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JOIC オープンイノベーション名鑑 第5回

出光興産 モビリティ戦略室 次長 福地竹虎氏×スマートドライブ 代表取締役 北川烈氏

超小型EV×走行データ解析、出光興産とスマートドライブが二人三脚で進める新たなモビリティ社会の実現

2022年01月14日 08時00分更新

文● 小池晃臣 聞き手・編集●北島幹雄/ASCII STARTUP 撮影●曽根田元

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 この記事は、民間事業者の「オープンイノベーション」の取り組みを推進する、オープンイノベーション・ベンチャー創造協議会(JOIC)との連動企画です。

 従来、自動車は「所有」する移動手段だった。それを、ICTを活用して他のさまざまな移動サービスと統合し、1つのサービスとして「利用」するという新しいモビリティの概念「MaaS(Mobility as a Service)」が、カーボン・ニュートラルが提唱される今日の世界において注目を集めている。そうしたなか、日本の代表的な石油元売の1つである出光興産は、超小型EVを活用したカーシェアリングというMaaS事業の実現に向けて、“モビリティ×ICT”を専門とするスタートアップ企業のスマートドライブと連携した。この連携では、出光興産が2019年8月より岐阜県飛騨市・高山市、2020年4月より千葉県館山市などで展開している超小型EVを活用したカーシェアリングの実証実験において、走行データの収集・解析に、スマートドライブが提供する「Mobility Data Platform」を利用している。

 EVによるモビリティー新規事業の経緯と将来について、スマートドライブ 代表取締役 北川烈氏、出光興産 モビリティ戦略室 次長 福地竹虎氏に話を聞いた。(以下、文中敬称略)

ハードウェア×ソフトウェア相乗効果発揮型 社会課題を解決する新たなサービスの創出

実施内容の要約 地域における超小型EVの実証実験(出光興産)
走行に関するデータの収集・解析(スマートドライブ)
関わり方や提供物 個人・自治体・法人向けの超小型EVやサービス開発、ならびに施策展開・メンテナンス基地となる特約販売店ネットワークの活用(出光興産)
データ分析・UX・アプリケーション(スマートドライブ)
求める成果・ゴール 脱炭素社会という文脈からの石油元売としての新たなモビリティを通じた貢献・超小型EV、サービス展開による地域の移動課題の解決(出光興産)
EVに関連する走行データの収集・解析の実ビジネス展開(スマートドライブ)
将来 モビリティ事業の展開(出光興産)
走行ビッグデータの収集・解析による社会貢献(スマートドライブ)

株式会社スマートドライブ 代表取締役
北川烈 氏
慶応大学在籍時から国内ベンチャーでインターンを経験し、複数の新規事業立ち上げを経験。その後、1年間米国に留学しエンジニアリングを学んだ後、東京大学大学院に進学し移動体のデータ分析を研究。その中で今後自動車のデータ活用、EV、自動運転技術が今後の移動を大きく変えていくことに感銘を受け、在学中にSmartDriveを創業し代表取締役に就任。

出光興産株式会社 モビリティ戦略室 次長
福地竹虎 氏
1964年東京都生まれ。学生時代より様々なレースに参戦、現在も自動車、バイクが趣味。1987年出光興産入社後、主に自動車周辺ビジネスに従事。自動車整備機器開発やモータースポーツPJに参画し、リテールからレース分野に至るまで広く知見を持つ。2018年より新規事業分野でMaaS関連ビジネス(超小型EV)を立ち上げ、モビリティ
サービスの開発を担当。2021年に同社に設立されたモビリティ戦略室にて現職。

将来のモビリティとの“相性”を模索するなか、超小型EV事業参入へ

──まず始めに、出光興産としてEV事業に乗り出したきっかけを教えてください。

福地 もともと、新たな時代のモビリティが、我々のような石油元売にとってどのような相性をもって関係性を築けるのかといった見地から、EVに限らずさまざまなリサーチや検証を行っていました。実は日本というのは、かつて量産型EVの発売は世界初だったのです。しかしながら、東日本大震災を受けて、この流れは一旦大きく後退してしまいました。

 とはいえ、社会がEVを受け入れるポテンシャルは潜在的に高いはずです。そこで、一つの方向性を見出すべく、2018年6月にEVプロジェクトを当初は部室を横断する形でスタートしたのです。ちょうど同じ年に規制緩和が行われ、自治体や自動車メーカー以外でも超小型EVの公道走行申請ができるようになったのを受け、非自治体や非自動車メーカーとして初めて、岐阜県高山市、飛騨市にて超小型EVを活用した実証実験の申請を行い、2019年8月より開始しました。

出光興産が実証実験を行っている超小型EV

──そうしたなか、スマートドライブとの協業はどのようにしてスタートしたのでしょうか。

福地 かねてから当社は、KDDIさんが主催する事業共創プラットフォーム「KDDI ∞ Labo(ムゲンラボ)」の主旨に賛同する大企業群である「パートナー連合」に参加していました。2020年2月、当社のオープンイノベーション担当者から、超小型EVをより効果的に活用できるパートナー企業があるという提案がありました。その企業こそがスマートドライブさんだったのです。

 その後2020年4月にスタートした千葉県館山市での実証実験では、当社関連会社が提供する太陽電池や、無接触で給電するカーポートを活用した実証も展開しています。この実証実験は、出光興産の特約販売店ネットワークを活用した地域サービス提供という観点から、当社が調達する超小型EVを特約販売店に貸与し、MaaS実現に向けて検証するというものです。

 当社としては、まだまだ世間に広まっていなかった超小型EVという新しいモビリティが、法人ならびに個人にどう受け入れられるかを、実証実験を通じて把握しようとしていました。車両の稼働率や利用者データのほか、お客様からの感想、意見を集めていましたが、もう少し違った切り口があってもいいのではないかと思案していたのです。そこでスマートドライブさんに相談したところ、我々では考えられなかったようなさまざまな提案をもらいました。こうして最初に知ってから1カ月後には、スマートドライブさんが我々のプロジェクトに参加してくれることになったのです。

──スマートドライブの成り立ちや事業について簡単に紹介してください。

北川 私自身の大学院時代の研究テーマでもあった、“社会課題の解決に移動・交通データをいかに活用できるのか”にフォーカスして、2013年に創業しました。以来、「移動の進化を後押しする」をビジョンとし、移動に関するさまざまなセンサーデバイスを通じて収集・解析されたビッグデータを活用して、IoT時代の新たな移動にまつわるサービスを提供しています。その要とも言える、走行データの収集・解析を行う「Mobility Data Platform」は、これまでも幅広い業種業態の企業と数々の実証実験を行い、新しいサービスの創出を目指した協業を行ってきました。

 当社の事業としては大きく2つあります。まず1つは、営業や配送等に自動車を使う企業が、データ活用によって車両管理を簡易化・最適化したり、事故を減らしたりといったことに貢献するものです。そこではEVのデータも活用しながらSaaSとしてサービスを提供し、事業における課題解決を目指しています。

 もう1つは、出光興産さんや保険会社、自動車メーカーなど、パートナーと一緒に、車の利用における課題を共有し、我々の技術を提供しながら新しい付加価値を創出していくという事業です。そこでは当社だけでは考えられない、できないようなことまで、パートナーと一緒だからこそ可能となるような相乗効果を狙っています。

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