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夢の技術! 自動運転の世界 第39回

自動運転の基礎 その33

日産とドコモの実証実験を体験! 夢の自動運転タクシーが、“ほぼ”現実のものに

2021年09月19日 12時00分更新

文● 鈴木ケンイチ 編集●ASCII

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自動運転の未来に大きく前進!?
日産とドコモの配車サービス

 日産がドコモと共同で、横浜みなとみらいおよび中華街エリアにおいて、自動運転車両と用いたオンデマンド配車サービスの実証実験を、2021年9月21日より10月末にかけて実施する予定だ。今回のサービスは、日産の自動運転車両を使う交通サービス「イージーライド」と、ドコモのオンデマンド交通システム「AI運行バス」を組み合わせたもの。「AI運行バス」システムで、サービスの予約/配車/ルート作成が行なわれ、それにあわせて「イージーライド」の自動運転車両が、利用者を運ぶという流れだ。今回、実証実験の実施前に、そのサービスの体験取材することができた。その様子をレポートしたい。

 体験取材の集合場所であり、サービスのスタート地点となったのは、横浜にある日産のグローバル本社前のクルマ寄せだ。ここで、スマートフォンから「AI運行バス」のウェブアプリ・サイトにアクセスし、スタート地点とゴール地点、利用希望時間、乗車人数を入力して、クルマを呼ぶ。スタート地点とゴール地点は、横浜みなとみらい/中華街エリア内に設定された23の乗降ポイントから、利用者が自由に選ぶことができる。日産は、2019年にも同様の実証実験を行なっているが、そのときの乗降ポイントは15ヵ所。今年は8ヵ所を追加したことになる。ちなみに、23ヵ所の乗降ポイントを結ぶルートは650以上にもなるが、それを 「AI運行バス」のシステムは一瞬で導き出す。

予約・配車・ルート選定をするのがドコモのシステム「AI運行バス」。アプリではなくウェブページにアクセスして利用する

自動運転車両に乗り込むときは、車両のドアのコードを「AI運行バス」のページで入力する。その後、ドアが自動で開閉する

 今回は、「日産グローバル本社」から、みなとみらい内にある、「ワールドポーターズ汽車道側」を「現在」「大人一人」でリクエストしてみた。すると、5分後にクルマが迎えに来て、10分ほどで目的地に到着できるという。

 ほんのわずかな待ち時間の後にやってきたのが、日産NV200バネットのEV版を改良した自動運転車両だ。見ると、フロントガラスの上にカメラがずらりと並び、前後バンパーにもセンサーらしき凹みがある。日産の説明によると、14のカメラ、3つのレーダー、6つのレーザースキャナー(いわゆるライダー)、GPS/GNSS、ジャイロが搭載されているという。また今年の車両は、コンピューター系も汎用パソコンではなく、組み込みECUになっており、電力消費も大幅に少なくなっているようだ。室内を覗くと、助手席が黒い樹脂で覆われており、そこに自動運転関連の機器類が納められている。2019年の実証実験時よりも、車両も大幅に進化しているようだ。

日産とドコモによる実証実験は、日産グローバル本社を含む、23ヵ所の乗降ポイントが横浜みなとみらい/中華街エリアに設定されている

利用法の案内などは、車内のモニターと音声で行われる。車内モニターには、ルートや車、ドライバーの状況などが表示される

 乗降ポイントに自動運転車両がやってきたら、利用者はスマートフォンを使って、車両に記載されているPINコードを打ち込む。これは予約した利用者であることをシステムに知らせるもので、今回の実証実験用に「AI運行バス」に追加された機能だ。もともと「AI運行バス」は、人間のドライバーがいるバスやタクシーで利用されるものであり、人が介在しない自動運転システムに使われるのは、今回が初。そのための措置であったという。

 PINコードをスマートフォンに打ち込むと、クラウドからの指示で、自動運転車両のドアが自動で開く。車内の運転席には、人間のドライバーが座っているが、あくまで安全確保の監視員という立場だ。面白いのは、利用客とは一切会話をしないところ。利用方法の説明も何もしないのだ。これは、完全な無人の自動運転でのサービスを模しているため。そのため、利用者の説明は車内に設置された大きなモニターによる映像と音声が担当する。モニターには、走行している車両の動きやルート、そしてハンドル操作をしていないドライバーの様子が映しだされる。また、画面の一部には周辺のお店で使えるクーポンも表示されていた。これは利用地域の活性化も目指した「AI運行バス」システムの機能のひとつだ。

 ちなみに、前回(2019年)の実証実験では、車両に安全のための運転監視役のドライバーだけでなく、案内のための人員も一人乗っていた。その案内係がいなくなったところも、今回の実証実験の進化ポイントだ。

車両1台だけ、運転手ナシで走り始める

 車内に乗り込みシートベルトを装着したら、座席横の室内ピラーにある「GO」ボタンを押す。それを合図に、クルマは走り出す。今回の実証実験では、自動運転車両は1台のみで走行する。これも、今回の実証実験の進化したところ。前回は、安全を確保するための伴走車がいたのだ。

運転席には、安全のために人が乗っているものの、運転操作はすべてシステムが行なうようになっていた

 出てすぐの交差点を直進すると、その先は片側2車線でありながらも、いつも路上駐車の多い場所だ。この日も数台のクルマやトラックが停まっていた。自動運転車両は、2車線のうちセンターよりの車線を走っていたが、路上駐車を避けるクルマが、左側からグイっと、目の前に割り込みしてきた。しかし、自動運転車両はスピードを調整して、割り込み車両を上手に前に入れる。ベテランの人間ドライバーのようだ。路上駐車の処理は、自動運転車両によっては非常に大きな難問のひとつ。これも、最新の日産の自動運転車両は、無事にクリアできているようだ。

自動運転の大きな障害となるのが、路上駐車の存在だ。今回は、車線変更や他車の割り込みなどをスムーズにこなしていた

 続いて曲がった先に横断歩道のある交差点の右折。今回は、曲がったときに横断歩道に歩行者はいなかったが、車両は一時停止していた。また、車内のモニターには、周りの車両だけでなく、歩道の歩行者なども表示されていた。数十メートル先まで周囲を監視しているようだ。見通しの悪い大きな交差点でも、遠くから走ってくる直進車をしっかりと認識しているようで、右折のタイミングも危なげない。

 そして5分ほどのドライブの後に目的地に到着。車両を歩道に寄せて停車。車内から降りると、数分後にドアは自動で閉まる。予約から、乗車、降車まで、すべて無人での対応であった。

自動運転レベル4にかなり近づいた

 実際にサービスを体験してみて思うのは、「これは、ほぼレベル4の自動運転のロボットタクシーと同じではないか」ということ。安全のためにドライバー役の人が座ってはいるけれど、実際の運転操作はしていない。しかも、走行しているのは自動車専用道ではなく、歩行者や自転車などもいる一般道だ。そこを他車と同様に、50㎞/hほどで走行した。そして、予約から乗車、降車まで、すべてが無人。内容的には夢みた「自動運転タクシー」と同じである。

目的地に着いて、利用者を降ろし、その後、再スタートするところ。ドアが自動で閉まるまで数分の猶予があった

自動運転車両のフロントガラス上部にずらりと並んだカメラ。車両すべてで14ものカメラを装備する

 今となっては、自動運転サービスの実証実験は珍しいものではないが、内容的なレベルは非常に高度だと思う。路上駐車の処理や、横断歩道の歩行者の対応もスムーズであった。3~4年前であれば、大々的にニュースになったことだろう。開発をコツコツと進めてきた日産の努力を称えるべきだ。

【まとめ】着実にゴールに向かって進みつつある

 とはいえ、これで自動運転が完成したわけではない。今回の実証実験の舞台となったのは、センターラインがしっかりとある、割と大きな通りだ。地方にある、センターラインのない細い路地ではない。また、今回は成功したが、もっと長時間、長期間の運用で事故が発生するかどうかは、まだまだ不明。そのため今回の実証実験の成功で、来年から量産・実用化というのは、さすがに不安だ。また、20を超えるセンサーはさすがに多すぎで、センサーを減らして更なるコスト減も必要だろう。さらに、今回の実証実験では利用料金は無料であり、将来の利用客の支払いの方法も未定。これも使いやすい支払いシステムの構築が必要となる。それ以外にも、自動運転の事故に対する社会的な合意や法律・保険の整備なども必須になる。

自動運転車の助手席は黒い樹脂カバーでおおわれており、その中に自動運転の機器が納まっている

自動運転のベース車両となったのは日産NV200バネットのEV版。利用者用に3座が設置されている

 自動運転サービスの姿は見えた。実用化までの道程は残りわずかだ。しかし、誰もが納得できる安心・安全を証明するのは至難の業。最後のわずかな距離を詰めることは難しいだろう。だが、着実に一歩一歩、進んでいけば、いつかは必ずゴールにたどり着く。今後のさらなる日産の努力にエールを送りたい。

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