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三重の地方銀行、FIXERのサポートで全行員対象のデジタルリテラシー向上研修を実施し「手応え」を得る

百五銀行が業務アプリのノーコード開発研修まで踏み込んだ理由

2021年09月10日 08時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp 写真● 曽根田元

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 三重県津市に本店を置き、三重県および愛知県を主な事業エリアとする百五銀行。前身となる第百五国立銀行の設立(1878年/明治11年)から今年で143年目となる、歴史ある中堅地方銀行だ。

百五銀行は現在、国内に139カ店、海外駐在員事務所3拠点を構える(写真は津市にある岩田本店棟)

 同行では今年度(2021年度)から、およそ2200名の全行員を対象とする「デジタルリテラシー向上研修」をスタートさせた。単なる知識習得にとどまらず、「Microsoft Power Platform」のツール群を活用したノーコード/ローコードアプリ開発にも取り組む実践的な内容だ。FIXERによるサポートも受けながら、最終的には参加者が「自分の実業務で使える」アプリ開発のスキルを習得することを目指している。

 「幅広い部署、年齢層を巻き込んで受講希望者が予想以上に集まるなど、行内に『うれしい動き』が出てきています」。百五銀行 人事部 人材開発課長で、デジタルリテラシー向上研修の責任者を務める若林夏樹氏は、研修を実施した成果をこう語る。なぜ地方銀行がこうした“一歩踏み込んだ”研修に取り組んでいるのか、その背景や狙いについて聞いた。

百五銀行 人事部 人材開発課長の若林夏樹氏。百五銀行 研修所の所長も兼務している

「堅実経営」と「新たなチャレンジ」を両立させる

 冒頭で触れたとおり、百五銀行は140年以上の歴史を持つ地方銀行であり、創立以来「地域に根ざした堅実経営」の方針を掲げて事業を展開してきた。若林氏は「わたしが入行した2000年当時の百五銀行といえば、“バブル崩壊後の金融危機でも赤字決算にならないくらいの堅実経営”というイメージが定着していた銀行だったと思います」と説明する。

 だが、2000年代に入り同行に転機が訪れる。それは、2003年に発表したコーポレートステートメント「フロンティアバンキング」である。このステートメントでは、他行に先駆けて先進的な顧客サービスを実践していくことが宣言されている。

 「もちろん、これまでの『堅実経営』をやめたわけではありません。むしろ、新たなチャレンジをするためにはしっかりとした土台も必要です。堅実経営という土台があってこそ、世の中の変化にもすぐに対応していける『フロンティアバンキング』を実践できるのではないでしょうか」

コーポレートステートメントとして「フロンティアバンキング」を掲げる(画像は同行Webサイトより)

 顧客ニーズに沿ったさまざまなサービス開発を進めてきた結果、たとえば百五銀行の住宅ローン増加率は、過去2年にわたり、都市銀行を含む全国銀行の中でトップを維持している(日本金融通信社「ニッキンレポート」調べ)。また同行では、インターネット/モバイルバンキングやスマートフォン決済対応といった、デジタルサービスの開発にも早期から注力してきた。

 2000年に入行した若林氏は、この20年間で「チャレンジする」姿勢が行内に定着してきたことを感じるという。「頭取もよく『知恵を絞って、絞って、動こう』と呼びかけています。わたし自身も、変化の渦中に身を置くのは面白い体験だと感じています」。

「デジタル&コンサルティングバンク」を目指すために

 百五銀行では現在、年間で80以上の行員向け研修コースを用意している。それらは行員の階層や業務内容に応じて受講するものだが、今回スタートしたデジタルリテラシー向上研修は全行員向けに実施されている。つまり入行1年目の新人からトップまでの全行員が対象である。

 こうした研修を行うことになった背景には、2019年度からスタートした中期経営計画「KAI-KAKU 150 1st STAGE『未来へのとびら』」があると、若林氏は説明する。

 「この中期経営計画では、百五銀行が『デジタル&コンサルティングバンクを目指す』という長期ビジョンがうたわれています。DX(デジタルトランスフォーメーション)は日本だけでなく世界的な潮流ですし、銀行業界においてもデジタルは大きなキーワードですから」

10年後の創立150年に向けて「デジタル&コンサルティングバンク」への進化を目指す(中期経営計画資料より)

 ここで言う「デジタル」は、インターネットバンキングやバーチャル店舗といった、対外的なサービスのデジタル化だけを指すものではない。行内の業務をデジタル化し、大幅に効率化することも含まれる。同行ではすでにRPA、BPRの導入によるビジネスプロセス改善に取り組んでいるが、こうした動きをさらに強化していく狙いがある。

 もうひとつ、地域密着型の地方銀行ならではの理由もある。これからは地域の企業や商店におけるデジタル化も側面支援していく必要があり、そのためには行員の側にもデジタルの素養や知識が欠かせない。

 「これからは、どんな商売でも“デジタル抜き”では考えられません。お客様のデジタル化を支援していくためには、まず行員自身にデジタルリテラシーが必要です。お客様が『デジタル化のことなら百五銀行の人が詳しかったな』と思い出して、ご相談いただけるくらいになれるといいですね」

 銀行業界でもデジタル化の取り組みは進んでいるが、他行ではデジタルスキル/ITスキルを持つ人材を新たに雇用する、特定のスタッフがITベンダーに出向してスキルを磨く、あるいは外注ベンダーをうまく使いこなせる人材を育成するといったアプローチが主流だ。幅広い行員にアプリ開発スキルを習得させる百五銀行の取り組みは、それらとは少し異質なものと言える。

 「実際に、地銀業界の集まりで今回の研修の話をすると『もっと詳しく聞かせてほしい』と興味を持たれる方が大勢いらっしゃいます。eラーニングにとどまらず、アプリ開発までさせる取り組みはまだ珍しいのだと思います。これから、このような取り組みは全国に広がってくるのかもしれません」

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