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日本ユーザー待望の日本語化は2021年内に実現!

タスクも文書もWikiもデータベースもまとめて管理できる「Notion」とは?

2021年09月07日 00時00分更新

文● 柳谷智宣 編集●MOVIEW 清水 写真●曽根田元

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 ビジネスで扱う情報を目的によって異なるツールで管理している人は多いのではないだろうか。スケジュールやToDoを可視化するタスク管理ツール、社内ルールや議事録を管理するWiki、情報収集のための後で読むサービスをはじめ、文書作成にWord、データベースにExcelなど、数え切れない。

 それぞれのツールは便利なのだが、ツールが複数あると、情報が分散してしまう。そうすると、いざ情報が必要になったときに探しにくくなる。情報が活用されなければ、入力するのも馬鹿らしくなる。会社に情報が蓄積されなければ、状況の把握や経営改善もままならない。

 そこで、今注目されているのがオールインワンワークスペース「Notion」だ。すべての情報をまとめて管理できるのがウリ。まだUIは英語なのだが、日本でも人気急上昇中だ。今回は、Notionの日本におけるゼネラルマネージャー 西勝清氏に、Notionについて、そして今日本市場に参入する意図や今後の戦略について伺った。

Notion Japan ゼネラルマネージャー日本担当 西勝清氏

京都にインスピレーションを受けた創業者たち

 Notion Labsはアイヴァン・ザオ(Ivan Zhao)氏とサイモン・ラスト(Simon Last)氏が共同創業したサンフランシスコのSaaSスタートアップで、2016年にNotionをリリース。2020年には大型の資金調達を行なっている。現在、ユーザー数はグローバルで1000万人を越えるなど、すごい勢いで成長中だが、最初から順風満帆だったわけではない。実は、ザオ氏は2013年にもプロダクトの開発をしている。Notionよりもノーコードプラットフォームに近いプロダクトを開発していたのだ。

「アイヴァン曰く、きっかけはふたつの原体験だったそうです。ブリティッシュコロンビア大学在学中に、仲間内ではアイヴァンだけがコーディングができました。周りの人から相談を受けて、ウェブサイトやソフトウェアを作ってあげていたのですが、自分以外のコーディングができない人も作れればいいのにな、と考えていたそうです。さらに、いろいろなコンピューティングの生みの親と言われる人たちの本を読み、コンピュータは生活を変えられる素晴らしいパワーを持っており、その利益は世の中のすべての人が享受できるべきだというところにインスピレーションを受けました。そこで、コーディングができなくても、誰もがやりたいことを実現できるソフトウェアを作りたいと思ったのです」(西氏)

 しかし、この会社はうまくいかず、2015年に開発を中止。そして、次のチャレンジに向けたプロダクト開発をするため、そして気分転換のために居を移したのだが、なんとそこは京都だった。もともとザオ氏とラスト氏は日本や京都の文化に興味を持っており、初来日となった。そして、2016年にアメリカに帰り、Notionを完成させ、リリースした。

「日本にはかなりインスピレーションを受けたみたいです。彼らが住んでいたところの隣に飲食店があったのですが、毎日、お客さんが来る前から完璧に準備しているのを見て、シンプルだけどやるべきことをきちんとやっている、というところに影響を受けたそうです」(西氏)

 この時に作ったNotionは、ノーコードプラットフォームというよりは、もっと身近なドキュメント系のツールになっていた。人々のニーズはこちらにあると考えたからだという。

チームで必要な情報をまとめて管理できる まさにレゴブロック

 Notionはオールインワンワークスペースと謳っている。チームで必要な情報すべてをまとめて管理できるのが特徴だ。Notionには多数の機能があり、そのブロックをユーザーが自由に組み立てて、やりたいことを実現できる。ザオ氏はNotionの機能をレゴブロックに例えることが多いそうだ。

 定番のユースケースは3つあり、まずはチームWikiの使い方。チームの人が知っておくべき情報を集約できる。たとえば、最近だとリモートワークのポリシーや会社のビジョン・ミッション・バリューといった情報を共有する際に役立つ。

 2つ目はドキュメント管理。議事録を残したり、エンジニアが技術的な仕様書を作ったり、企画書を書いたりできる。そして、チームメンバーはその情報にいつでも自由にアクセスできる。3つ目がタスク・プロジェクト管理。カンバン方式でToDo管理をしたりとか、ガントチャートで進捗を把握したりできる。

「通常、この3つの使い方それぞれで異なるツールを入れています。下手をすると、会社の中でユーザー部門とエンジニア部門で違うツールを導入し、6つのツールが乱立しているということもあります。そうなると情報が分散してしまいます。その点、Notionはオールインワンであるというところが最大の強みです」(西氏)

 ドキュメント機能を中心にしつつ、データベース化できるのもNotionの特徴だ。ビューを切り替えることによって別の角度からデータを見られるのがユニーク。タスクやプロジェクトの管理も、このデータベース機能を利用しているのだ。

 コロナ禍において、ビデオ会議やビジネスチャットなどが広まっており、そのフローの中で重要な情報やアイデアが生まれることがある。しかし、放っておくと情報は流れてしまい、蓄積されない。そうすると、会社が成長する機会を失ってしまうことになりかねない。

「そんな時に活躍するのが情報をストックできるNotionです。コロナ禍でフロー情報のコミュニケーションが進んだゆえに、さらにNotionのニーズが高まってきたと思います」(西氏)

Notionアメリカオフィスの様子

すでに日本でも多くのファンがいてコミュニティが生まれている

 西氏がNotionにジョインしたのは2020年9月のこと。Notionにおける最初のインターナショナル雇用だったそう。一般的な外資系の会社であれば、もう少し大きくなってから日本に進出することが多いので、Notionの決断はとても早い。

 前職のWeWorkで働いていた5月ごろにNotionの最高執行責任者(COO)であるアクシェイ・コタリ(Akshay Kothari)氏から、日本でどうすべきかと相談を受けた。アイデアをいろいろ伝えていたら、その流れで実際に入社することになったという。ちなみに、アクシェイ氏は西氏の前前職のLinkedInで一緒に働いていたそう。

「私はプロフェッショナルとして、キャリアを通じて実現したいことの一つとして、海外の先進的なテクノロジーを日本に紹介して、日本の生産性向上に貢献したい、と考えています。Notionを使ったときに、Notionのミッションと自分のやりたいことが重なっているなと感じて、入社を決めました」(西氏)

 日本でのビジネスを強化する理由を尋ねたところ、まずは日本のマーケットが持っているポテンシャルが大きいのがひとつ。そして、その上ですでにNotionを使っているユーザーが多いというのも理由だそう。

「アイヴァンが言っていたのですが、単純に日本が好きだということもありますね」と西氏。ちなみに、日本法人は現在準備中とのこと。いつ設立するのか、どこに拠点を置くのか、西氏が代表になるのかなども、まだ決まっていないという。

 西氏が入社して驚いたのが、Notionの日本におけるコミュニティが活発だったことだという。UIはまだ英語版のままなのに、多数のユーザーが自発的にコミュニティを組織して、積極的に情報を発信したり、ミートアップを行なっているのだ。

京都にあるコミュニティ「Notion Kyoto」で開催された、オフラインのミートアップが

「ユーザーさんに本当に愛していただいているツールだと感じます。SNSやYouTubeでNotionの使い方を発信していたり、各地にコミュニティがあり、勉強会を開催されています。今、Notionの日本語化を行なっていますが、コミュニティの方達からフィードバックをいただき、一緒に進めています」(西氏)

 日本ユーザー待望の日本語化は2021年内に実現する予定とのこと。まずは、ローカライゼーションが大きなテーマで、同時にユーザーコミュニティの中で学び合える仕組みを作っていくという。

 もちろん、ビジネスの大切な情報を保管するのだからセキュリティにも力を入れている。その取り組みの一部として2021年8月には、SOC2 Type2レポートを取得した。Notionが情報の安全性を保つことに関して、業界の最高基準を満たしていることを証明するものだという。

開発中の日本語化された画面

 当然、Notionの社内でも情報共有のためにNotionを活用している。そこで西氏にお勧めの機能を3つ伺ってみた。

 1つ目はデータベースのテンプレート機能。例えば、議事録や共有ドキュメントを書く際は、多くの場合書くべき内容は決まっている。課題、提案、次のステップなどの項目をテンプレートで定義しておくと、文書を埋めていくだけで議事録が完成するので手間がかからない。

 2つ目が同期ブロック機能。ブロック内に書いたことが、連携しているブロックすべてに同期するようになる。たとえば、ドキュメントのフッター部分やチームの全体に関する活動ポリシーなど、定期的に更新がかかるような項目に利用できる。もし、同期していないと、更新する度に全ページを書き換えなければならないので、ぜひ活用したい機能だ。

 3つ目がNotionの外部公開機能。右上のシェアメニューから手軽に外部公開でき、ウェブページとして企業サイトに利用することもできる。日本では、採用や製品のQ&Aページで活用されているそう。採用情報は更新頻度が高いが、人事担当が自分で作業すれば短時間で対応できる。

Notion内での活用をテーマにしたデモを拝見したが、流石の使いこなしだった

 最後に、Notionユーザーに向けて一言。

「皆さん、日々こんなことができればいいなと感じていることがあると思います。それをNotionで簡単な仕組みを作ってみるところから始め、チームにどんな効果があるのかを試してください。Notionはオールインワンかつフレキシブルに使えるので、まずは身近なニーズから活用していただきたいです」と西氏は締めた。

 Notionは今、乗りに乗っている。年内の日本語化が実現すれば、国内でも大ブレイクすることは間違いない。筆者もすでに有料契約をしているが、さまざまなレイヤーの情報を集約できるのは本当に便利。ビジネス上の情報管理に悩んでいるなら、一足早くNotionに触れてみてはいかがだろうか。

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