技術者のこだわり封印? 初学者にフォーカスしたgrasys執筆のGoogle Cloud書籍

文●大谷イビサ 編集●ASCII

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 2021年9月29日、grasysは同社が執筆を担当した「図解即戦力 Google Cloudのしくみと技術がこれ1冊でしっかりわかる教科書」(技術評論社)の発売を記念したオンラインイベント「Google Cloud まるっとわかる座談会」を開催した。アスキー編集部の大谷イビサのモデレートのもと、執筆に関わったgrasysやGoogle CloudのメンバーがGoogle Cloudの魅力や執筆の苦労を語り合った。

grasysが熱視線を注いできたGoogle Cloudとは?

 今回ゲストとして登壇したのは「図解即戦力 Google Cloudのしくみと技術がこれ1冊でしっかりわかる教科書」の執筆を担当した5人。grasys代表の長谷川祐介氏、grasys Cloud Infrastructure部門の泉水朝匡氏と清水貴寛氏、そしてGoogle Cloudの西岡典生氏、田丸司氏で、ASCII編集部の大谷イビサがモデレーターを務めた。

 自己紹介に続いて、まずはGoogle Cloudの田丸氏がGoogle Cloudについて説明した。Google CloudはGmailやYouTubeなどのGoogleのサービスを支えるインフラやAI/MLといったテクノロジーを、ユーザーが利用できる形で提供しているクラウドサービス。世界中にあるデータセンターをインターネットではなく、独自のネットワークで接続しているため、いったんGoogleのネットワークに入れば、最短の遅延でシステムにアクセスできるというメリットがあるという。

 また、本書でも説明されている通り、Google Cloudにはコンピュート、ストレージ、ネットワーク、データ、AI/MLなど数多くのサービスがある。2021年にはサービスとして別々だった機械学習系の機能を統合的に利用できる「Vertex AI」、GKE(Google Kubernetes Engine)のクラスター運用をよりシンプルに行なえる「GKE Autopilot」、Google Comupute Engineに追加されるスケールアウト型ワークロード「Tau VM」、DWH、データレイク、データマート、データベースのデータ管理を統合できる「Dataplex」、サーバーレスなワークフローサービスである「Workflows」なども発表されている。

多種多様なGoogle Cloudのサービス群

 こんなGoogle Cloudとのなれそめについて、grasysの長谷川氏は、「前職のときGoogle Cloudを使いませんか?と営業を受けたのがきっかけ。前職はアーキテクチャがWindowsだったので、使う機会がなかったのですが、面白そうだなと思ってgrasysを立ち上げるときにGoogle Cloudを使うことにしました」と語る。個人的な興味から始まった付き合いだが、現在に至る8年あまりgrasysでGoogle Cloudを使い続けてきたという。

Google Cloudの魅力とgrasysとの関わり

 そんなGoogle Cloudはgrasysのメンバーから見て、どのあたりが魅力的なのだろうか? 
 書籍の執筆を手がけた清水氏は、Google Cloudのユニークなところとして、「認証周りの優位性」を挙げる。そもそもGoogle Cloud自体がGmailなどGoogle アカウントを持っていれば、すぐに使えるほか、アカウント周りの管理もシンプルで、既存のGoogleサービスと連携しやすいという。また、IPアドレスではなく、アカウントベースでアクセス制御が可能なIAP(Identitiy-Aware Proxy)もテレワーク下で便利なサービスだという。

 また、泉水氏は「プログラマーに優しい」という点を挙げ、「8年くらいプログラマーとして開発をしてきたが、仮想マシンを簡単に作れたことに感動した」と語る。なぜ簡単だったかを考えてみると、実はVPC(Virtual Private Cloud)内にデフォルトネットワークが自動生成されるので、ネットワークの知識が不要だからだった。ユーザーインターフェイスもわかりやすいし、ファイアウォールの必要最低限の初期設定も済んでいるためとっつきやすいという。

 最後にコメントした長谷川氏は、「Googleって検索の会社だと思われているけど、実は世界のさまざまな地域を結ぶ海底ケーブルの保持会社であり、すごい巨大なストレージを持った『インターネットの腹』という会社だと思っている」とコメント。DXで重要となるデータを安全に保存し、利用し、分析できるところがやはりGoogle Cloudの強みだと語る。

 そして、そのデータをフル活用できるサービスが代表的なサービスである「BigQuery」であり、「Cloud Spanner」だ。「実際使うかどうかは別にして、ペタバイト級のデータをAPIからハンドリングできるのはすごい」と泉水氏は力説。両サービスについて、「他のクラウドサービスにも同じようなサービスはもちろんあるが、BigQueryはGoogle Cloudを使うモチベーションになるサービス」(清水氏)、「グローバルでトランザクションを扱うみたいな案件では、とりあえずCloud Spannerが選択肢に出るようになってきた」(泉水氏)と二人はコメントする。

クラウド未経験+Google Cloud初学者にこだわった

 こうしたGoogle Cloudについてわかりやすく解説したのが、9月に発売された「図解即戦力 Google Cloudのしくみと技術がこれ1冊でしっかりわかる教科書」になる。書くきっかけは単純に「書きませんか?というお誘いが来たから」だという。これを受け、ノリ重視の長谷川氏がエンジニアを誘って執筆を手がけることになったが、「言い出しっぺの本人は前書きしか担当していない(笑)」という。

 では、どんなところにこだわったのか? Google Cloudの西岡氏は、まずクラウド未経験+Google Cloud初学者をターゲットに設計したことを挙げる。そのため、「わかりやすい」「新しい」「正確である」にこだわり、日本語としてきちんと理解でき、あいまいな表現を排し、可能な限り、新しい情報を盛り込むことにしたという。たとえば、Google Cloudの概要のみにとどまらず、「クラウドとは?」という基礎知識に関してもページが費やされているため、クラウド初学者にもわかりやすい。

書籍執筆のこだわり

 さらに、ベンダーとパートナー両社の視点を入れて、本当に使って欲しいサービスを厳選した。どういった表現やページ構成にするか、どのサービスを紹介するかなどは、「grasysさんとも熱い議論を交わした」(西岡氏)とのこと。クラウドの基礎やGoogle Cloudの全体像、主要サービスに関してはまんべんなく学べる一冊になったという。

 一方で、初学者向けに内容をしぼったことで、コマンドラインや具体的な操作方法、デザインパターン、サービスの詳細仕様などは、本書ではおおむね省かれている。そのため、本書で全体像をつかんだ後は、マニュアルやハンズオン、認定資格などで学習を進め、その後は設計情報やベストプラクティスに触れたり、各種イベントで事例や技術を確認したりして、実案件に取りかかるとよいと西岡氏はアドバイスした。

「書きたいところがあとからあとから出てきた(笑)」

 執筆の苦労についても聞いた。泉水氏は、日々使っているGoogle Cloudだけに執筆もスムーズに進むかと思いきや、「初学者向けということで、どこから書き始めればいいのかわからなかった」という悩みがあって、意外と進まなかったという。逆に書き始めてノって来ると、今度は「あれも書きたい。これも書きたい」という気持ちになり、自分のお気に入りのサービスを取り上げたくなった。しかし、本書ではその気持ちはグッと抑え、初学者向けに徹したという。

 実際、本書を手に取ってもらえばわかるが、技術者集団のgrasysがよくここまで抑えたなという感想は持ってもらえると思う。清水氏は、「ドキュメントを読んでいると、書き加えたいことがあとから出てくるんです(笑)。でも、細かいところがむしろ他社クラウドとの優位性やバリューだったりするので、そういったのは可能な限りコラムに入れました」とコメント。本文以外にもこだわりがあふれているわけだ。

 当然、ページ構成も難しく、書いた原稿が1ページまるまる収まらなくなったということもあった。さらにクラウドならではの更新の速さも悩みの種で、どのタイミングの最新情報を読者に届けるのかを決めるのはやはり難しかった。「実際、最終チェックに回したら、ドキュメントと実際の画面が違っていることもあった」(泉水氏)とのこと。とはいえ、grasysとGoogle Cloudのメンバーで1週間に一度ミーティングすることで、お互いのギャップを埋められたという。

自ら読んでの感想は「よくこんなに平易に書けたなと」

 Google Cloudはもちろん、クラウドの概念自体も学べる本書の想定読者はずばり初学者。清水氏は「本書を片手にクラウドの世界に飛び込んでほしい」と語る。また、他のクラウドに造詣が深い方々も、自身が得意なサービスと比べることで、より早く理解できるという。「Google Cloudの全体像の把握に大いに役立てると思います」と清水氏はアピールする。

どんな読者に読んでもらいたいか?

 最後に、各自に書籍になった感想を聞いた。書籍の執筆が初めてだったという清水氏は、「見本誌を見たら、やっぱり感動しました。今までは書店で本を買う側だったので、書く側に回ったという感慨がありましたね」とコメント。そして、泉水氏が「自分の担当した章を読んだのですが、よくこんなに平易な書き方できたなと自分自身で感動しました。でも、もっと書きたいことができたのも事実です」と語ると、長谷川氏は「これって中級者向けもありってこと?」と次作に向けたフラグを立てた。

 「社内のメンバーもけっこう買ってくれて、フィードバックをくれたのでうれしい」(西岡氏)、「ITに関係ない知り合いが買ってくれて、クラウドがわかったと言ってくれた」(田丸氏)と、Google Cloudの二人も感慨深そうだ。最後に長谷川氏がgrasysへの人材募集を行ない、約一時間の座談会は終了。最終的には予想を大きく上回る200人以上の申込があった本イベントだが、Google Cloudの魅力と書籍へのこだわりが伝わったのではないだろうか? 

 イベントの模様はYouTubeでも公開されている。

Google Cloudまるっとわかる座談会

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