え、AIに適用できるように富岳に機能を追加した」という。

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