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2021年企業が求めるITエンジニアとは 第4回

企業の動向を知ることでエンジニアとして自分に合った活躍先が見えてくる

いま企業が求める「一緒に働きたいITエンジニア」とは?【2021年:企業の採用担当者インタビュー企画・第4弾】

2021年12月01日 19時00分更新

文● ASCII

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 DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進があらゆる業界や企業において、かつてないレベルで必要とされている2021年。これまでの業務や商習慣をデジタル化させていくという不可逆と言ってもいい流れが進行するなかで、同時に発生する問題が「人材の不足」である。本年ASCII編集部ではIT人材不足という日本社会共通の課題へ注目し、実際問題として企業がどういう人材を欲しているのかを記事として取り上げている。

【連載第1~3回はこちらから】https://ascii.jp/serialarticles/3000834/

 連載第4回として、企業各社のエンジニア職採用担当者へITエンジニア人材の採用について尋ねたインタビューレポートを今回お届けする。それぞれ異なる特徴や魅力を持つ各社の考えや姿勢を、ITスキルやエンジニア経験を生かした就職・転職を考える方には是非お読みいただき、ご自身に合った企業選びや将来設計に活用いただきたい。

株式会社ぐるなび:ユーザー目線を持って食文化へ貢献したいIT人材を全国から積極採用中

 ぐるなびは、飲食店情報サイトや飲食店等の経営に関わる各種業務支援サービスを提供する企業だ。「日本の食文化を守り育てる」という創業からつなぐ想いをもとに、「食でつなぐ。 人を満たす。」という新たな存在意義を掲げており、「食」というのは大きなキーワードとなっている。コロナ禍以降「食」は大きな影響を受けてきた市場のひとつだが、ユーザーの変化をうまくサービスに反映していくのはデジタルの得意なところで「今こそものづくりの力が必要だ」と人事担当の河合氏は言う。たとえば、最近リリースされた「ぐるなびFineOrder」では、店内において自分のスマートフォンで注文〜決済まで可能になっている。このような状況を背景として、エンジニアの採用意欲は非常に高まっているという。

株式会社ぐるなび 開発部門 企画開発統括室 リーダー・人事部 戦略グループの河合大輔氏

 求める人物像としては、新卒・中途ともに、ユーザー目線を持っていること、その上で事業・サービスへの理解があることだ。エンジニアリングというスペシャリティーだけではなく「事業の先にはユーザーが居る」ということへの意識があるかどうかを選考基準のひとつとして重視している。選考ではスキルテストは実施しておらず、面接で開発実績などのエピソードを深く尋ねるのだという。お客様とこんな対話をした、ユーザーが求めているものを開発することへやりがいを感じるようになったなど、志望者と話題をやり取りする過程を通じて、過去の開発のスキルそのものと、どういう考えで開発に取り組んでいたかなどを深く確認しながら選考を進めるとのこと。

 新卒採用では、文系理系問わず採用している。文系の学生でもプログラミングの経験がある学生を採用しているが、そのレベル感は、必ずしも1年以上やっていなければならないということではないのだそう。たとえ簡単なサイトを作ってみた程度の経験であっても、理念体系への共感の部分が非常にフィットしていれば、ポテンシャルという意味で採用するケースもあるとのことだ。中途採用では、サービス開発のエンジニアやインフラ周りのエンジニア、スマホアプリ開発エンジニア、データサイエンティストなど幅広く募集をしている。

 ぐるなびは現在、出社とリモートワークを併用するハイブリッドな働き方を採っている。課題となるコミュニケーションの部分をうまく解決しつつ、エンジニアにおいてはリモート中心の環境においても問題なくプロジェクトへの貢献や成果をあげることができる環境が整えられているため、今後もこの働き方を続ける方針だという。これに伴い遠隔地勤務制度も整備し、他にもさまざまな働き方について、企業として試しているところなのだそう。もちろん採用についても、新卒・中途ともに、全国どこでも問わずに募集をしている。

 「ユーザー目線を持って、自分の技術で食に関わる社会を良くしていく。ここに対して、やりがいを感じられそうだなという人は、絶対にぐるなびに合うと思うし、何より仕事が楽しいと思う」と河合氏は職場の魅力を語った。

グーグル日本法人:まず求人に応募してみることが全ての始まりになる

 Googleは、検索エンジンを中心に、インターネット関連のサービスや製品を提供する企業。その中で日本にも「検索」「Google マップ」「Chrome」などの開発拠点がある。

 新卒や中途といった枠組みを問わず採用面接では、4つの基準をベースに構造的に面接を実施。その基準とは「問題解決能力」「職種に関連した知識・スキル」「リーダーシップ」「グーグリネス(Googleyness)」の4つ。エンジニア採用においては、特に「職種に関連した知識・スキル」に重きを置いて選考しているのだそう。また、Googleにおける「リーダーシップ」とは、組織を率いたことがすべてではなく、自分の役割を認識して、それを適切なタイミングで遂行できるかどうかという意味合いの方が大きいという。言い換えると、例えば新卒で入った人に「チームをリードせよ」というようなリーダーシップは求めているわけではない。「適切に質問できること、コミュニケーションが取れることも、ひとつのリーダーシップだ」と、実際に面接経験もあるソフトウェアエンジニアの浜田氏は言う。そして「グーグリネス(Googleyness)」とは、Googleらしさということの意味で、たとえば、課題に直面したとき挑戦できるか、常に正しいことをできるか、コミュニケーションが取れるか、曖昧さを楽しめるかなど、Googleという環境の中でより効果的に働くためにあった方がいいとされる側面のことを指すのだそうだ。

グーグル日本法人 ソフトウェアエンジニアの浜田玲子氏

 エンジニアの採用面接は、特に技術力を確認するために、現場の社員が面接に入って4~5名で行う。コーディング面接では、一問一答式ではなく、面接官と候補者が議論をして、課題を解決していくところを大事に見ているという。少し難しめの問題を出題するとのことだが、それが解けるということ自体はあまり重要ではなく、面接官とやり取りをして、一緒に解決策を探していくことができるのが非常に重要だと浜田氏は言う。論理的に議論できる人が一緒に働きたい人とのことだ。

 現場のニーズに合わせて必要な人材を適宜募集しているので、採用する際には、どういう職種で、どういうチームで、どういう仕事をするのかが、かなり明確に定まっている。つまり、採用において大切なところはマッチングになる。今このタイミングでのGoogleが求めている人材が明確にあり、それに候補者がマッチするかどうかということだ。たとえば、3年後、5年後は、Googleも違うし、候補者もスキルが変わっているはず。Googleは上限なく何度でも応募できる。そういった意味で「まず応募することで、お互い学ぶことがたくさんあるはず」と人事部の玉木氏は語る。自信を持ってぜひチャレンジしてみてほしいとのことだ。

グーグル日本法人 人事部採用チームマネージャーの玉木尚宏氏

 なおGoogleでは、情報科学領域でマジョリティーではない人たちをサポートするステップインターンシップというプログラムを実施している。世界的に実施されているが、日本ではより女性のサポートに力を入れているとのこと。多様性が増えていくことが日本の底上げにも繋がってくると強く信じて、こういったプログラムを展開しているのだそうだ。

日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ株式会社(日本TCS):国境を越えて自らの力を活かし、成長できるチャンスが社内に溢れている

 日本TCSは、コンサルティングやシステムの開発、インフラの導入やその後の運用も含めて、ITサービス全般を日本企業の顧客に提供している。現在、約3000名の社員がいるが、そのうちの約700名は、インドを中心としたTCSグローバルから日本に出向しているエクスパッツ(駐在スタッフ)だ。その他にもビジネスパートナーと呼ばれる技術者が約1300名、さらに、インドには約4000名のオフショアメンバーがいる。日本でも3分の1はインド人のメンバーであり、オフショアメンバーもいるため、出身国籍に関係なく一緒にプロジェクトを推進していくのが大きな特徴。そのため、ダイバーシティに適応できる人材を強く求めているという。

 積極的に採用を進めているのは新卒と、中堅クラスの経験者。新卒採用については、今年度入社に対して、来年はその倍、再来年もさらに積極的に採用していくと、最高人事責任者 (CHRO) を務める谷村氏は語る。

日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ株式会社 副社長 最高人事責任者(CHRO) 兼 最高コンプライアンス責任者(CCO)の谷村佳幸氏

 中途採用については、4つの観点で採用しているとのこと。1点目は、プロジェクトの要件やニーズに応じた採用で、求めるスキルや経験が明確に定められたポジション。2点目は「プロアクティブ・ハイアリング」と呼び、現在進行中のプロジェクトがなくても、今後、戦略的に伸ばしていきたいサービスや技術領域にフォーカスして、プロアクティブ(先行投資的)に人材を探しに行くという採用。3点目は、エンタープライズアーキテクトのような、IT業界の中でも貴重な存在である人たちをキーポジションと称して、処遇面でも優遇して採用するもの。そして4点目は、会社側が求めるスキルや経験年数に多少満たなくともポテンシャル(成長可能性)で採用し、採用後に学習や実務経験を通じて育成するという、門戸を広げた採用だ。中でも4点目は最近かなり積極的に取り組んでいる採用活動とのことで、入社後の人材育成に特に力を入れているのだそうだ。

 新卒採用では社会人になって新たにITスキルをつければよいという考えで、専攻分野(理系文系)の区別をせずに人材を採用している。新卒の就活学生に向けて、メンバーが日本人、エクスパッツ、オフショア(TCSグローバル)というチーム体制でプロジェクトを実際に体験できるワークショップも開催。その中で、順応性やダイバーシティに柔軟に適応できているかなどを判断し、選考しているとのことだ。

 新卒・中途共に、英語力はあれば理想的としつつも、コミュニケーションスキルは言語運用能力だけでなく、それに加えて、さまざまな変化を受容できる状況対応能力を中心に面接で確認していると谷村氏は語る。入社後は、英語のトレーニングコースも用意され、インテンシブ(集中的)に学ぶことが可能で、一方、インド人スタッフには日本語のトレーニングも実施することで、互いに円滑なコミュニケーションが図るための学習環境を整えているとのこと。実際に日々英語に触れて、それが活用できる職場環境にいれば自ずとスキルは上がってくるので、選考への応募にあたって英語を「ハードル」として捉えないでほしいのだそう。たとえば、30代でキャリアチェンジを考える際に「いきなり外資系はハードルが高い」と選択肢から外しているような方でも、グローバルな職場環境に魅力を感じ、さらなる成長を目指したいなら、ぜひ日本TCSでチャレンジしてほしいという。

ソニーグローバルソリューションズ株式会社:ITエンジニアとしてソニーグループ全体へ横断的に関われることが魅力

 「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」ということをPurpose(存在意義)としているソニーグループにおいて、ソニーグローバルソリューションズはその情報システム部門という位置づけになっている企業。同社はソニーグループ全体の利益が最大化するように、ITの側面からグループ全体を支援していくという事業を担っている。ソニーグローバルソリューションズ自体の社員数は、現在600名程度だ。

 ここ数年の採用規模として、毎年20~25名程度の採用実績があるという新卒においては、エンジニア職一本で募集をしている。一方経験者採用は、通期で求人ベースでの採用活動を展開中。現在は求人ニーズが高まっている状況が続いており、IT人材のニーズは絶えないのだという。

ソニーグローバルソリューションズ株式会社 人事総務部 新卒採用担当の菅岡佑太氏(写真左)、新井奏恵氏(写真右)

 新卒採用では、理系文系を問わず、またIT経験の有無も問わず、広く募集している。ソニーグループは多様性を重視しており、違う個性と個性がぶつかりあって、新しいイノベーションが生まれるという考えがある。一人ひとりの個性を大事にしているので、そこを伸ばしてほしいという。また、セルフスターターであってほしいと採用担当の新井氏は言う。セルフスターターとは、自分の考えを持って、それを自ら率先して、周りを巻き込んで動けるような姿勢のことで、そこを評価するそうだ。未経験でも応募はできるが、入ってからのミスマッチを防ぐためにも、IT業界に興味を持って、ITエンジニアとしてどういったキャリアを積んでいきたいかのイメージは持っておいてほしいとのことだ。

 新卒や中途に関わらず、そして未経験や尖った専門性を持っているかに関わらず、大事なのは、ソニーの情報システム部門であるソニーグローバルソリューションズだからできることの中で、何をしたいのか。それがイメージできて、そこに魅力を感じられるかどうかだと、同じく採用担当の菅岡氏は言う。ソニーグローバルソリューションズでは、ソニーグループだからこそ、グローバルなフィールドや大規模プロジェクトの中心となって、情報システムの企画から実行まで一貫して推進していくことができる。また、最近特に力を入れているDXの領域では、たとえば、ソニーグループ全体で蓄積されたデータを一元管理して、各事業で利用できるようなプラットフォームの仕組みを構築するという活動をしている。このように、デジタルの視点からソニーグループ全体へ、横断的に関わることができるのも同社で働くことの魅力のひとつなのだという。

 ソニーグローバルソリューションズでは、従来の事業会社の情報システム部門のように、ビジネス側のニーズを聞いて対応していくという活動も大事にしている。しかし、それだけでなく、ソニーの事業の新しい価値創造に貢献できるように、こちらからIT戦略を考えて実行していく活動や、事業を跨いだグループシナジーを生み出す取り組みにも関わることができるとのこと。そういった中で、ソニーのビジネスを誰よりも理解し、提案型で伴走できる人材が求められていると菅岡氏は求める人物像について語った。

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