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大きく変化する働き方に対応したIT管理プラットフォーム「Ivanti Neurons」を構築、その狙いと未来像

Ivanti=(LANDesk+MobileIron+Pulse Secure)×αが目指す世界

2022年01月18日 08時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp 写真● 永山亘

提供: Ivanti Software

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 世界で4万5000社以上の顧客と2000社以上のパートナーを持ち、5300万台以上のPC/モバイルデバイスに管理ソリューションを提供する「Ivanti(イヴァンティ)」というITベンダーがある。ご存じだろうか。

 ――聞き覚えがない、と思われた方もいるかもしれない。だが「LANDesk」「MobileIron」「Pulse Secure」といったブランド名ならばご存じの方は多いのではないだろうか。Ivantiはこうした企業向けITのブランドが統合されて生まれた企業だ。

 そのIvantiは現在「Everywhere Workplaceの実現」(場所にとらわれない働き方)という新たなビジョンを掲げ、「Ivanti Neurons」という新たなクラウドプラットフォームも携えながら、PC/モバイルを包括するエンドポイントデバイスの検出、管理、保護、サービスの幅広いソリューションを展開している。

 Ivantiはこうしたビジョンのもとで何を実現し、顧客にどのような価値を提供しようとしているのか。Ivanti Software日本法人の米村雄介氏、鳥羽昭一氏に話を聞いた。まずは今回の記事を通じて「Ivantiとは何者なのか」をご理解いただけたら幸いだ。

IvantiはPC/モバイルのエンドポイント管理、サービス管理、ゼロトラストセキュリティのソリューションを提供するユニークなベンダーだ

Ivanti Software テクニカルセールスエンジニアの米村雄介氏(右)、マーケティングマネージャーの鳥羽昭一氏(左)

各領域のトップベンダーが統合して生まれたIvanti

 Ivantiは2017年、LANDesk Softwareの社名変更によって誕生した。LANDeskは企業のクライアントPCを対象としたIT資産管理、ITサービス管理のソリューションを提供してきた、1985年創立の老舗企業だ。

 そのIvantiが2020年に相次いで買収/統合したのが、MobileIronとPulse Secureである。MobileIronはMDM/EMM(モバイルデバイス管理)市場で、Pulse SecureはSSL-VPN/セキュアリモートアクセス市場で、それぞれソリューションを提供してきた。

 こうした背景を持つため、Ivantiの実績や市場評価はすでに高い。冒頭で述べたとおり顧客数は現在4万5000社以上、管理デバイス数は5300万台以上に及ぶ。IDCやガートナー、Forresterといった調査会社によるレポートでも、IvantiはITSMツール、UEM(ユニファイドエンドポイント管理)、ゼロトラストセキュリティの各領域でトップクラスの評価を受けている。

 日本市場でよく知られた上記3ブランドのほかにも、Ivantiは数多くのソフトウェアベンダーを戦略的に買収/統合してきた。たとえば直近の2021年にも、IT資産/サービス管理のCherwell Software、パッチ管理のRiskSenseを買収しており、提供する機能とソリューションのさらなる拡充を続けている。この勢いは今後も続きそうだ。

Ivantiの沿革。LANDesk時代の2012年から12社を買収/統合して現在のかたちになった

「働き方が変わったのに、IT管理は変わっていない」現状を変えたい

 こうしたテクノロジーの統合によって、Ivantiは何を目指しているのだろうか。その答えとなるのが、先ほど触れた「Everywhere Workplace」というビジョンだ。エンドポイント管理、サービス管理、ゼロトラストセキュリティという3領域のソリューションを統合的に提供することで、企業における「場所にとらわれない働き方の実現」を支援する――。これがIvantiの目標である。

 「その背景には、長く続くコロナ禍で変化した働き方と、そこで浮き彫りとなったIT管理の課題があります」と米村氏は指摘する。あらゆる企業でリモートワークが推奨されるようになり、その実現にはモバイルPC/デバイスの活用が欠かせないことも明白となった。しかしこれまでのIT管理は、大半の従業員が長期間、オフィスの外で働くような事態は前提としていなかった。

 「たとえば従業員の業務PCにセキュリティパッチを当てなければならない、しかし従業員はリモートワークで長期間オフィスに出勤せず、パッチを当てる機会がない。そういった問題がいたるところで起きました」(米村氏)

 浮き彫りとなった問題は、もちろんパッチ管理だけではない。リモートで働く従業員に対するITサービスをどう提供/管理するのか、業務PCやソフトウェアの配布とプロビジョニングをどう実施するのか、従業員が自宅ネットワークを利用するうえでその通信品質やセキュリティをどう担保するのか、BYODをどうセキュアに実現するのかなど、IT運用には幅広い問題が生じている。

 IT部門自身が抱える課題もある。IT人材不足の傾向はコロナ禍以前から継続しており、DXのような新たなITの取り組みを進めるためにも従来型業務の負担軽減、サービスデスクの効率化やIT管理の省力化は避けて通れない課題となっている。また、特定の担当者しかITに触れない、管理作業ができないという属人化も解決しなければならない問題だろう。

 鳥羽氏は、こうした数々の問題の根幹には「働き方が変わったのに、IT管理は変わっていない」現状があると指摘する。ユーザーの働き方の変化に合わせて企業のIT管理も変わらなければならない。IT管理の現状を変え、企業やIT管理者に対するサポートを通じて新しい働き方を提案していく。それがIvantiの目指すものだ。

クラウドプラットフォーム「Ivanti Neurons」が実現するもの

 こうした目標を具現化していくものが、新たなクラウドプラットフォーム「Ivanti Neurons」である。

Neuronsは、検出、管理、保護、サービスの非常に幅広い機能/ソリューション群を提供する基盤をなすプラットフォームとなる

 Neuronsはユーザーがどこで働いていても、どんなデバイスを使っていてもIT管理を可能にするクラウドプラットフォームだ。この単一のプラットフォームをベースとして、エンドポイントデバイスの検出から修復、管理、保護(セキュリティ)、サービスを実現するソリューション群が構築されていく。IT管理分野では、たとえば以下のようなソリューションが提供されている。

●Ivanti Neurons for Discovery … IT資産管理担当者向けに、組織内にあるデバイスすべてを可視化し、管理可能にするソリューション。
●Ivanti Neurons Workspace … ヘルプデスク担当者向けに、リアルタイムデータに基づくデバイス、ユーザー、アプリケーション、サービスの全方向ビューやリモート管理機能を提供するソリューション。
●Ivanti Neurons for Healing … エンドポイントの標準構成からの逸脱、パフォーマンス、コンプライアンス、セキュリティに関する問題を自動的に検出、診断、修正するソリューション。
●Ivanti Neurons for Edge Intelligence … 組織内の全デバイスに対してリアルタイムでクエリを実行し、詳細情報を取得できるソリューション。GPS位置情報やPC接続時間(業務時間)などを取得し、従業員の働き方管理にも活用できる。
●Ivanti Neurons for Patch Intelligence … セキュリティ担当者向けに、脆弱性のリスク度に応じたパッチの優先順位付けを行い、どのアクションから始めるべきかを判断可能にするソリューション。
●Ivanti Neurons for Spend Intelligence … ソフトウェアライセンスやクラウド上のインスタンスなどを網羅的に管理し、コストを包括的に把握、管理するソリューション。
●Ivanti Neurons for Zero Trust Access … あらゆる場所にあるエンドポイントからのゼロトラストアクセスを可能にするソリューション。

Ivanti Neurons for Discoveryのスマートアドバイザー

Ivanti Neurons for Edge Intelligenceのマップ、Ivanti Neurons Workspaceのデバイス情報画面

 クラウド上にプラットフォームを構築することで、企業は必要なときに、必要なソリューションだけを利用することができる。また、エージェントをインストールしたエンドポイントが社内外のどこにあっても常に情報を収集し、リアルタイムに管理できるようになるのはもちろんだ。ただし、Neuronsを新たに構築した狙いはそれだけではないと、米村氏は説明する。

 「IvantiではNeuronsを『ハイパーオートメーションプラットフォーム』と呼んでいます。直訳すれば“超自動化”ですが、要はこれまでにない高度なIT管理の自動化を、このプラットフォームを通じて推進していくという考えです」(米村氏)

 Ivantiは、Neuronsを通じて「自己修復(Self-Heal)」「自己保護(Self-Secure)」「セルフサービス(Self-Service)」の3点が実現するとうたっている。管理者に何か作業をさせるのではなく、可能であればNeurons自身で検出や診断、さらに修正までを自動実行する。またエンドユーザーからのITサービスのリクエストも、セルフサービス型でチケットが発行されれば、ワークフローに基づいて自動的に処理が進む。そういったビジョンだ。

 「たとえばIvanti Neurons for Healingでは、エンドポイントにインストールしたエージェントが情報収集や通知だけでなく『アクション』も行います。何か異常を発見したらアラートを出すだけでなく、ワークフローに基づいて修復作業を自動実行してくれるのです。たいていユーザーが異常に気づくのは大きなトラブルになってからですが、Neuronsならばその前の段階で自動修復してくれるため、業務への影響も抑えられます」(米村氏)

 ちなみに、NeuronsのワークフローはGUIを使ってノーコードで作成することが可能だ。標準テンプレートも多数用意されているので誰でも簡単に作成/編集することができ、それにより特定の担当者への属人化も防げる仕組みである。

Ivanti Neurons for Healingのワークフロー作成画面

 また鳥羽氏は、ユーザー自身がセルフサービス型でIT管理を進められる仕組みは、“問題の自己解決”を好むZ世代従業員の働き方にも適しているのではないかと語る。それに加えて、ソリューションへのAI/機械学習技術の組み込みも進むはずだ。

 「Neuronsプラットフォームの基本はIT運用管理であり、デバイスからの詳細な情報の収集と可視化を通じて管理者が現状把握できるようにすることです。ただし、その膨大なデータにAI/機械学習を適用してNeurons自身が考える、判断する機能も徐々に増えており、今後はさらに“ハイパーオートメーション”の割合が高まっていきます」(鳥羽氏)

NeuronsソリューションはIT管理以外にも拡大していく

 Ivantiは今後、どのようにNeuronsを進化させていくのか。

 まず、オンプレミス環境を管理しているIvanti(LANDesk)など、既存製品との連携はすでに始まっている。豊富な機能と実績を持つ既存製品も引き続き進化をさせつつ、Neuronsとの連携を進め、Neuronsのクラウドプラットフォーム経由でオンプレミス環境の状況も包括的に可視化し、オンプレミス/クラウドの両環境で高度な自動化を進める――そうした将来像が考えられる。

 さらに米村氏は、今後はIT部門の運用管理業務に限らず、そのほかの部署の業務も支援するソリューションや機能も増えていくだろうと語る。たとえばNeuronsではすでに人事部門(HR)向けや施設管理部門向け、プロジェクトポートフォリオ管理(PPM)向けといったソリューションが提供されている。Neuronsをハイパーオートメーションプラットフォームとして活用し、自動化や効率化が図れる業務は企業の中に数多く眠っているはずだ。

 「デバイス管理という視点から“ユーザー管理”の視点へと変化しつつあると感じています。Neuronsプラットフォームをベースとした、ユーザーの働き方によりフォーカスしたソリューション提供もこれからさらに拡大していくでしょう」(米村氏)

 鳥羽氏はEverywhere Workplaceというビジョンに立ち返り、ユーザー視点でIT管理を考え直すことの重要性をあらためて指摘した。

 「そもそも企業ITは『人が働きやすくなるため』にあるものです。実際にITが急速に進歩して従業員の働き方を大きく変えましたが、IT管理はそれに追いついていない。Ivantiは各領域でのトップベンダーを買収し、その製品やテクノロジーをNeuronsプラットフォームでつなげて、IT管理の現状を変えていきます」(鳥羽氏)

 長い歴史と高い実績を持ちながらも、変化する時代の動きに応じて大きく舵を切ったIvanti。統合型のクラウドプラットフォームを構築することで、変化に対して迅速かつ柔軟に呼応する力を持とうとしている。そこにあるのは、IT管理の「あるべき姿」を更新し続けていくという意志だろう。Ivanti Neuronsプラットフォームの今後の動向に注目したい。

(提供:Ivanti Software)

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