このページの本文へ

「Microsoft Japan Digital Days」事例セッションは注目のローコード開発

現場のDXでローソンが活用するマイクロソフトのローコードテクノロジー

2021年10月18日 09時00分更新

文● 大河原克行 編集●大谷イビサ

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 日本マイクロソフトが、オンラインで開催しているMicrosoft Japan Digital Daysにおいて、「レジリエントな業務を実現するマイクロソフトクラウドとローコードテクノロジー」と題したセッションが行われ、そのなかで、ローソンのDXへの取り組みや、ローコードテクノロジーの活用に関する最新事例が紹介された。

ローソン 執行役員 ITソリューション本部の原田和浩本部長

ITの役割は業務効率化から新しいオペレーションの確立、そして価値創出へ

 ローソンでは、創業50周年を迎える2025年に向けて策定した「Challenge 2025」に取り組んでおり、コンビニエンストストア業界におけるレコメンドナンバーワンを目指すとともに、「みんなと暮らす マチを幸せにします」というグループ理念の実現を目指している。

2025年に向けて策定したChallenge 2025

 ローソン 執行役員 ITソリューション本部の原田和浩本部長は、「これを実現するために、働きがい、挑戦心、デジタル、データの4つが大切なポイントになる」と位置づける。

 1975年に第1号を出店してからの20年間は、業務効率化がITの役割であったが、1995年からはコンビニエンスストアにおける新たなオペレーションの確立にITを活用。2010年からは購買データなどをもとにしたデータドリブン経営を目指してきたという。今後は新たな価値の創出が命題になっており、セルフレジの導入やレジなし店舗であるローソンGOの展開も開始したところだ。

 また、日本マイクロソフトとの連携は、2017年に次世代POSやタブレット端末などにWindowsを採用したのが始まりだ。2019年には働きがい改革に向けて、全社にMicrosoft Teamsを導入。2021年からは現場DXとして、Power Platformをユーザー部門で活用を開始するとともに、12年ぶりに全社ポータル「ローソンスクエア」を刷新。ここにはSharePointを活用しているという。

ローソンとテクノロジー

日本マイクロソフトとローソン

DX戦略として全社戦略と連動したデジタル・ITストラテジーを立案

 ローソンは、Challenge 2025の実現に向けたDXの推進においては、まずは、全社戦略と連動したIT戦略「デジタル・ITストラテジー」を立案するところからスタートした。「サーバー、ミドルウェア、アプリなど、2800以上のIT資産を、180のビジネス領域で活用していた。これらのすべてを対象に、EOSLの管理、ITAMによる管理、ITSMの導入のほか、ローソン独自のプロジェクト管理手法やチェック項目などの標準を決め、高い品質でデリバリーができるようにした」という。

 これらの取り組みをベースに、2025年までのITロードマップを作成。重点案件を明確にするとともに、財務計画と連動したコストコントロールを導入。クラウドやAI、RPAなどの基礎技術、データレイクやコミュニケーション、セキュリティなどのシステム基盤の整備も進めているという。

 その一方で、レガシーによって生まれる課題の完全解決、ITコストの平準化などにより、システムの機動性、拡張性、機能性を高めるとともに、DXリテラシーの向上を図ることにも取り組んだ。

 「DXによって目指す姿は、数を撃ちたい、弾込めをしたい、パイプラインをしっかり作りたい、実行能力を向上させ、IT投資を最大化したいと考えている。これにより、社員一人ひとりの実力値をあげていくことで、真のデジタルトランスフォーメーションが実現することになる」と語った。

真のDXに向けた戦略

 レジリエントな業務を実現するクラウド基盤にAzureを採用。「外部環境の変化、ビジネス環境の変化といったコンビニエンスストアビジネスの環境変化と、2025年の壁で指摘されているデジタル、IT環境の変化にもしっかりと対応していく」と語った。

コミュニケーション、ローコード開発、

 ローソンにおける具体的な取り組みとして、3つの事例を紹介した。

 ひとつめは、コミュニケーションプラットフォーム「Lawson 4Cプロジェクト」だ。ここでは、先に触れたように、全社ポータルを刷新し、2021年4月から本格稼働させたという。社員など約8000人が利用できるものだが、ユニークユーザー数は4000人以上、月間アクセス数は85万件、最も多い日では1日7万件のアクセス数に達したという。4Cは、コミュニケーション、コラボレーション、チャレンジ、コンペチティブネスの頭文字から取ったもので、今後は部門ごとに設置されている古いサイトを断捨離していくことになるという。

コミュニケーションプラットフォーム「Lawson 4Cプロジェクト」

 2つめは、現場主導の業務効率化に向けたローコード開発の導入である。「外部環境の変化への対応を、いちいちIT案件にしていたのでは、すべての課題を解決できない。ユーザー部門の代表者が集まって、業務効率化チームを立ちあげ、Power Platformを活用してアプリ開発を行っていく環境を整備した」という。

 IT部門は技術的な方向性、難しい部分に対する相談対応を行なう形とし、組織内の業務全体を理解しているメンバーを「DXアンバサダー」としてアサインし、支援役として活動。DXアンバサダーを中心とした活動によって、メッセージ数やリプライ数が増加するなど、活性化や利用度合いが大きく進展したという。2021年9月には、業務効率化チームが開発したアプリが、全社標準アプリとして活用されるといった事例も生まれている。

現場主導の効率化を実現するDAX

 ここでは、「マイクロソフトの製品は、さまざまなアプリケーションがライセンスのなかに入っている。これをどれだけ活用できるかが、ユーザー企業としての腕の見せどころである」とも語った。

 3つめの事例は、Power Automateの活用だ。たとえば、ITSMツールから発生する作業依頼から、特定の件名を拾ってExcelにリスト化。アクションにつなげるようにしたという。

Power Automateの活用例

 今後も取り組みとして、海外事業におけるERPの適用を検討。「店舗からバックオフィスまでのデータの一元管理はどこまで可能なのか、クラウドの特性を生かした活用方法や運用体制はどうすべきかといった課題はあるが、新たな挑戦に取り組みたい」としたほか、「24時間365日止まらないローソンの店舗を支える大規模システムの企画、構築、運用、維持管理のほか、新技術活用によるDX推進などに向けて、さらなる体制強化を目指している。活躍してくれる人材を募集している」などと述べた。

データを流通し、活用するデジタルフィードバックループこそがDX成功の秘訣

 一方、今回のセッションでは、日本マイクロソフトからDXの現状などについても説明された。

 経済産業省の「DXレポート2中間とりまとめ」において示されたように、DXの階層は、アナログデータをデジタルデータ化する「デジタイゼーション」、個別業務や個別の製造プロセスなどをデジタル化していく「デジタライゼーション」、組織横断や組織全体の業務プロセスや製造プロセスをデジタル化し、顧客起点の価値創出のための事業やビジネスモデルの変革を行う「デジタルトランスフォーメーション」の3層で構成されているものの、DX(デジタルトランスフォーメーション)が未着手、あるいは部分的に実施している日本の企業が95%に達しているのが現状だという。

DXの3つの階層、DXの未着手率は95%

 また、コロナ禍においては、テクノロジーだけではどうにもならず、素早く変革し続ける能力や、レガシー企業文化からの脱却をしなければ、DXは進まないことも明らかになったと分析。日本マイクロソフト ビジネスアプリケーション事業本部の大谷健本部長は、「マイクロソフトクラウドは、10年以上の投資を行ない、完成したプラットフォームであり、これを活用することで、DXが推進できる。データを流通し、活用するデジタルフィードバックループこそがDX成功の秘訣である。マイクロソフトでは、中央に集まったデータを、データサイエンティストでなくても分析できるPower BI、データを活用して業務プロセスに最適化した新たなアプリをつくるPower Apps、業務フローを自動化するPower Automateといったローコードをベースとしたテクノロジーの数々を、Power Platformとして提供しており、Dynamics 365とPower Platformを組み合わせることで、業務領域におけるDXを支援できる」とアピールした。

日本マイクロソフト ビジネスアプリケーション事業本部の大谷健本部長

 また、「だが、これではお惣菜のようにひとつずつ摘まんでいかなくてはならない。そこで、パッケーシ化したようなソリューション群を用意している。営業DX、サービスDX、基幹システムDXなどとして提供しているもので、足りない部分があれば、Power AppsやPower Automateを使って、自動化したり、拡張したりできる。Power BIを使ってデータを可視化することもできる。Dynamics 365では、グローバルで利用される標準機能を搭載しているが、日本特有の業務、業態、商習慣にあわせるために、ローコードテクノロジーを活用して、カスタマイズや拡張をしていくことができる。これにより、スピード感を持ったクラウド移行が進められる」とした。

レジリエントな自動化DX

 企業においては、迅速なアプリ開発や、アプリの内製化が進展するなかで、開発者不足が大きな課題となっている。

 これに関して大谷氏は、「マイクロソフトでは、ローコードテクノロジーを活用することで、市民開発者が、データを活用したアプリを開発する世界を作っていきたい。だが、Power Appsでアプリを開発しても、どこかで限界がきて、コーディングをしなくてはいけない状態が生まれてくる。その場合は、シームレスに提供されるAzureのリソースを活用することで、コーディングできる人と連携し、ソリューションを拡張し、完結していくことができる。これも、マイクロソフトのローコードテクノロジーの特徴である」と述べた。

 また、Power Automateによって実現する自動DXでは、RPAによる業務プロセスの自動化などに最適なツールになると位置づけ、デスクトップによるフロントエンドから、クラウドによるバックエンドのワークフローまでを自動化し、単調で、冗長的な作業をロボットに移行させ、ワークフローの孤立を防ぐことができるとした。さらに、ビジネスニーズに適したアプリが入手しやすいように、全世界740社以上のISVから、1800以上の認定アプリを、マーケットプレイスであるApp Sourceを通じて提供。業種、業態にフィットしたソリューションを日本市場にも提供できると述べた。 

 「ISVが指摘するマイクロソフトの強みは、Azureに加えて、Dynamics 365やMicrosoft 365、Microsoft Teamsといったクラウドサービスの横連携により、様々な業種や業務に対応でき、さらに、Power Appsなどにより拡張できる点である」などと述べた。

カテゴリートップへ

ピックアップ