昨年はオンラインのみだったが、今年は実会場とハイブリッドで

FM802主催の、紀陽銀行 presents UNKNOWN ASIA 2021が盛況のうちに閉幕

文●玉置泰紀(LOVEWalker総編集長、UNKNOWN ASIA審査員)

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 FM802などの主催によるアートフェア「紀陽銀行 presents UNKNOWN ASIA 2021」(オンライン開催:10月9日・10日/実会場開催:10月16日・17日)は、10月17日、盛況のうちに閉幕した。UNKNOWN ASIAは、アーティスト主体の国際的なアートフェアとして2015年から開催し、今年で7回目の開催。昨年は世界的なコロナ禍の中、実会場でのアートフェア開催の見通しが立たず、オリジナルのオンラインアートフェアシステムを構築し、初のオンラインアートフェアを実施した。そして、2021年に入ってからも実行委員会のメンバーで議論を進め、最終的に、アーティストに機会を提供し続けることを念頭に、オンラインと実会場を組み合わせたハイブリッドアートフェアの開催になった。

グランフロント大阪北館、ナレッジキャピタル・コングレ・コンベンションセンターの実会場

 参加アーティスト数は130名、オンライン来場者数(アクセス訪問者数)は1万1925人、実会場来場者数(3日間通して)は7041人を記録し、2年ぶりの会場は、オンラインでなく、直に作品や作家と交流のできる喜びにあふれていた。

 審査には、総勢200名以上の審査員・レビュアーが携わり、オンラインの審査では日本に加えて、韓国、中国、タイ、マレーシア、インドネシア、そしてニューヨークからも参加。実会場では、リアルな審査が2年ぶりに戻ってきた。玉置は初回から審査員として参加、今年もオンラインとリアル両方で参加した。

 毎回、個人賞の選出を行なってきているが、今年の玉置泰紀賞は小田望楓さんに贈った。小田さんの作品は、本人の説明によると、「アクリル絵の具の色彩の濃淡とペインティングナイフのタッチや、混色による抽象的表現を掛け合わせることで、少女の流動的な心のゆらぎや私自身の色世界を表現しています」とのこと。原宿などに見られる日本的なカワイイ、商品やモードで消費される「少女」の本質、アウラ(微風、香り、光輝などを意味するラテン語だが、ヴァルター・ベンヤミンが複製技術、大量生産の時代の中に残る「もの」としている)を引き出しているように感じて、引き込まれた。

 小田さんは1997年、和歌山県生まれ。2020年、大阪芸術大学芸術計画学科卒業。

 小田さんの玉置賞受賞とUNKNOWN ASIAの感想は以下の通り。

「UNKNOWN ASIAには今回初めて出展しましたが、本当に沢山の方に作品を見ていただき、直接色々な意見や嬉しいお言葉を頂くことができすごく楽しい3日間となりました。作品や展示についての思いとして、少女の可愛さとテクスチャ感、色彩を重視していましたのと、様々なアーティストさんのブースがある中でどのようにしたら目を引く展示ができるかを考え、今回は私が一番好きな星と月のモチーフでF80号の大型の少女作品にチャレンジしました。また赤青黄色と目を引く作品を制作し、キャプション等も絵の具で手作りして可愛い少女と鮮やかな色彩で癒される空間に仕上げました。

 また、今回、審査員賞として玉置泰紀賞という賞を頂くことができました。角川文庫から出ている小説からは、私自身の絵柄の確立に繋がる美少女系のライトノベル作品が多くあり、まさかこのような賞が頂けるなんて… と嘘みたいな思いです。数ある中から選んでくださって本当にありがとうございました!」

小田望楓さん

小田さんの作品

 また、今年の全体のグランプリは、安田知司さんが選ばれた。安田さんは、1985年、北海道小樽市生まれ。2008年、京都嵯峨芸術大学(現・嵯峨美術大学)芸術学部造形学科油画分野 卒業。デジタル画像を構成するピクセルを触覚感覚として認知できるほどの大きさまで拡大したものを中心に作品を制作していて、ご本人のステートメントでは「絵具をのせて色面を作り、その結果、向こう側に朧げな図像が浮かび上がるという過程をたどる事は視覚する世界を確かめていく作業であり、また出来上がった作品を眺めることは視覚する世界の曖昧さを確かめる作業です。その時間を繰り返し行なうことによって私は見えるということを理解することに近づけるのではないか、あるいは見ることを考え続けられるのではないかと思い、制作に挑んでいます」とのこと。

安田知司さん

安田さんの作品

 UNKNOWN ASIA 実行委員会のエグゼクティブプロデューサー、高橋 亮さんのコメント。

 「今年のUNKNOWN ASIAを通して感じたことは、早1年半のオンラインを中心とした長期間の日常生活を経て、より物質的な物への価値が強まったことを感じています。実会場での対話や交流での関係性作りはやはり素晴らしいものであることに改めて気付かされました。それと同時に、オンラインのツールを利用して海外とのリアルタイムでの通信などのメリットも大きく、それぞれの利点をうまく活かすことができたハイブリッド開催だったのではないかと感じております。

 また、今年はギャラリーブースの設置など新しい企画も加わり、アートフェアとして価値を高めていく取り組みを行ないました。今後も継続的に開催するために、試行錯誤しながら新しい可能性を模索し、積極的に取り入れていくことで進化を続けたいと考えております。

 このコロナ禍で錯綜する情報をアーティストのアンテナでどのように受信され、どのようにアウトプットされるのか。 それは次なる時代への新しい可能性を示唆するものとしてUNKNOWN ASIAが少しでも発信基地となれるように、これからも継続的に活動をして参りたいと思います」

高橋 亮さん

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