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業界特化型の「GreenLake Lighthouse」拡充、ゼロトラストセキュリティ組み込みなど

HPE、“as-a-Service”転換完了に向けたGreenLake新サービス群を説明

2021年09月21日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 日本ヒューレット・パッカード(HPE)は2021年9月15日、今年6月末に開催されたグローバルの年次イベント「HPE Discover 2021」で発表した新サービスやテクノロジーの総括と、最新のビジネスアップデートに関する記者説明会を開催した。

 今年のHPE Discoverは「THE FUTURE IS EDGE TO CLOUD:Edge-to-Cloudが作り出す新しい未来」をテーマに開催され、「HPE GreenLake Lighthouse」など、同社が2022年をゴールとして進める“as-a-Serviceカンパニー”化の実現に向けた新サービス、新プログラムが発表されている。

今年のHPE Discoverでは「HPE GreenLake」の新サービスや機能強化などが発表された

日本ヒューレット・パッカード 代表執行役員社長の望月弘一氏

同社 常務執行役員 Pointnext事業統括(兼)ストラテジック・アライアンス統括本部長の小川光由氏、同社 執行役員 コアプラットフォーム事業統括の本田昌和氏

as-a-Service化の主軸を担うGreenLakeビジネスは堅調に成長

 説明会冒頭、同社社長の望月弘一氏はまず、9月2日に発表した2021年度第3四半期の業績について報告した。「受注も収益もフリーキャッシュフロー(FCF)も、すべて好調な四半期となった」(望月氏)。受注額は前年同期比で11%増加、利益額は同 28%増、FCFは同 332%増という結果だった。

 HPEでは2019年に“as-a-Serviceカンパニー”への転換を宣言し、2022年までにすべてのポートフォリオをas-a-Serviceで(サービスとして)提供するという目標を掲げた。as-a-Service化の中核を担うGreenLakeビジネスの受注額は前年同期比46%増、ARR(年間経常収益)は同 33%増と順調に伸びており、現在の契約社数は1100社超、契約総額は54億ドルに達していると語る。

 また、HPEがas-a-Serviceで提供するポートフォリオは“Edge to Cloud(エッジからクラウドまで)”全領域に及ぶ。これについても、コンピュートやストレージ、テクノロジーサービスの「HPE Pointnext」といったコア事業、およびインテリジェントエッジやHPC/ミッションクリティカルシステム(MCS)といった成長事業のいずれもが堅調に推移していることを強調した。なお、日本市場単体の業績は明らかにされていないが、グローバルでは「先進国」だと望月氏は説明する。

 「(GreenLakeについて)日本は一番の先進国であり、グローバルの牽引役を担っている。それは、日本では(パブリッククラウドよりも)オンプレミスを多く活用しているという背景があるため。このオンプレミス環境を、従量課金型で利用したいという強いニーズがある」(望月氏)

2021年度第3四半期(2021年5月~7月期)の業績

 オンライン開催された今年のHPE Discoverには、グローバル合計でおよそ6万名の参加者があり、日本からも3500名以上が参加した。望月氏は、基調講演において米HPE プレジデント兼CEOのアントニオ・ネリ氏が語ったキーメッセージを要約して紹介した。COVID-19収束の方向性も見えてきた中であらためて「デジタル化された働き方」を考えること、「データドリブンなビジネス変革」がこれまで以上に重要になっていること、それらの取り組みを支えるのがHPEのテクノロジーやサービスであること、などだ。

「HPE Discover 2021」のハイライト

業界特化型パッケージ提供など、GreenLake Cloud Servicesの拡張

 今年のDiscoverではさらに、“as-a-Serviceカンパニー”への転換という目標に向けた最終段階として、HPE GreenLake Cloud Servicesにおける複数の新サービス、機能強化も発表された。これについては、同社Pointnext事業統括の小川光由氏が説明を行った。

 まず1つめは、HPE GreenLake Cloud Servicesを通じた業界特化プラットフォームの提供だ。これはインフラレイヤーにとどまらず、パートナーが提供するアプリケーション/ソフトウェアレイヤーまで統合済みのプラットフォームをas-a-Service化したもので、コンサルティングや構築保守サポート、運用支援までを含めて、月額課金で提供するものとなる。

 具体的には、すでに発表されていたSAP、ML Ops、HPC、VDIの各サービスが提供開始されたほか、今回新たに電子カルテ、金融決済、データ/リスク解析、5Gソリューションもラインアップに追加されている。

GreenLake Cloud Servicesを通じて、インフラレイヤーにとどまらずプラットフォーム/ソフトウェアレイヤーまでをパッケージした“PaaS”としての提供を拡充した

 2つめの発表は、パートナーとのアライアンス強化である。たとえば今回、インテルとのパートナーシップに基づく「GreenLake Silicon on Demand(シリコンオンデマンド)」を発表している。これはインテルのOptaneテクノロジーを用いて、プロセッサコアや永続メモリの単位で粒度の細かいキャパシティ調節を行えるようにするものであり、GreenLakeにおいてリソース需要に応じた細かな調整や課金(メータリング)を可能にする。そのほかMicrosoft、Nutanix、Veeam、Qumuloといったパートナーとのアライアンスも強化されている。

パートナー各社との連携を強化

 そして3つめが「HPE GreenLake Lighthouse」の発表だ。HPE GreenLake Lighthouseは、分散化が進み複雑化しているIT運用をシンプル化するために、「HPE Ezmeral」をベースに構築されたクラウドネイティブなモジュラー型プラットフォームである。「これまでは顧客のニーズに合わせてカスタムメイド的な、フルオーダーでのクラウド環境提供だったが、これをメニュー化して使いやすくする、セミオーダー化することを図った」(小川氏)。

 具体的には、事前構成済みのカタログによりハードウェア機種などを意識することなくシンプルにインフラを構成できる「モジュール化」、管理コンソールの「GreenLake Central」から仮想マシンのプロビジョニングなどを簡単に操作可能な「クラウドとしての機能強化」、「GreenLake Management Service」を通じて展開/監視/管理/維持/リバランス/再利用までをカバーする運用サービスもパッケージ提供する「IT運用の簡素化」といった特徴がある。

GreenLakeのセキュリティを担保する「Project Aurora」や新コンソール

 同社 執行役員 コアプラットフォーム事業統括の本田昌和氏は、エッジからクラウドまでのハイブリッドクラウド環境を保護するゼロトラストセキュリティの取り組み「Project Aurora」と、統合管理コンソール「Compute Cloud Console(CCC)」および「Data Service Cloud Console(DSCC)」について説明した。

 HPEではこれまで、「Silicon Root of Trust」などを通じてサプライチェーンやハードウェアレベルでの改竄防止=セキュリティ担保の取り組みを行ってきた。今回のProject Auroraはその上のレイヤー、具体的にはOS/ハイパーバイザやプラットフォーム、ワークロードまで、GreenLake Lighthouseでカタログ化され提供されているサービス全体が、実行中も含めて改竄されていないことを保証するフレームワーク/セキュリティサービスになるという。

 HPEでは2020年2月、CNCFプロジェクトの「SPIFFE(the Secure Production Identity Framework for Everyone)」および「SPIRE(the SPIFFE Runtime Environment)」の立ち上げに貢献したメンバーが所属するScytale(スカイテル)を買収しており、これらのクラウドネイティブなフレームワークがGreenLake Lighthouseのアーキテクチャに組み込まれることになる。

 「(サプライチェーンからワークロードまで)5つのレイヤーにおいて、1つずつ上位レイヤーを検証して保護していく、『信頼のチェーン』をつないでいくことで、ハードウェアだけでなくGreenLakeで提供するサービスそのものがセキュアであることを担保する。これにより、GreenLake Lighthouseのカタログメニュー(サービス)を使っていただくかぎり、顧客は常にセキュアなクラウド環境が構築できることを担保したいと考えている」(本田氏)

「Project Aurora」の概念図。低レイヤーから“信頼のチェーン”を積み重ねることで、各レイヤーで改竄攻撃が行われていないことを検証、担保する

 HPE Discoverでは、新たに2つのクラウド型(SaaS)にインフラ管理コンソールも発表された。

 Compute Cloud Console(CCC)は、エッジからクラウドまでのコンピュート環境を統合的に監視/運用管理できる新たなコンソールだ。SaaSとして提供されるため自らシステムを構築運用する必要はなく、多数の拠点に分散したIT環境を一元的に可視化できる。「HPE InfoSight」で培われた分析/予測技術やプロアクティブな通知、ライフサイクル全体の管理といった機能も提供されるという。国内では今年秋からパイロットプログラムを開始予定だ。

コンピュート環境の管理コンソール「Compute Cloud Console(CCC)」の概要

 もうひとつの管理コンソールは、ストレージの運用管理を行う「Data Services Cloud Console(DSCC)」である。ストレージだけでなく「データマネジメント」の視点からの管理が可能だとしている。HPEではDiscoverの終了後、データ管理ソリューションのZerto(ゼルト)を買収しているが、Zertoが持つバックアップやディザスタリカバリ(DR)、データモビリティといったテクノロジーもDSCCに統合され、as-a-Serviceで提供される予定だという。

ストレージ/データ管理コンソール「Data Services Cloud Console(DSCC)」と、Zertoのデータ保護ソリューションの概要

 インフラ/IaaS管理レイヤーにCCC、DSCCが追加されたことにより、コンピュート/ストレージ/ネットワーク(Aruba Central)の各管理コンソールがSaaSとして提供されるかたちになる。

 「HPEはハードウェアにこだわって差別化を図ってきた。この特徴を生かしつつ、as-a-Serviceの新しい利用形態を目指すために、新しいクラウドアーキテクチャのブループリントを描いている。今回の発表は、それを実現していくためのものだ」(本田氏)

HPEの考える「as-a-Serviceのためのクラウドアーキテクチャ」

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