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「データ保護の重要性に対する認識が広まっている」ビル・ラージェントCEOインタビュー

「年内に日本でもレベル1サポートを提供したい」Veeam CEOに聞く

2021年06月16日 07時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 データ保護ソリューションを提供するVeeam Softwareが好調だ。新型コロナで進むリモートワークやランサムウェア攻撃の増加などを背景として「データバックアップ/復旧の重要性への認識が広がっている」と語るのは、CEOになって2年目を迎えたビル・ラージェント氏だ。今回はラージェント氏とCMOのジム・クルーガー氏にインタビューを行い、今後の成長、日本市場の展望について聞いた。

Veeam Software CEOのビル・ラージェント(Bill Largent)氏、CMO(最高マーケティング責任者)のジム・クルーガー(Jim Kruger)氏

――(2020年上半期の)売上ベースではバックアップ&リカバリ市場で2位のベンダーとなりました。CEOとして今後どのように成長を維持していくのですか?

ラージェント氏:成長の維持のためにはセールスが重要だ。バックアップ/リカバリ市場は堅牢で、Veeamはここへのフォーカスをしっかり継続する。具体的には、優秀な人材の維持、営業チームの人員の確保とトレーニングなどに取り組む。

 バックアップソリューションは、多くの企業がすでに何らかの形で導入している製品分野だ。営業では競合製品を使っている顧客を獲得する必要がある。

 Veeamの特徴は、小規模から大規模まで同じ技術でスケールできるという拡張性にある。このところ、大規模エンタープライズ分野において、レガシープレイヤーのリプレース先としてVeeamが選ばれている。直近の2021年第1四半期、この(エンタープライズ)カテゴリは前年同期比246%で成長した。

 最終的には、正しい製品を正しい市場で展開し、きちんとしたセールス活動を展開することが重要だと考えている。

――クラウド、コンテナなど、新しい技術に対してもデータ保護の領域を拡大していますね。

クルーガー氏:Office 365向けバックアップ(「Veeam Backup for Microsoft Office 365」)は3年前に提供を開始し、現在急成長している製品だ。最新バージョンでは「Microsoft Teams」のデータ保護も加えるなど、市場ニーズに対応している。Teamsの保護は顧客からも喜ばれる機能になった。

 市場全体は「ハイブリッドクラウド」へと流れている。コンテナが重要な技術要素となっており、VeeamではKastenの買収によってコンテナ環境のデータ保護製品も提供できるようになった。パブリッククラウドについても、AWS(Amazon Web Services)、Microsoft Azure、Google Cloudの3大パブリッククラウド向けソリューション(「Veeam Backup for AWS/Azure/Google Cloud」)を提供しており、改良を重ねている。

 このように新しい顧客ニーズに対応することが、Veeamの新しい成長源となっている。また、企業の抱えるデータそのものが増えているという背景も後押しになっている。

オンプレミスの仮想/物理環境だけでなく、パブリッククラウド、SaaS、コンテナ/Kubernetesへとカバー領域を拡大している

――第1四半期、日本市場のビジネスは約60%成長したとのことですが、好調な要因はどこにあるのでしょうか?

ラージェント氏:日本は重要な市場であり、日本市場での成功なしにAPJ(アジア太平洋日本市場)での成功はあり得ないと見ている。APJ市場への展開はまずオーストラリア/ニュージーランドから強化したため、日本での本格展開は2010年ごろからだったが、ローカルの体制が整いすばらしいチームができたことが(好調の要因として)大きいと見ている。

 日本市場における次のステップとして、ローカライズされた製品の提供を進めたい。まずは1年以内に、レベル1のサポートを日本国内で提供したいと思っている。

――全世界的にランサムウェア攻撃が増えています。Veeamの事業への影響は?

ラージェント氏:ランサムウェア攻撃は、報道されているもの、されていないものを含め被害が増えている。企業は懸念しており、われわれはセキュリティベンダーではないが対応している。「Veeam Backup & Replication」のv10、v11でランサムウェア攻撃に対するデータ保護機能を強化しており、これも需要にもつながっている。

 データのバックアップとリカバリはワクワクするような分野ではないが、そこで何かがうまくいかないと事業に支障が出る。迅速に復旧できないと業務が進まない。重要性について認知は広がっており、新型コロナでさらに重要性が認識されたことを感じている。

――Veeamでは「モダンデータ保護(Modern Data Protection)」ビジョンを掲げています。今後強化していく分野は?

ラージェント氏:コンテナ/Kubernetes分野でKastenを買収した。コンテナはVeeamの将来にとって重要な分野になると位置付けており、Kasten買収は戦略上大きな意味を持つ。

 ただし、Veeamは基本的に“買収より構築”という哲学を持っており、技術革新は社内で行うという考え方を持っている。そのほうが、より統合度の高いソリューションを提供できるためだ。

 ランサムウェアの話があったが、この分野も戦略的に重要だと考えている。

クルーガー氏:モダンデータ保護は継続的な取り組みとなる。われわれはモダンデータ保護がどのようなもので、Veeamはどのように進んでいくのかを明確に定義しており、着実に実行に移していく。

 2020年は17回のリリースを行った。クラウド向け製品では年に2~3回のペースで最新版をリリースしている。さらに、プラットフォームの強化を通じて顧客に価値を提供していく。

 ストレージとの統合やエコシステムの強化もビジョンの達成に重要で、ここについても取り組んでいる。

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