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Datadog Japanが新製品/事業方針説明会を実施、「ランド&エクスパンド」戦略も紹介

オブザーバビリティ市場は“グリーンフィールド”、Datadog

2021年12月01日 07時00分更新

文● 五味明子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 Datadog Japanは11月19日、本社COOのアダム・ブリッツァー氏による事業方針説明、および2021年10月に開催された年次カンファレンス「Dash 2021」で発表された新製品の説明を報道関係者向けに行った。

 6カ月前にSalesfoce.comからDatadogにジョインしたというブリッツァー氏は「Datadoは創業してから10年、IPOを果たしてから2年が経つが順調に成長してきている。だがオブザーバビリティ市場は“グリーンフィールド”であり、まだまだ多くのオポチュニティが拡がっている世界。企業に残るDev(開発)とOps(運用)の壁を外しながら、ユニファイドオブザーバビリティのベンダとしてラインナップを増やしていきたい」と語り、市場そのものの拡大を図りながら、オブザーバビリティのリーディングカンパニーとして成長していく姿勢を示している。

エンタープライズITの世界で始まっている2つの大きな変化「デジタルトランスフォーメーション」と「クラウドマイグレーション」にオブザーバビリティは深くコミットする

Datadog COOのアダム・ブリッツァー(Adam Blitzer)氏、Datadog Japan カントリーマネージャー 国本明善氏

「ランド&エクスパンド」戦略による市場優位性とは

 ブリッツァー氏はエンタープライズITの世界で起こっている劇的なトランジション(変化)として「デジタルトランスフォーメーション」と「クラウド移行」を挙げ、この2つのトレンドにより企業と社会の急速なデジタル化が進む一方で、増え続けるテクノロジが複雑性を高め、組織のサイロ化を加速させていると指摘する。そして、この複雑性の問題を解決することが「Datadogのミッション」だと強調する。

 「すべての企業が“デジタルカンパニー”として活動するようになり、導入するテクノロジの数が劇的に増え、ソフトウェアやインフラがどのように連携しているのかがわかりにくくなってしまった。Datadogのオブザーバビリティ製品は、リアルタイムな可視化を実現することで問題解決に貢献する。また、テクノロジをつなぐだけではなく、チーム間をつなぎ、必要な情報の共有を進めることができるのもDatadogの強み」(ブリッツァー氏)

デジタル化によって加速する複雑性を解決するのがDatadogのミッション

 Gartnerの調査によれば、2021年時点でのオブザーバビリティ市場の規模はグローバルで380億ドル(約4兆3400億円)だが、2025年には530億ドル(約6兆540億円)まで拡大する見込みだという。市場が拡大すればプレーヤーとなる競合も自然に増えることになるが、ブリッツァー氏はDatadogの場合、「ランド&エクスパンド(Land & Expand)」という戦略を取ることで、オブザーバビリティ市場で強い優位性を確立できていると語る。

 これは市場に参入、つまり“上陸(ランディング)”するにあたっては無料トライアルや容易な導入、短期間での価値提供など、顧客が小さな成功体験を積み重ねられるよう支援し、Datadogの価値を理解してもらいながら、その後の無理のない利用拡大(エクスパンド)につなげていくというものだ。Datadogはこのランド&エクスパンド戦略により、過去16四半期のすべてにおいて130%以上の売上継続率を達成しており、加えて顧客企業の業績拡大にも大きく貢献しているという。

 「Datadog製品を最初に1つだけ導入した小さな企業が、少しずつ導入製品の数を増やしていくうちに、その企業の売上も伸びていくというケースがとても多い。だから我々にとっては(大規模なエンタープライズだけでなく)売上規模が小さい顧客も最初から大事なクライアント」(ブリッツァー氏)

Datadogの市場拡大戦略「ランド・アンド・エクスパンド」は1つの製品導入を皮切りに、顧客のエクスペリエンスを向上させながら、無理なく利用拡大につなげていく

(左)現在はDatadogの大口顧客であるグローバルの某金融情報サービス企業は、Datadog製品の導入拡大とともに企業規模を大きくしている。企業の成長に寄り添いながら導入拡大を図るのが「ランド・アンド・エクスパンド」の特徴/(右)オブザーバビリティ製品を導入するのは先進的な大企業が多いが、Datadogは比較的小規模な顧客の数も多い

年次カンファレンスで発表された新製品/新機能を紹介

 ひとつの製品から別の製品につなげていくというランド&エクスパンド戦略を取りやすい理由には、Datadogの製品が基本的にワンプラットフォーム(ユニファイドプラットフォーム)を前提に構築されており、シンプルで機能的であり、“Dev(開発)とOps(運用)のサイロを壊す”という設計思想のもとで開発されていることが挙げられる。

 10月に開催されたDatadogの年次カンファレンス「Dash 2021」においても、シンプリシティの思想にもとづいたさまざまな新製品/新機能が発表されたが、その中でもとくに重要なアップデートについて、Datadog Japan カントリーマネージャー 国本明善氏が紹介している。

10月に行われたユーザカンファレンス「Dash」で発表されたおもなアップデート

・RUM(リアルユーザモニタリング) … 個々のユーザセッション(Web閲覧履歴)をビデオのように再現できる「セッションリプレイ」 / ユーザージャーニーにおける個々のステップを掘り下げて分析し、離脱の特定と最適化の判断を行う「ファネル分析」

・APM(アプリケーションパフォーマンスモニタリング) … データベース管理者に頼ることなくデータベースからダイレクトにクエリパフォーマンスメトリクスを収集/可視化し、問題のあるクエリを特定する「データベースモニタリング」

・ログ管理 … 15カ月間に渡ってログを検索可能な状態(ログウェアハウジング)で保持する「オンラインアーカイブ」(限定販売)

・開発者エクスペリエンス … GitHub Actions、GitLab、Jenkinsなど主要なCIプロバイダと連携、すべてのパイプライン/ビルド/ジョブを包括的に視覚化し、問題のあるパイプラインや壊れたテストなどを特定する「CI Visibility」

・クラウドセキュリティプラットフォーム … 2021年4月に買収したSqreenのRSAP(Runtime Appllication Self-Protection)技術を統合し、APMのトレースからコードレベルで脅威を特定する「Application Security」(プライベートベータ)

 これらのアップデートから見えてくるのは、ブリッツァー氏が強調していたように「テクノロジとチームを(シームレスに)つなぐ」ことに注力している点だろう。Datadogに限らず、オブザーバビリティベンダの多くはDevOps、とくに開発者サイドの負荷を軽減する機能を強化する傾向にあるが、Datadogも今回のアップデートにおいてアプリケーション開発者がログやトレースからボトルネックを特定しやすくする機能を多く追加している。

 国本氏は「日本の場合、エンジニアの70%がITベンダに在籍しており、ユーザ企業のエンジニアが少なく、それが内製化の妨げとなっている。内製化にコストがかかるとイノベーションは進まない」と語り、社内に優秀なエンジニアを抱えて内製化する動きを日本で推進していくためにも、オブザーバビリティベンダとして機能の継続的なアップデートにコミットしていく姿勢を明らかにしている。

「競合との争いよりも、いまはマーケット全体の成長の機会と捉え、オブザーバビリティ市場を拡大していくことに力を入れたい」というブリッツァー氏。今後は日本法人の採用拡大や人員増強も予定しており、日本企業のクラウドマイグレーションと内製化へのチャレンジを支援していくという。日本市場に“ランド”してから2年が経過したDatadogだが、グローバルの成長のスピードに遅れることなく、日本市場での“エクスパンド”に期待がかかる。

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