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リーガルテック主要企業、キーマン対談

2021年が真のリーガルテック元年になる理由 クラウドサイン・Hubble・AI-CON Pro識者に聞く

2021年07月15日 09時00分更新

文● 森嶋良子 編集・聞き手●北島幹雄/ASCII STARTUP編集部

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 法務業務をIT化するリーガルテック。コロナ禍でテレワークの導入が進み、法務周りのIT化の必要性が高まる中で、2021年はリーガルテック市場の大幅な伸びが見込まれているという。今回、国内リーガルテック企業から各領域の3社をピックアップし、そのキーマンたちから実際の変化、そのリアルな感覚を聞いてみた。

 契約業務からハンコをなくし、クラウド上での締結を可能とする「クラウドサイン」を提供する弁護士ドットコム株式会社からは橘大地氏、契約書を中心とした情報を共有管理するSaaS(Software as a Service)「Hubble」とNDA規格の統一化プロジェクト「OneNDA」を手掛ける株式会社Hubbleからは酒井智也氏、契約書レビュー支援サービス「AI-CON Pro」、変更登記サービスの 「AI-CON登記」を提供するGVA TECH株式会社からは山本俊氏にご参加いただき、現在の状況から、リーガルテックによってもたらされる未来までを語り合ってもらった。聞き手は、数々の国内テクノロジー・スタートアップを取材するASCII STARTUPの北島幹雄が務めた。(以下、本文敬称略)

弁護士ドットコム 橘大地氏(左上)、Hubble 酒井智也氏(右上)、GVA TECH 山本俊氏(右下)、ASCII STARTUP 北島幹雄(左下)

電子契約の普及後に来た、真のリーガルテック元年

北島:今回参加していただいた3社は、ドラフトの作成や契約の審査、さらにプロジェクトの共有や契約の管理、そのあとの締結まで、リーガルテックの主要な領域を担っています。今年に至るまでの動きについて、皆さんどう感じられていますか?

山本:2020年、コロナ禍が始まった3月ごろから、電子契約の導入が一気に進みました。そこから半年くらいは、電子契約の導入が企業の優先事項だったかと思います。いまは、導入が進んで「リーガルテック慣れ」してきていて、この機会に契約書のいろいろな領域で、管理やAI審査も含めて導入していこうという流れが起きています。昨年秋以降は、我々の手掛ける契約書審査領域にもリソースが割り振られて、ちょっと順番が回ってきた感がありますね。

酒井:僕も山本さんの感覚に近いですね。2021年は、クラウドサインさんをはじめとする電子契約サービスの普及を土台に、様々なリーガルテックがいよいよ社会に浸透してくる段階だと考えています。Hubbleも、電子契約の普及と相まって導入社数が増加しています。コロナ禍で電子契約を導入した企業がそれに付随して、契約の締結前後の非効率性の解消を目的にHubbleを導入していただく例が急増しています。

:電子契約は、去年より今年のほうが本当の意味で浸透してきていると思いますね。中小や上場準備中位の規模の会社は、検討してからすぐ導入できますが、大企業が全社の取引を電子化するには数年間かかるくらいの変革プロジェクトになります。去年クラウドサインを一部導入して、本導入は今年以降進んでいく。行政も今年から一気に導入するので、おそらく、“全体の半分がクラウドサインから届くようになった”という感触を抱くようになるのは今年以降だと思います。

山本: 2017年に我々がサービスを始めた時点では、ディープラーニングをはじめとした新しい技術が出てきたということで、社会的にもAIに対する期待値が非常に高かった。弊社の弁護士ですら「自分たちの仕事がなくなる」と恐れていましたからね。実際に契約審査領域で使ってみて、最近ではようやく人間の仕事を代替するわけではないけれど、業務効率化には圧倒的につながる点が浸透してきました。期待値が高すぎも低すぎもしないところから商談を始められるようになり、スムーズになってきました。

酒井:自分たちは2018年の秋にプロダクトをリリースしたのですが、当時は契約書をクラウド上にアップロードすること自体に難色を示す企業も多かったです。いまはクラウド上に契約書を保管することについての理解が進んできて、門前払いされるケースはほとんどなくなってきています。リーガルテック元年という言葉は2019年頃に誕生したと記憶していますが、当時はリーガルテックのベンダーが出現し、そこに市場があるんだと認識された段階だと思うんですね。真のリーガルテック元年を2021年と定義するのは、個人的にはしっくりきますね。

:クラウドサインは、まだ紙とハンコしか業務フローがない取引先では使えないんです。電子契約が本当の意味で普及していないと導入できない。実際、IT企業でさえ紙で契約している会社も残っています。ただ、業界自体が変わり、どこかでオセロの色が全部ひっくりかえって、むしろ紙とハンコがマイノリティーになる時代がきます。それが今年以降やってくるという感触です。最近では急激に電子マネーが普及して、PayPayに対応していないとわかるとユーザー側が「現金を持っていないのでいいです」と買い物をやめてしまうという現象が起きていますよね。これと同じことが起こると思います。

「オセロの色がひっくり返るようにハンコから電子契約へ変わる」(弁護士ドットコム 橘氏)

リモートワークで露呈した課題、リーガルテックで解決

北島:2020年に電子契約が普及し始めたきっかけとしては、リモートワークの影響が大きいと思います。導入数が増えて、何か気づかれた点はありますか?

酒井:まず、リモートワークによって、物理的な押印作業が自社の具体的課題であることが明確になったということもあると思います。それに付随して、あぶり出して認識させたことが大きいと個人的には思っています。そして、あぶり出された具体的な課題に対してHubbleを具体的解決策として提案できるケースが増えました。リモートワークが確実にHubbleの導入を後押ししていることはあると思いますね。

山本:リモートによって、新人の仕事を逐一チェックできなくなり、新人育成が難しくなったという問題が起きています。契約審査の抜けや漏れ、審査基準の共有や、どういう情報がきたらどう修正するかみたいなナレッジの部分って、暗黙知的にやっていることが多いんですよ。そこにAI-CON Proを導入することで、決まった基準に落とし込めるようになる。実際に、新人育成への問題意識からAI-CON Proを導入して質の底上げを図っていく企業も増えています。

契約書レビューを効率化するクラウドサービス「AI-CON Pro」(GVA TECH株式会社)

酒井:「情報の属人化を防ぎたい」というワードはよく聞くようになりましたね。これまでは、契約書をどうレビューするかは各人の頭の中の知識や経験に依存していました。いわば“秘伝のたれ”のようなもので、それを伝承するにはその人から直接教わるか、隣で見ながら学ぶしかなかったと思います。それが自分たちのサービスなどによって、レビューのプロセスがしっかりクラウドに残り、組織の中に無理なく浸透していく環境に変化していくと、実態のないOJTもなくなるし、教育そのものが変わっていくと思いますね。

海外に追いついた日本のリーガルテック

北島:日本のリーガルテックは海外と比べると遅れていると言われてきましたが、実際どうですか?

:クラウドサインが出た2015年の時点では、各国ではすでにクラウド契約はブームになっていたので、日本は出遅れていたと言えます。それが2020年以降、日本が一気に並んだと感じています。

酒井:僕も現状日本が遅れているという意識はないのです。そして、これからは日本でオリジナルのリーガルテックが発展していくと思っています。こと契約に関していうと、各国の文化背景の違いが強く影響していると思うんですよね。アメリカだと多言語多民族間で契約や合意形成をする必要があるため、契約書にお互いの合意を積み重ねていかないと後からトラブルになります。一方、日本には単一的な文化背景が存在し、ハイコンテクスト社会下での契約ということになるので、オリジナルのリーガルテックが発展していく土壌があると思っています。

山本:国内の場合、裁判所は遅れていると感じますね。裁判のデータ化が進んでいないせいで、法律事務所もあおりをくらって進んでいない。そんな気がしています。

:裁判所のIT化は、韓国とシンガポールで進んでいます。日本ではいまだに膨大な裁判資料を持ち運びしているのに対して、韓国ではiPadに裁判の全記録を入れていたり、訴状の受付もオンラインでできたりと、すごく効率化が進んでいる。ただ日本も裁判のIT化が始まり、判決文もオープン化されるので、また新たな局面になっていくと思います。

「日本オリジナルのリーガルテックが発展していく」(Hubble 酒井氏)

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