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昭和だったPTAに新しい風を吹き込んだ会長と導入担当に聞く

勝田台小学校PTAがLINE WORKSで成し遂げた改革とは?

2021年12月02日 11時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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 千葉県八千代市にある勝田台小学校のPTAに新しい風が吹き込んでいる。ビジネスチャット「LINE WORKS」の導入をきっかけに、学校に来ること前提だった情報共有が大きく変わった。勝田台小学校 PTA会長の齋藤雄大さんとLINE WORKS導入に携わった村上篤寛さんに話を聞いた。

勝田台小学校 PTA会長の齋藤雄大さん

昭和の名残が残るPTA 6年越しの改革

 学校と子供たちをサポートするPTA。しかし、PTAにネガティブなイメージを持つお父さん・お母さんは多いかもしれない。子供の入学とともに半強制的に組織に所属させられて会費を徴収され、親どうしで決められた仕事を押しつけあう4月。任期が終わるまで誰もが声を潜めて黙々と作業をするので、理不尽さを感じても組織は長らく変わらない。もちろん、健全に活動しているPTAもあるが、多くのPTAはやり方や考え方も古いままだ。

 齋藤雄大さんが昭和の名残が残るPTAを変えようと考えたのは、勝田台小学校PTA会長になった6年前にさかのぼる。「意見交換もなく、決まった話を伝えるだけの会議が年間で何回もありました。みなさん時間をとって学校に来ているのに、これはよくないと思いました」と齋藤さんは語る。子供の数が少なくなり、働いている保護者が増え、PTAを取り巻く環境は確かに激変している。

 同期のPTA本部メンバーが改革に前向きだったこともあり、2年目には会議の数を2/3まで削減できた。しかし、3年目に役割や作業が不明瞭だった各部会の作業の可視化に取り組んだものの、紙のノートに記載するところまでしか実現できなかった。「PCで資料を作るとか、クラウドでデータを残そうという話にならず、結局使えない人にあわせようという流れになるんです」と齋藤さんは振り返る。

 こうして改革は停滞してしまったが、その後、ITに強い新たなメンバーが入ったことで、PTA改革は大きくデジタル化に舵を切る。その中の1つがLINE WORKSの導入だ。

1人がスピード感を持って一気に変えるのは難しい

 LINE WORKSの導入に携わったIT企業勤務の村上篤寛さんは、現在小4と小1のお子さんが勝田台小学校に通っている。PTA本部に参加したのは今から3年前で、それまでは奥様がPTA活動に参加していたが、話を聞けば聞くほど、一人一役員というPTA活動のあり方に疑問を感じたという。「ベルマークや校内清掃、行事への協力、PTAバザー、広報誌の作成など先に仕事があって、それらを全員に担当してもらうまでが大変。特にリーダーは負担が大きいため、本来は他人には言わなくても良いような仕事や介護、育児などを理由になかなか手が挙がらない状態。おおよそネットで『PTA 闇』で調べると出てくるような話なのですが(笑)、さすがに在学中これがずっと続くのはしんどいなあと」。こう考えた村上さんは、PTA本部にジョインする。

 そんな村上さんがPTA本部にジョインして変えたいと考えたのが、紙を前提とした情報共有のやり方だ。「紙のノートでも残っていればよいですが、残っていない場合、1年ごとに刷新されるメンバーは人づてで作業内容を聞かなければならない。もちろん、父母への通達のためには、わざわざ学校に出向いて人数分のプリントを印刷する必要がありました。みなさん忙しいのに、これはなんとかしたいと思いました」(村上さん)。

 長年にわたりPTA改革に取り組んできた齋藤さん、ITに強い村上さんに加え、とにかく作業の速い副会長はじめ、他にも改革に賛同するメンバーが本部に揃ったことで勝田台小学校のPTA改革は大きくデジタルに舵を切った。「結論めいたことを言いますが、1人がスピード感をもって一気に変えようとしても難しい。賛同してくれる人たちを増やし、納得してもらう時間をある程度かける必要があると思います」(村上さん)。

 では、なぜLINE WORKSを選定したのか? 「一言で言えば、みんなが使っているLINEにインターフェイスが似ていて、かつLINEとは別のアカウントで情報共有ができるところです」と村上さんは語る。非営利団体向けの低廉なアカウントを用意しているサイボウズのkintoneも候補に挙がったが、PC操作が前提で画面が使い慣れないという点で利用を見送ったという。その点、直感的に操作できるLINE WORKSであれば、フリープランを利用することでコスト面でも導入のハードルが低くなる。

コロナ禍で加速したLINE WORKSの利用 「PTA版の情シス」も設置

 LINE WORKS導入を本格化したのは2019年。そのため、新型コロナウイルスが猛威を振るい始めた2020年度からは、LINE WORKSの利用をスタートすることができた。GoogleフォームでPTAメンバーのメールアドレスを収集して、LINE WORKSアカウントを登録した。「4月のPTA総会のときにはアカウントの登録は終わっていて、総会の文書もPDFで提供して、LINE WORKSのアンケート機能を使って承認をとるところまでできました」(村上さん)。

LINE WORKSでのグループトークのイメージ(PCの場合)。LINE WORKSのトークに備わっているノート機能を活用し、マニュアル等をストックしている

 コロナ禍の中、学校に来られない、情報共有が難しいといった中、LINE WORKSは大きな反発もなく受け入れられたという。PTAのためにプライベートのLINEアカウントを交換しなくて済むという点もメリットだった。2020年度は、本部以外のPTA活動がほぼストップしたため、活動再開後にゆるやかに使われるようになった。「コロナウイルスがなかったら、私は使いたくないという声がめちゃくちゃ出ていたと思います。でも、実際に会えないし、使ってみたら便利です。保護者だけでなく、子供向けの情報も流すので、使ってみませんか?とお願いしたので、前向きに使ってくれたというイメージです」と齋藤さんは振り返る。

 具体的にはどのように活用しているのだろうか? 勝田台小学校のPTAは大きく本部によるPTA全体の運営、会計、広報誌の作成といった主要業務のグループのほか、行事や図書室のサポート、学校の清掃や草むしり、児童の見守り、卒業記念品準備などのグループで構成されている。これらのグループごとにLINE WORKSのトークグループが作られ、資料の共有もLINE WORKS上で行なわれている。利用に際してはマニュアルも用意され、情シスにあたるLINE WORKS運用サポートのメンバーが使い方や活用の相談に乗っているという。

勝田台小のPTAの組織

 もちろん、リテラシや利用環境の問題もあった。LINE WORKSを使いたくないという人もいたし、前述の通り、学校でのIT導入はとかくリテラシの低い人に全体をあわせる傾向がある。約1万5500人の小学生がいる八千代市でアンケートをとったところ、そのうち1割は自宅にネット環境がなく、紙による伝達は続いているという。そのため勝田台小学校のPTAはLINE WORKSの利用を前提としつつも、メール、紙という3つの伝達手段を用意している。

 LINE WORKSの導入効果について村上さんは、「従来のやり方では参加できなかった人が参加できるようになったこと」と語る。前述したPTA総会も普段は委任状のみ提出する人が多く、参加者はあまりいなかった。しかし、LINE WORKSのアンケートを用いることで、参加しなかった層を掘り起こすことができたという。

 時間があれば活動したい気持ちがあっても、行くことができないだけで、活動が見えなくなり、そうすると自ずと参加しにくくなる。LINE WORKSを使うことで、そういったメンバーを置いてきぼりにすることなく、全員に情報を届けるプラットフォームとしても一役買っている。

PTA版のクラファン導入 クラスごとの役員決めを廃止

 PTAの改革はいまも続いている。たとえば、PTA活動費とは別に、PTAとして学校に寄付する支援品などを購入するための出資を会員から募る「勝小こどもみらい基金」を設立した。これはいわばPTA版のクラウドファウンディングで、リアル活動の代わりに、出資することでPTAの活動としてみなすようにしたわけだ。「大前提として、ヒマな時間がある人なんて居ない、という話を本部メンバーでしていました。フルタイムやパートタイムにかかわらず働いていたり、家事や介護や育児など個人ごとに事情はさまざまですが、各家庭内の負担も大きい中、PTA活動に協力したい気持ちはあるけど、時間を捻出できないという声に応えました。これも試行錯誤の1つですので、もちろんさまざまなな意見はありましたが、こういう仕組みはありがたいといろいろな方から言っていただけました」と村上さんは語る。

 2020年度に行なった議論を経て、2021年度からはクラス単位での役員決めを廃止し、仕事にあわせてオンデマンドに人材を調達することにしたという。手が挙らなかったらどうするのだろうかと心配になるが、LINE WORKS運用サポートを経由して、各グループに依頼が行くと、草むしりにしろ、図書室サポートにしろ、各メンバーから自主的に手が挙り、きちんと報告も挙ってくるという。「草むしりなんて期間は1週間くらいしかないし、正直どれくらいの方が参加していただけるのかな?と思っていたのですが、毎日誰かがきちんと作業して、報告をくれるんです」と村上さんは語る。

ノートの機能で草むしりを依頼。写真付きで報告を上げることで活動が見えるようにもなる

 PTAの活動に対しては、さまざまな意見があるが、学校や子供に協力したくないという人はあまりいない。「今までPTAのための仕事だったので、やらされ感がむちゃくちゃあったと思うんです。でも、PTAって本来は学校が困っていることをサポートする役割のはず。だから、PTAはあくまでハブとなって、学校が困っていること、子供のためになることをお手伝いしてもらえませんか?とお願いすると、みなさん自主的にやってくれるんですよ」と齋藤さんは語る。

意義のあるPTA活動を理解してもらうために

 LINE WORKSの導入を含めたPTA改革の活動自体は、今後勝田台小学校のみならず、八千代市の小学校全体に波及させていく予定で、すでに千葉県のPTA協議会にも試験導入しているという。「1つの学校単位ではなく、市や県のレベルで試して、トライ&エラーをしながら、PTAで有効活用していこうと思っています」(齋藤さん)

 いまPTAで重要なのは情報共有で、そのためのツールがLINE WORKSだ。「PTA活動をちゃんとやってみたら、子供のためにもなるし、地域でのつながりもできるし、先生や学校がどんな活動をしているのか、保護者の目線で見られる。PTAが意義のある活動だと思ってもらうためのツールとしてLINE WORKSが活きてくるといいなと。そのための活動の一環として、地元の企業の協賛を募った情報誌を八千代市のPTAとして作成し、保護者に配布し、その中でLINE WORKSの導入もアピールするようにしました」(齋藤さん)。齋藤さんは八千代市のPTA連絡協議会の会長、千葉県PTA連絡協議会の副会長を務めていることもあり、講演などでアピールしていきたいという。

 一方、村上さんは「勝田台小だけで手一杯(笑)」と語るが、「結局LINE WORKS自体はあくまでツール。入れればすべてが解決するわけではないので、今なにに困っているのか、やりたいことをきちんと整理することが重要だと思います」とアドバイス。数多くの議論を積み重ねて作った仕組みや組織の目指すべき姿が先にあり、手段としてLINE WORKSを使いこなしているのが印象的だった。
 

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